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 アニメ 鋼の錬金術師
 
 ぶっちゃけ小説5巻を呼んだ時ね?
 全く、ココに及んでこんな美味しい方を出してくれてしまってまぁ!
 そんな気分でしたよ。
 やさぐれ親父は大好物なんですよね。
 はっはっは。
 237Pの後ろから2行目。
 目が合ったのは一瞬です。それだあんだけのコトができるんすよ!
 萌えずにはいられませんでしたとさ。


 登場人物

 ロイ・マスタング少佐
  ……焔の錬金術師。
   明けても暮れても繰り返される殺戮に狂いかけておりました。
   親友のヒューたんから見ても。エッガー大佐から見ても。
   まだ、正気を持った人間ならば気がつくほどに。

 リュオン・エッガー少佐
 ……?の錬金術師。
 そういえばこの人、何の錬金術師なんですかい?
 イシュヴァール殲滅戦におけるロイたんの、上官。
 腕前も去ることながら、人格も出来た人だったようです。


 舞台は、イシュヴァール殲滅戦。
 国家錬金術師が参戦して、勝敗が軍に傾きだした頃。
 アームストロング少佐が、更迭されたぐらい、かな?



 

 無気力
 

 「まだ大丈夫だ。私は正気だ。狂ってなんかいない。ちゃんと痛い。血が出れば痛い。人を殺
  せば痛い。平気だ。大丈夫。大丈夫……だいじょう、ぶ」

 私は、狂ってなんか、いない。

 背中からびょうっと一陣の風が吹き抜けた。
 血と埃と汗と。
 狂気の臭いを、僅かに剥ぎ取ってくれる。
 天を仰げば恐ろしいほど澄み切った冬の空。
 満天の星が輝いていた。
 ここが、戦場でなく。
 こうやって、夜も昼もなく人殺しに明け暮れていなければ、ずっと見ていたいくらいに、綺麗
な、星空だ。
 「マスタング少佐!」
 自分を呼ぶ声に、ゆっくりと振り返る。
 「……エッガー大佐……」
 何もかもが、どこかおかしい戦場で。
数少ない、正気を保っていられる、強い人。
 私は、この人が上官でいてくれるからこそ。
 正気を保っていられるのではないかと、思うほどに。
 「心配したぞ。こんな所にいるなんて!」
 それは、そうかもしれない。
 ここは、境界線ぎりぎりの区域。
 随分と減ってしまったイシュヴァール人が、まだまだ潜んでいる場所。
夜戦に強いイシュヴァール人の襲撃を恐れて、軍人なぞ、命令とあっても近付きたくない場
所なのだ。
 こんな所で呑気に空を見ている軍人など、私くらいのものだろう。
 「ヒューズ大尉も捜していたぞ。ホークアイ少尉もだ。女性を心配させるなんて、君らしくも
  ないな。ん?」

 ぽんぽんと気安く背中を叩かれる。
 焔の悪魔と、同じ仲間であるはずの兵士達にすら影口を叩かれて、遠巻きにされている私に、
気安く触れてくる人間の数なんて、ほんの数人程度。
 大佐は、その数少ない一人だ。
 「……すみません」
 「ま、確かに。ここから見る星空は、綺麗だけれどな」
 隣に腰を下ろして、天を見上げる真っ直ぐな瞳。
 ああ、私は今。
 大佐のように澄んだ瞳で、星空を見られるのだろうか。
 「……マスタング・……明日は、私が出るよ」
 「え?」
 「シャルタンの殲滅だ」
 「何ですって!」
 悲惨な殲滅戦を繰り返してきた、イシュヴァールの戦いの中で。
 最も過酷な羽目になるだろうと言われ、明日正午に行われる予定の殲滅戦には自分が一人。
 たった、一人でゆくはずだった。
 「マスタングは、働きすぎだから、な」
 「大佐だって、他の上官の誰よりも働いているじゃないですか!」
 この劣悪としかいいようのない、戦場の最中。
 唯一にして最高の僥倖が、この人の存在だ。
 部下を助け、引き際を知り。
 何より、命を粗末にさせない。
 その為に、しなくてもいい苦労を唸るほどしているのだ。
 優秀な故に。
 「何。少佐にこれ以上戦功をたてさせたくないんです、と言ったら二つ返事で承諾があったぞ?」
 「……エッガー大佐……」
 「お前一人を、逝かせはせんよ」
 逝くと、わかっていて。
 貴方は、どうして自分も行こうとするんです?

 「私一人で大丈夫です!貴方には残った部下を生かさねばならない義務があるじゃないです
  かっつ!」
 「……私だって人間だ。マスタング。全てを助けられはしないし。贔屓ではなしに、ほおってお
  けない人間はいる」
 不意に肩を引き寄せられて、腕の中倒れこむような格好になった。
 「どうしても、喪いたくない人間なんだよ……これから。マスタングお前はこれからに必要な存
  在なんだ。私よりもずっと」
 尊敬する男の情感に抱き締められるという反応に困る体勢で、かたまってしまった私の髪の
  毛を、大佐の指先が幾度も梳いてくれる。
 「お前はここで、死なない。私が、死なせない……それにお前さんが死んだら、後追いする
  奴もいるだろうよ?」
 人の良い親友と、美貌の副官が脳裏に浮かぶ。
 二人ともそんな馬鹿な事はしないと思っているが、私にだけ罪を負わせているのだと、とて
も気に病んでいるから。
 もしかしたら、そんな選択肢を思い浮かべてしまうかも、しれない。
 「明日の戦場は砂地ではなく、地面だからな。足止めは容易だ」
 「……足止めがなれば、焼き殺すのも容易い、と」
 「違うか?」
 「いいえ……」
 大佐の言っている内容は正論だ。
 足で纏いならばいざ知らず、歴戦の猛者と共同戦線を張れるなら何倍も生還率は上がる。
 「だから……そんな無気力な目は、してくれるな」
 「……誰の前でもは、してないつもりですよ」
 「知ってる。それがお前なりの甘えだってこともなぁ」
 ん?と顔を覗き込もうとするので、ますます下を向く羽目になった。
 「でも、な。そんな目をさせてしまう程度の上官なんだなぁ、俺は。なんて不甲斐無い存
  在なんだろう……ってな?無気力になってしまう。電波する負の感情なんだよ。この
   戦場では……わかっているとは思うがな」


 らしくもない、上官の弱音に反射のようにして顔を上げれば。
 苦笑する瞳の中に、自分と同じ狂気の色を見つける。
 こんな人でも。
 私が知る中ではトップクラスの出来た人ですら、狂気を覚えさせる戦場とは。
 何と過酷なものか。
 頭の天辺から一気に血が下がってゆく恐怖と、脱力感が全身を襲う。
 「マスタング?」
 「……私達は、それでも……帰らねばならないんですよね」
 頭の中をこれ以上はないだろう無気力が支配した。
 このまま、この人の腕の中で壊れてしまったのならば。
 幸せなのかもしれない。
 そうなったら、きっと。
 狂気を自覚する自分すら残ってはいないだろうから。
 「ああ、そうだ。帰らねばならない。生きて帰らねば。贖う事すらできない」
 「そ、ですね」
 生きて帰って、自分にナニができるかなんて、わからない。
 ただ。
 己を自らが生み出す焔で焼き尽くしてしまいたい衝動にかられるような、罪を。
 犯したくはない罪を、他者に強要されて犯すような人間はこれ以上造りたくはなかった。
 私が、ここで倒れれば。
 新たな生贄が選出されるだけだ。
 犠牲者を、増やしてなるものか。
 「……明日は、お願いします」
 「こっちこそ。頼むぞ。共に生きて、帰ろう?」
 「はい」
 頷けば、骨が軋むほどに抱き締められた。
 次の瞬間。
 先程見えた狂気を綺麗に覆い隠したエッガー大佐は、何時も通りの上官面をして、立ち上が
る。
 「行こう」
 手を、差し伸べてくれた。
 硬く握って、体重を掛けると私も大佐に倣った。

 無気力から、気力を生み出す。
 無から、有へと転じる僅か数秒にも満たない刻の中。
 見上げた星空は、遠く。
 手が届かないほどに、遠く。
 視界が涙で滲む優しさで、綺麗だった。

 綺麗、だった。




                                              END




 *エッガー×ロイ
  戦場での共同戦線とか書いてみたいです。
  エロにしても楽そうなんですが、まだそこまで自分の頭の中で関係が
  練りこまれていないらしく、浮かぶのはちゅう程度レベル。
  まぁ、そんなカプがあってもいいっすよね。





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