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 ゲーム 遙かなる時空の中で3 

 一応番号の若い順に攻略してゆくつもりだったんですが。
 我慢できませんでした(笑)
 遙時は1〜3まで全部やりましたが、3が一番好きです。外伝に手を出したのも3が初めてだし
なぁ。
 基本は八葉望美。BLだと将臣総受?ええ?と自分でも驚くスタンスです。知盛将臣とか、
譲将臣とか、リズ先生将臣とか、ああ、弁慶将臣とか……と羅列していたら書きたくなってきた
なぁ。
 別部屋を作りたいですが、これ以上増やすと全部が疎かになるので、こつこつと100お題で
攻略を増やして行きたいと思います。


 登場人物

 武蔵坊弁慶(むさしぼう べんけい)
 ……史実の弁慶を想像しつつ彼のビジュアルを見ると軽く仰け反ります。
 武器は長刀で史実に忠実な気もしないでもないのですが。遙3一の腹黒君。
 女性の口説きも八葉一でしょうねぇ……。地の朱雀。

 春日望美(かすが のぞみ)
 ……この手のゲームは、主人公の名前替えをしないでやります。
 ビジュアルが何より気に入っているのですよ。
 長い髪と細い剣そしてミニスカ女子高生仕様の制服に陣羽織!やられた!
 そんな気分だったなぁ。
 性格は真面目で情に厚い設定で、進めてます。


 どこのシーンという訳でもないのですが、九郎許婚フラグが立っているルートで。
 望美は幾度かの時空跳躍を繰り返して、弁慶の深い闇をどうにかして軽減できないかと
日々思案している感じに。





 媒介


 「弁慶さん!」
 私は、先刻までさりげない風情で九郎さんと剣の稽古を見守っていた、その背中を追い
かける。
 「どうしました、望美さん。稽古はもう、宜しいのですか」
 「今は休憩時間です……一応」
 「はぁ。一応」
 物言いがおかしかったのだろう、くすくすと笑われてしまう。
 放置しておいたら私の顔を見て、幸せそうに、何時までも笑っていそうだったので、私は意を
決して、笑いを断ち切った。
 「あの!お願いがあって!」 
 「貴方が?僕に、ですか」
 「はい」
 「光栄ですね?」
 手を組んで、心底嬉しそうな表情で首を傾げられる。
 が、これは本心ではない。
 この人は、それが悪夢だとでもいうように綺麗に己の意思を殺して、真反対の表情を浮かべる
のが得意なのだ。
 「茶化さないで下さい!」
 「……茶化してませんよ?」
 微笑が深くなる。
 私が、感情を揺らして正確な判断ができなくなったと、そう思っているのだ。
 確かに今私は、簡単に激昂した。
 けれどそれで、物の本質を違えてしまうと断じないで欲しい。
 「九郎さんと、私をくっつけようと画策しないで下さい」
 「はい?」
 「あの時は、私を庇う為に許婚を演じて下さっただけで。九郎さんは、勿論大好きで、大切です
 けど。兄弟子でしかありません」
 源九郎義経という八葉は、不器用で優しい人だ。
 生真面目で、一生懸命な所は譲君に似ていて。
 人を惹き付けるカリスマというか、兄貴肌な所は将臣君に似ている。
 リズ先生を師匠と仰ぐ、たった一人の兄弟子というのが一番かもしれないが、私が大切にして
きた幼馴染に似ているから余計。
 兄みたいに感じている。
 そこに、弁慶さんが勘繰る恋愛感情は微塵もない。
 「君は、そうかもしれませんけれど。彼は違いますよ。少なくとも僕は、九郎があそこまで女性
  を懐深く入れるのを、初めて目にしましたし」
 「それは、私が不出来な妹弟子だからです」
 とても忙しい身であるというのに、私が頼めば何時だってその身体を空けて、鍛錬に付き合っ
てくれる。
 私がどんなに訓練を重ねても、厳しく的確で、数多の戦場を経験してきた九郎さんには、永遠
に届かないだろう。
 お互いそれを承知している、けれど。
 九郎さんは、己が得てきた技や知恵を私に惜しまなかった。
 無理せずに、頑張れ、と穏やかな眼差しで言ってくれる。
 「君が不出来であったなら、世の中の剣を目指す人間は皆不出来でしょうね」
 「弁慶さん。話がずれてます」
 「失礼。でもやっぱりね。僕は九郎が好きですし。柵が多い中で難しいとは思いますけれど、
  幸せになって欲しいのですよ」
 叶わぬ願いだと、知っていながらも願う人は皆。
 こんな顔をするのだろう。
 時空跳躍を繰り返して、一番最初。
 決まって宇治川に流されて、その川面に晒した己の顔が。
 何時も、今の弁慶さんと同じ顔をしている。
 「だから、大好きな貴方とね?一緒になってくれるのなら、それが彼の幸せじゃないのかと
  思うんです」
 「それは、弁慶さんの思い込みですよ」

 「思い込み?」
 「ええ。だって私が好きなのは弁慶さんですから」
 「ぷっつ!」
 彼はさもおかしそうに噴出してみせた。
 「私は真剣ですよ?」
 「僕も真剣です」
 弁慶さんは、穏やかな笑みを浮かべたまま。
 己の感情を押し殺し、隠し通しているが故に。
 見る人間が見ればわかる、貼り付けたような微笑は、それでも穏やかに見えるから不思議
だ。
 「君の好意は知っています。けれど、それは恋情ではないでしょう?」
 「っつ!」
 ただでさえ経験豊富な年上だ。
 女性にも持てる気質も持っている。
 極めつけは、画策を得意とする軍師。
 私の心を見通すのが、容易いことだなんて承知していたけれど。
 「恋情ではなくて、同情。憐情ですよね?」
 「違いますっつ」
 「違いませんよ。望美さん。知ってますか?同情から始まる結末は悲恋と相場が決まって
  いるんです」
 それは経験からくるのか、断定の口調だった。
 「もっとも貴女が悲恋の相手として僕を選んで下さると言うのなら、喜んでお相手をしますよ」
 何時だって適当な距離を取って、お互いの手が触れられる位置までは頑なに近付かない人
だったのに。
 いきなり距離を縮めたと思ったら、やわらかく抱き締められた。
 「弁慶さん!」
 「悲恋前提を承知しているのならば、溺れさせてあげます。僕は、貴女の初めてを頂いた、
 その思い出だけできっと暮らして、逝けるでしょう」
 あまりの言われように身体が跳ねた。
 それは、図星を刺されたからではない。
 私の体は、その実。
 正確には男を知らない体ではなかったから、罪悪感に身体が反応してしまったのだ。
 幾度かの時空跳躍を繰り返す最中。
 私の手から幾度もすり抜けて行ってしまう、弁慶さんを追い続ける事に疲れ果てて、八葉の
うちの数葉に、この体を委ねた事が合った。
 リズ先生も景時さんも、大人の余裕からかとても優しかった。
 九郎さんは一生懸命で、敦盛さんは最後の最後まで躊躇していた。
 運命が切り替わる時点で、委ねる相手を変えてはいる。
 私が好きなのは、唯一どうしても助けたい相手は、弁慶さんなのだと、自覚をし続ける為に。
 一度完結した運命を迎えれば、記憶も感情も引き継いだまま、全ての傷痕は綺麗に消え
失せるのだ。
 そう、私は何時だって新しい弁慶さんの目の前。
 処女として立つ事が出来る。




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