メニューに戻る次のページへ




 オリジナル 高城学園 

 我ながら、何でこんなに登場人物を出したんかなーとしみじみ思う、オリジナルのシリーズ。

 この話は、南条晶と晶の実兄・理のお話。
 実の姉弟の子供として生まれた晶と理には、南条家の次の予見斎を生み出さねばならない
義務あります。
 優秀な予見斎は近親相姦によってのみ生み出されるわけです。
 ところが、生めばその能力の全てを譲り渡す為、母体は死んでしまいます。
 どうしても、晶を殺したく無かった理は、運命を捻じ曲げる為に一端晶の手を離す事にしまし
た。
 その時のお話。


登場人物

 南条 理(なんじょう さとる)
 ……砕けた優等生風の容貌。妹を溺愛。
    学校にも行かず、厳選した家庭教師を頼み、晶を守ってきた。16歳。

 南条 晶(なんじょう あきら)
 ……黒目黒髪愛らしさ炸裂の天然系。代々続いてきた近親相姦の果てに産み落とされた、
    南条家最高峰の予見斎(さきよみ)13歳。




 吐息
  

 「本当に、行ってもよろしいのですか?」
 俺が晶の手首の包帯を替えてやっている最中に、晶が小首を傾げながら問うてきた。
 「ああ。前々から行きたがっていたようだし。一度ぐらいは外に出た方がいいだろう」
 本当は、外へなんぞ出したくはなかった。
 俺の腕の中でずっとまどろんでいて欲しくて、限界を超えて頑張ってみたけれど、今の俺で
はまだ力が足りない。
 「最低でも三年は行く事になるだろう。大丈夫か」
 「はい。どうしても、月読(つくよみ)に会ってみたいものですから。それが叶うというのなら、
  どんな事でも我慢できると思っております」
 世間一般的にいえば、予知能力者と呼ばれる晶が一度会ってみたいと事有る事に囁いてき
た名前。
 高城学園の月読(つくよみ)。
 晶曰く、自分より能力の上の人間だと、いう。
 巫女姫よ、女神よと崇められ、普通の少女らしい生活を営む事も許されずに、南条家に捕ら
われてきた晶の唯一の願い。
 友達という存在を持たないどころか、友達がどういったものかすらわからない晶が、誰かを
求めるの勿論初めてだ。
 自分の能力故に、何かを望んでも叶わないことがわかってしまっている。
 幼い頃から、悲しいくらいに聞きわけが良かった。
 「晶が何かを、誰かを望むのは初めてだしね。そろそろ、外へ出てもいい頃合だ」
 初潮を迎えた辺りから、外部から時代の予見斎を!といわれる頻度があがってきた。
 俺の手だけで、抑え続けるのは、残念ながら限界がある。
 「今から一週間後には、高城学園に送ってゆこう。準備は全部俺がすませておくから、晶は
  指折り数えて待っておいで」
 「ありがとうございます、理兄様」
                                   

 誰に対してでも穏やかな微笑を張り付けたように向ける晶だが、俺にだけは心安らぐ優しいば
かりの笑顔を向ける。
 この笑顔を他の誰かが見るのかと思えば、嫉妬で気が狂いそうだが、これからはその現場に
すら克ち合えないのだ。
 今までは、離れている時間なんて、一日のうちの三十分にも足らないくらいだったのに。
 晶のいない生活に、声の聞こえない日常に慣れることができるのか。
 無理だと、そう思うのなら、早く絶対的な力を手に入れて晶を迎えに行ってやらねばなるまい。
 高城学園は血縁といえども、その侵入を拒む。
 一度入ってしまったら、高城学園のトップである人間達が認めるまでは外出すら許されないと
聞いた。
 不安ばかりが付きまとい、晶を高城学園に住まわせる事を決めた今でも惑う瞬間があった。
 「兄様?」
 揺れ動く感情を過敏に感じ取ったのか、晶が俺の腕の中で、顔を見上げてくる。
 「晶に会いたい時に会えなくなるのに、耐えられるかな、と思ったのさ」
 吸い付くようなやわらかい頬に掌をあてれば。
 「手紙を書きますわ」
 暖かく小さい掌がそっと、重ねられた。
 「どんなに忙しくとも、週に一度は貰いたいな」
 「わかりました。必ずお出しします」
 俺の首に華奢な腕を回した晶の唇が、挨拶の軽さで、唇に触れる。
 いつでもしっとりと濡れた唇は、永遠に貪っていたい欲情を煽った。
 まだ幼い晶に性の生臭さを教え込むつもりはなかったが、キスだけはかなり激しいものを仕
込んである。
 少なくとも日本国内で、兄妹で口付けをする習慣がないことなど晶は知らない。
 兄妹の情愛の一環として、当たり前に受け止めていた。
 十年以上をかけて、俺の好みに仕立て上げた晶を。
 高城学園という場所はどこまで、変えてしまうのだろうか。
 晶の強さを知る以上、最悪の事態にはならないと思うが……。
 応えるように腰に回した腕に力を込めて、唇を貪る。
 息継ぎの苦しさから、晶の唇の端から熱くも甘い吐息が零れ落ちた。
 暴走しかけた身体をとめる為に、唇を離す。
 肩口に顔を埋め、軽く噎せる晶の背中を幾度も擦ってやりながら、俺は。

 自分の晶へのしゃれにもならない執着さ加減に天井を仰いで、晶が滑り落とした吐息とは明
らかに違う大きな溜息を、一つだけついた。

 


                                       END




 理×晶
 楽しかった!オリジナルはマイドリームが心おきなく吐き出せてストレス解消にはもってこい
です(それもどうかと)
 今度は逆の視点で、盲目的に理を信頼する晶も書いてみたいかなー。
 直江も登場させて、二人の間に火花を散らせてもみたい。ししし。




                                             メニューに戻る次のページへ
                                             
                                             ホームに戻る