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 どこでそんな言葉を仕入れてきたのかと問えば、鎧でいる間に学びました、と低い返事が
あった。
 眠る事が出来なかった彼は、元に戻った時の為にと懸命に知識を蓄えていたのだろう。
 それでもしなければ正気を失いそうだったのは、同じ経験をしなくとも想像がついた。
 「ほら。顔、出しちゃいましたね。可愛いですよ。すごく」
 笑いながら、湯から出た先端を指の腹でくりくりっと弄ってくる。
 心地良さに声も出ず、ただびくびくと太ももを揺らしてしまう。
 鎧であった時は、何時でも大きな身体を出来うる限り小さくして、ごめんなさいと、謝ってば
かりいた。
 反動なのだろうか。
 私と一緒にいるようになってから、特に二人きりで居る時は、笑ってばかりだ。
 こんな風に抱き合っている時は尚の事。
 自分でもどうか?と思う淫乱加減だというのにも関わらず、決して嘲る事無く、ただ、心の底
から嬉しそうに。
 「ねぇ大佐?気持ちいいですか。僕の指でおちんちん弄られて」
 性器を差す言葉なぞ普段は使わない。
 何時でも穏やかな風情を保っている彼の口から、そんな言葉が出てくるとより卑猥に聞こえ
るから、不思議だ。
 「ん。気持ち、イイ……」
 「それは良かった。どうしたって、痛い思いをさせてしまいますからね。挿入前ぐらい、気持ち
  良くなって欲しいですよ」
 「入ってしまえば、君の、これは。とっても良いよ?」
 後ろ手に十分な硬さを保ったペニスを掴んだ。
 華奢ではないのだが、どちらかというと細身の肉体からは想像もできない大きな硬直。
 長さも太さも、私が全てを銜え込むには難しい、男としては羨ましいほどの肉塊。
 「でも、入るまでが問題ですよ。膨張率がいいだけなら、小さいうちに入れることもできますけ
  ど、最初からこれでは、ね」
 贅沢な悩みだとは思いますけど。
 僕には、貴方を喜ばせるだけの大きさであればいいのにと。
 深い溜息が零れる。
 確かにペニスは大きければいいというものでもない。
 ましてや私の場合、本来受け入れざる場所へ入るのだから。
 比較的SEXに関してはノーマルな嗜好だったので、女性ともアナルSEXを楽しんだ事はな
かった。
 これだけの痛みを覚えると知ってしまった以上、一応フェミニストで通っている私が挑戦する
事態はこれから先、永遠に起こり得ないだろうが。
 と、いうよりも。
 ハボックやアルフォンス君といった自分より若い相手が二人も入れば、女性を抱きたいという
欲望は自然薄くなっているのだ。
 通常のSEXですら縁遠くなって久しいのに、そんなマニアなプレイなんて楽しむ気力がない。
 年を取ったのか。
 それとも、男に抱かれるのに慣れすぎてしまったのか。
 今の生活は、二人に対する罪悪感さえ擁かなければ、とても楽なのだが。
 「バスルームでのSEXは後始末楽ですけど、どうにものぼせるのがいけませんね」
 「別に入ったままでしなくてもいいだろう」
 「バスタブの外じゃ、風邪を引くから駄目ですよ……それに僕。ベッドでゆっくり入れる方が好
  きですし」
 「では今すぐ……」
 私だってベッドの方が好きだ。
 少なくとも寝室ならば、こんなにも明るくはない。
 見られているのだという、たまらない羞恥は幾らか薄れる。

 「それは駄目です。ロイをいかせてからじゃないと。貴方の声がね、よく響くから。貴方を鳴か
  せるのは、バスルームに限るね!……なんて考えちゃうんですよ」
 楽しそうに、言われてしまうと、どうしていいかわからなくなる。
 私の我儘で必死に繋ぎとめている、優しい存在。
 こんな事で、喜ばせたくはないのだけれども。
 私にできる何やらといえば、金を与えてSEXを仕込むくらい?
 ……鋼のが、私を毛嫌いするのがよくわかるよ。
 「ロイ?」
 「君が、したいのなら、しよう」
 「そんなに、嫌なら、ベッドにしますよ?」
 人の顔色を伺う癖はいまだ抜けないところを見ると、元々の性格なのだろう。
 「……恥ずかしい、だけだ」
 目を閉じても、どこにあるかわかる唇に軽く触れる。
 なすがままに塞がれた唇の端が、僅かに上がった。
 苦笑の、それ。
 「騙されて、上げます」
 首筋を擽られて、目を開けば、困った風に笑う。
 アルフォンス君の笑顔がある。
 私の何物かもを許容してみせる、笑顔が。
 手前勝手なのは百も承知で、大好きなのだ。
 「君のも……」
 「駄目です。ロイのだけ」
 「でも!」
 「僕がいくまで浸かってたら、確実に湯あたりを起こしますよ?」
 ……それは、私の射精が早いということなのだろうか……。
 「ロイが、いったら。続きは、ベッドで……ね?」
 やわやわと二つの袋を弄っていた指先が、根元から先端までもを擦り始めた。
 「あんっつ!アル、君?」
 「いいですよね、これ。後は先っちょを指でぐりぐりするのも」
 言いながら、すっかり湯に塗れて見落としがちな先走りを塗りつけるようにして、容赦なく撫
ぜられる。
 腰がびくびくと揺れて、今すぐ吐き出してしまいそうな切羽詰った快楽が頭の中を走った。
 ちゃぷちゃぷと揺れる激しい水音に紛れて、追い上げられる最中の濡れた音が響かなくなっ
たのはいいのだけれど、完全に勃起した先端が波のまにまに見え隠れするのが、何とも気恥
ずかしい。
 アルフォンス君の指と掌で施される愛撫に、湯が先端を擽る感触が更なる熱を煽った。
 「アル君っつ!アル、くんっつ」
 「もう、出ちゃいますか?」
 こくこくと必死に頷く。
 「じゃあ、何時ものようにキスして下さい。僕の名前を呼びながら」
 「……アルフォン、ス……」
 君、は彼の口腔に飲み込まれて、私の耳には届かなかった。
 望むリズムで擦りたてられて、私は大半の喘ぎ声の中に、僅か。
 彼を呼ぶ声を混ぜて、腰を振った。
 『も、出るっつ』
 早い射精も恥とは思わない。
 思うより先に、蕩けそうな愉悦が体中を満たすから。
 『アル……アルっつ』
 




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