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 アニメ 鋼の錬金術師
 
 例によって、マイナーカプ推進委員会雑務係が頑張ります。
 このカプは、とある大手さんがコピー本で出していたなあ。
 純粋なホーロイじゃなかった気がするんですが。


 


 登場人物

 ロイ・マスタング大佐
 ……焔の錬金術師。
   年上に人には敬意を払います。特に人格者には甘めな感じです。
   無茶言われても強く出れなかったりするらしいですよ?

 ホーエンハイム
 ……エドとアルのパパ。
   ホムンクルスの創造主……なんですよね?

 このお話は、エドが反発しつつも大事にしているらしいロイたんが気になったホーエンハイムが
ロイたんを浚ってしまう話。
 極端だよ!ホーさん!




 
泡沫(うたかた)
 

 人間ではない息子達からも。
 血が繋がった息子からも、話は聞いていた。

 ロイ・マスタング。
 焔の錬金術師。
 良く出来た息子でもあるキングの手にかかれば、彼も扉を開けるのだろうか。
 現時点ではリストアップされていないが、私の考える覇業を果たす為の人柱候補の一人で
もある。
 エドが。
 あのエドワードが、わかりにくい形ではあるが、とても懐いているのだと、知って。
 俄然興味が出た。

 人間としての私は、国家錬金術師でもあったので、彼に会うのは難しくは無かった。
 ましてや、私は人体錬成に強いと名高く、光の錬金術師の二つ名を持つ。
 ヒューズ准将を、いまだ返らせたいと心の奥底で望む彼の、認めたくない暗い欲望を煽るの
は、私には容易かった。
 思ったよりもずっと楽に、私の手の中に落ちてきた彼は。

 今、私の腕の中で眠る。

 『やめてくださいっつ、光のっつ』
 俺のことを、鋼の、って呼ぶんだ、大佐。
 エドワードがそう言っていた通りに、私も二つ名で呼ばれた。
 親しい豪腕の錬金術師や敬愛しているらしい結晶の錬金術師を呼ぶ時に、二つ名は使わ
ない。
 何か、思うところがあるのだろう。
 仲間意識ゆえかと考えたが、そうでもなかったらしい。
 『何をされるんですか!私はこんなことをしにきたわけではありません!』

 必死に抵抗するのだが、彼は私を傷つけることができないでいた。
 彼の持つ炎の技にかかれば、私とて死には至らなくとも、無傷ではいられず、少なくとも私の
体の下から這いずり出るのぐらいは容易かったはずだ。
 『正気に返ってください!』
 『私はいつでも、正気だよ?』
 本心から言ったのに、彼は心の底から驚いた顔をした。
 『正気で君を抱きたいと思って、実行したんだ』
 『……ならば尚の事。私は、貴方を受け入れる心積もりはありません』
 目の中に宿っている強い意思は、まるで炎のようだ。
 何物にも犯されざる神域にさえ見えて、口の端を吊り上げる。
 『人体錬成の技が知りたいというのならば、大人しくするのだね』
 転じて、絶望に彩られた瞳。
 それでも、瞳の炎が消えないのは、身体を犯した位では、彼を侵蝕するのは難しいというこ
と。
 唇を噛み締め、シーツを掴んで己を殺した彼は一見従順に彼は、目を伏せて見せた。

 夢の中で魘されるのか、綺麗な涙を零して首を振る身体をあやすように抱き締めてやる。
 ぬくもりが恋しいのか、起きている時とは百八十度違う幼い素直な仕種で擦り寄ってきた。
 「大丈夫だよ、ロイ君」
 『……はい…』
 囁けば寝言で返事をしてくる可愛らしさ。
 よもや自分がここまで一人の人間に嵌るとは思っていなかった。
 高潔な誇りと愛を受け入れるのは未成熟な心。
 何よりSEXに快楽を見出せなかった私が溺れるその、淫蕩さ。
 矛盾しているかに見える、あれやこれが絶妙なバランスで彼の中に収まっている。
 そこが、たまらない。
 聡明な彼を自分の側へと引き止める為に、逢瀬の度に人体錬成の知識や技を与えてき
た。

 エドワードが記録を更新するまでは、最年少国家錬金術師の称号は彼のものだったというのも、
頷ける聡明さだ。
 一を教えれば十を覚える人間に出会えたのは、実に久しぶり。
 天才が努力するのだ、本来ならば凡才の私は彼に及ばないだろう。
 ただ、一点永くを生きているというだけで、その天才をも凌駕する知識を蓄えていたけれども。
 「……貴方も、成功した事はないんですか?」
 「ないね。随分と永く生きてきたが、今だ嘗て完全に魂と肉体を呼び戻せた例はない。魂のみ、
肉体のみの成功例なら幾つか知っているがね」
 魂のない肉体は、従順な人形でしかなく、外見的特長以外の性質は何一つ受け継がない。
 言われた事に、ただ、諾々と殉ずる奴隷のようなもの。
 頑丈だ、人間に遠いという点で、土人形(ゴーレム)などの方が余程扱いやすい。
 肉体のない魂は、もっと酷い。
 大半は何一つ思う通りにならない状況に、嫌気がさし狂うか、永遠の隠遁生活を送るか、ど
ちらかがほとんどだ。
 掌サイズの小箱の中、己の魂を封じた男に頼まれて、海の奥深くに埋めてやった事もある。
 奴は、海の生物達の声亡き声を聞き。
 一人永遠を生きるのだろう。
 私のように魂が、人間の肉体を渡り歩いて生きている存在は、稀有だ。
 同類は、今だ一人も出会えていない。
 無機物に入っていれば、比較的長く安定した状態を保っていられるのだが、人間だとそうは
いかない。
 一番抵抗が少ないのは、赤子の状態から、本来入るはずだった魂を押しのけて居座るとい
うもの。
 しかしそれでは、肉体が成長し、中身と外身のバランスが取れるまでに、時間がかかりす
ぎる。
 楽なのは、ある程度年齢のいった、狂気に生きる人間の精神を殺して肉体を乗っ取るやり
方だ。
 健全な精神を殺すよりも、ずっと肉体的な負担が低くてすむ。
 「君の場合は、身体も魂も完全に蘇らせたいのだろう?」
 「……ええ」
 「千年かかっても、無理だ……諦めなさい」
 「諦めなさいと、言う割には、私の知らない人体錬成の知識を与えてくださいますよね?」
 「それは、君が気に入っているから。できればこの体をずっと抱いていたいから。だって君は、
  そうでもしないと私に抱かれてはくれないだろう?」
 聡明過ぎる彼は、与えられた知識が増えてゆくに連れ、人体錬成が人間の届く領域にないこ
とを自覚し始めている。
 「だから、教えるのさ。君が『終わりにしましょう』というまでは」
 「……知って、らっしゃる癖に……」
 時折見せるようになってきた、幼い表情で私の肩に、こつ、とおでこをあててくる。
 「私が、どんなに無理だとわかっていても、彼を蘇らせる方法を模索し続けるって……」
 剥き出しの肩に、ひた、と唇が寄せられて。
 「よく、ご存知でしょうに?」
 泣き笑いの顔を晒して、片目で、私を見つめてくる。
 「選択権は君にあるんだ。悪い話ではない思うよ……別に、いいじゃないか。君にとっては一
  生続く関係なのかもしれないけれど、私にとっては泡沫の時間さ」
 まだ、一人で生きてゆく。
 偽物の命を持つ子供達はついて来るだろうが、君とは、後何年。
 何十年。
 一緒にいられるというのだろう?
 「短い蜜月なのだから、溺れさせてくれたまえ」
 強いが故に、淋しいままの魂は私を惹きつけてやまない。
 「不思議ですね。これだけ時間軸が違う人間が、こうして抱き合っているというのも」
 奇妙なまでに感慨深げな溜息は、私の唇の中に飲み込まれてゆく。
 彼は、私がどんな生き物なのかを、ほぼ正確に掌握している。
 身体が馴染んできて、深い愉悦を覚えてゆく中に、見え隠れする私への同情が、何とも彼ら
しい。
 「さて、これからは、私の時間だ」
 「……お好きなように」
 言いながらも、私を受け入れようと開かれてゆく身体。
 所詮、終わりの見えすぎた関係だ。
 とことんまで、溺れてみるのも。
 悪くはないだろう?


                        
                                                     END




 *ホーエンハイム×ロイ。
  何だか、さらっと終わってしまった。
  エロがぬるいコトを悔いる今日この頃。
  も一つの、ロイたん視点では頑張ってみよう。
  年の功で色々とお上手だと、思うのですよねん。




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