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 アニメ 最遊記

 これを書き出した現在は一賽舎・コミックゼロサムで『最遊記リロード(英語使えよ・自分)』を
連載中。『最遊記 全9巻』『最遊記リロー 1〜7以下続刊』『最遊記 外伝1〜2以下続刊』他
画集や、ガイドブックなどがてんこもり。

 以前ほどの勢いはなくとも、まだまだ大好きな作品です。
 自分は八戒総受なんですが、一番書く人も読む人も少ないんじゃないのかなーと思うのが、
こちらのカプ。逆だと大手さんが描いてたりるすんですけどねぇ。


 登場人物

 八戒(ハッカイ・猪八戒)
 ……片眼鏡萌。実のお姉さんとラブな関係だった過去を持つ。
 妖怪を殺しまくって、人間から異形に変じました。一見温和なお兄さん風。
    
 悟空(ゴクウ・孫悟空)
 ……元々は精霊になるんだろうか?三蔵の手により岩の牢獄から放たれた妖怪の中でも
 異端児的存在。腹減ったーが口癖。何だかんだ言っても一番強い人なんじゃないかと思
 います。
 

 旅をしている最中。
 寄ったお寺さんで。
 三蔵は、渋々お寺の方と会談中。
 悟浄は、ナンパした相手と時化込み中。
 そして二人は……。




 
落葉


 「食べかすがついてますよ」
 くすくすと笑いながら、八戒が俺の口元をハンカチで拭いてくれる。
 元々ハンカチとかタオルなんかは、必ず持っていた人だけれど。
 俺と付き合うようになってから、その手のアイテム所持が増えた気がする。
 誰に対しても一見同じに見えるが、特に俺に対して八戒は、世話を焼くのが大好きで、楽しい
ようだ。
 「ん。ありがと」
 頷いてせめてものお礼に、まだ湯気が立っているお茶を手渡す。
 俺の世話にかかりっきりで、好みのお茶が飲めないなんて寂しいからさ。
 「……ああ、ありがとうございます……うん、美味しいなぁ」
 湯飲みを大事そうに持つ優しい指先。
 こくこくと動く喉元。
 至福に細められた目。
 じいっと、見詰めていた自覚はあった。
 「……何か、ついてますか?」
 だけど、実際に指摘されてしまうと、とっても恥ずかしい。
 「や!何もついてないし!ほ、ほら!紅葉が。紅葉が綺麗だなって!」
 八戒の背後を指差す。
 見ていたのが紅葉じゃないなんて、解りきっていても八戒はほっこりと笑ってくれた。
 「……本当。綺麗ですね。今がちょうど見頃で良かったです」
 何時も穏やかな眼差しが、すっと満開と言うよりは散り際の華やかな紅葉へと興味を移した。
 八戒はこうやって、自然を見るのが大好きなのだ。
 野花とか、夜の海とか、朝焼けに夕焼けとか。
 「凄いですよね。散っているのに綺麗だなんて。しかもこの後落ち葉は、養分になって新しい
 樹木を育てるんですよ?人間だ、妖怪だなんていいますけど。最強なのは自然だと思いま
 せんか……」
 何か答えようかなと思ったけれど。
 八戒の表情が静かだったので、黙り込む。
 こーゆー時は、そっとして置いた方がいいんだ。
 気が済むまで、自分の世界を広げ終わったら、俺の所に戻ってきてくれるから。
 少しだけ悲しそうな顔をしたのは、落ちる紅の葉に、とても大事にしていた。
 や。
 今でも大事にしている、花喃さんの事でも思い出したのかもしれない。
 恋人で、姉で。
 他に誰もいなかった八戒を、ただ一人支えてくれた人。
 彼女が死ななければ、俺達は出会わなかった。
 八戒が俺の恋人になってくれることもなかっただろう、けれど。
 俺はそれでも、花喃さんが生きていてくれた方が良かった。
 ……誰だって、自分の好きな人に悲しい重いなど、させたくはないだろう?
 紅葉を見詰めるフリをしながら、じいっと八戒を見続ける。
 「……悟空」
 不意に、八戒が俺に焦点を合わせた。
 ああ、戻ってきてくれたんだ。
 と、自然顔が綻ぶ。
 仮定の話は、所詮、仮定でしかない。
 だから、花喃さんの死が確定している今。
 俺にできるのは、八戒を幸せにすることだけだ。
 勝手な考えだけど、お姉さんでもあった花喃さんなら、弟である八戒の幸せを純粋に願う
と思うんだよね。
 三蔵の奴から聞いた、極楽浄土って場所で。
 きっと、八戒の幸せを願っているんじゃないかなって、さ。
 「何?」
 「ありがとうございます」
 「へ?」
 俺何も、お礼言われることなんてしてないけど。
 「……君が居て、そうやって私を見て、くれるから……私はここに存在することができるん
 ですよ?」
 「それを言うなら、俺だって一緒だ」
 何時でもやわらかくて、けれどひんやりとした八戒の手首を、ぎゅうと握り締める。
 「八戒が、俺を大好きだって言ってくれるから、俺は嬉しくて、もっと頑張ろうって思って……
 八戒に相応しく存在しようって誓うんだ」
 考え考え八戒に思いを告げれば、八戒は蕩けそうに笑った。
 「大好きですよ、悟空」
 「俺も大好きだ、八戒」
 自然な流れで口付けようとしたら、紅葉がひらっと舞い落ちてきて、俺達の唇の間に落ち
ついた。
 「邪魔、されてしまいましたね」
 「全く、無粋だよなぁ」
 俺は紅葉を摘み上げて、砂利の上に落とすと、周りの気配をおざなりに警戒してから、
そっと。
 八戒の唇にキスをした。




                                      END




 *悟空は結構聡い子だと思うんですよね
   でもって、それはもうめろんめろんに恋人を甘やかすと思うんですよね。
   更には、その打算のなさに八戒が、更ににめろんめろんなってゆくと思うんですよね。
   傍から見てるとほのぼのするか、バカっぷるが!とうんざりするかどっちかな気がします。
                                                  2008/05/05




                                             メニューに戻る
                                             
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