「危険な誘惑 2012」

 

 それは1本の電話から始まった。「カット数5.000のD3が有るんだけどだれか買わないかな?」 知り合いのプロカメラマンからだった。価格は20万だという。心は揺れたが、私はCanon。今更システムの総取り替えは金銭的にもためらわれた。そこで後日丁重にお断りしたのであるが、その後メインのCanonレンズが少し不調になり始め、そろそろやばいかなという感じになった。そんな折り、再び電話が鳴る。「一応、今日売却しようと思うんだけど、最終確認。価格は中古屋に見せたら15万と言われたので、15万でいいよ。バッテリーは2本つける。」週末と言うこともあり、回答は休み明けの月曜と言うことで電話を切ったものの、もう頭の中はこの無謀な行為を肯定して、自分を納得する理由を見つけることで頭はいっぱい。結局、今年の初め病気で死にかけて、先のこともわからないので、「冥土の土産話にNikonもいじっておきたい。」これであった。理由が決まれば動きは早い。すでに何故かおろしてあった(?)現金を携えて、その足でD3を受け取りに行った。

 

 

 

 

 レンズがないので困っていると、一緒に使っていないレンズを貸してくれたが、もう動き出すと揃えたい衝動が抑えられず、80〜400@などを購入。試写と相成った。この梅雨時、お天気はすこぶる悪いが、VRの威力を見せつけられる形となる。Canonでは我慢していたので、手ブレ補正つきは初めてなのだった。しかしそれよりも深刻な問題が・・・。曲がるのである。乱視のせいかわからないが、とにかく異常に曲がる。Canonをいじっているときよりひどい。かなり注意しても曲がる。これは深刻だ。機材が良いものに変わっても仕上がりはあらが目立つだけの結果は、EOS-1Vですでに体験済み。100パーセント視野率は妥協を許してくれない。

 

 

 

 

 未だに曲がる危険性をはらんでの撮影は緊張する。とりあえず単体レンズは後回しにして、ズームレンズで揃えることにした。そして衛生測位を使ってみたかったので、GP-1を購入してみる。しかし、はじめは全然測位してくれず、サービスセンターに相談に行って初めて正常に作動した。意外に屋内はダメだったり、衛生が古くなって精度が落ちているとか有るらしく、期待ほど万能ではなかったが、今のところ意地だけでつけている。記録無精の私にはスナップなどでは、自動記録は便利であるなと思ったのだが、バッテリーも結構くうようで、使い方次第と言う感じ、海外でどうなのか今度試してみようと思う。

 

 

 

 

 

 以来気分に応じて、Canon・Nikonを使い分けて出かけている。型遅れとは言え、何という贅沢。何という無駄であろうか。反省点は多いとはいえ、冥土で写真談義する際は、両方に加われると言うことで、今は双方ともちゃんと稼働させてあげられるよう、まめに出かけている。おかげで中古カメラ屋に足を運ぶ機会が増え、誘惑が増えてしまった。PENTAX6x7の後期型が3万円。CONTAX RTS3が3万を切っていた。有る程度ボディーがきれいだったら、もう買うのも時間の問題かもしれない。しかしだ、もうフイルムは現像も高くて、気楽に使えないので考えてしまう。使わずに眠っているカメラは、個人的には不憫で、あまり所有したくないのである。

 

 

 

 

 

 D3はMark3に比べ若干画素数が多いので、何か画質にも余裕が感じられる。どちらもフラッグシップだけ有り、シャッターストロークが快感だ。水準器は2008年販売開始にも関わらず、搭載されていたのには驚きで、曲がる私には嬉しい機能だった。反面、先行して販売されていたMark3には、センサークリーニングが搭載されていたので、これがスペースの関係で見送られていたのは知らなかった。これだけは残念で、D3Sだったらと思ってしまった。前から聞いていたことだが、Canon・Nikon、ここまで逆にするかと言うほど、ピントリングから、露出補正のダイヤルまで、回転が逆に出来ていて戸惑う。初めはカスタムで対応すれば一部変更出来そうだったのでやってみたが、一部修正すると、別のところが逆になってしまうので、あきらめた。結局慣れるしかないのねといじくっているが、いざ慌てて撮る段になると、Canonに慣れた体が逆に反応してしまう。

とりあえず、暫く高価な私の相棒は、趣味を楽しいものとしてくれるに違いない。

 

 

 

(2012.7月記)

 

 

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