「ブルートレインと飛行機」

 

 東海道のブルートレインが減少の傾向にある。少年時代あれほど乗ってみたいと憧れ、夜のホームでシャッターを押し見送ったテールランプ。大人になった現在、乗るのは飛行機ばかりでほとんど利用することはない。やはり時間的なものが大きいだろう。飛行機で1時間30分の道のりをブルートレインは一晩駆けて走る。サラリーマンになるとやはり早く着いてホテルでのびのびを選んでしまう。工程上止むを得ない場合もある、そんなときはB個室を探すが満席のことも多い。最近では2月頃高松までサンライズ瀬戸に乗ったのだが、以下はその時感じたことである。

 受験シーズンなのかA個室から全て満席状態で、かろうじてキャンセル分でノビノビ座席なるものを確保する。要するにカーペット車だ。仕事終了後、早朝高松に着きたかったので、夜行バスも満席な事から初のサンライズ利用となった。東京駅に着くと入線まで20分ほどある。しかしホームにはほとんどベンチがない。飛行場と比べると圧倒的にこの辺の配慮が欠落している。仕事疲れもあり腹立たしい。この時間ともなると弁当の確保も難しくなるのは、旅の演出としては最低レベルであると言える。昔は入線から発車までかなり余裕があったのだが、現在は入線するとすぐ発車だ。せわしない。ノビノビ座席は学生時代であればこんな便利なものはなかったろうが、社会人となってはきついものがある。隣とのカーテンもないので、背広を脱ぐにもなかなかタイミングがはかれず、着替えがなければラフにはくつろげない。たまたま自分は下段であったのだが、狭いスペースで対面するホームから見下ろされる気分は何とも惨めな気分であった。おまけに当然のことながらシャーワー室も遠いとなるとおっくうになる。夏場はやはりきついであろう。どうみてももう我々の世代が快適に利用できるのは、シャワー室完備の上でB個室以上であると言える。昨年「あかつき」のB個室、「出雲」のA個室を利用したが、前述のようなホームの問題をのぞくと、プライバシーが保たれて有り難い。しかし、隣からの音漏れや、テレビや音楽が車内放送の度に中断されるのは、仕方のないこととわかりつつも不満に思ってしまう。旅慣れた者にとっては、過度の案内ほどしんどいものはない。

 これは自分だけなのかもしれないのだが、貨物が衰退するに及んで、操車場自体が減り、なおかつ水銀灯などの照明設備がなくなったせいもあるのか、窓の景色が非常につまらないものとなった。ただ暗やみを走っているような、昔わくわくして眠れず眺めた景色がなくなった気がする。加えて東海道系に特に思うのだが、内装の造りがとても無機質で温かみがなく、それが老朽化に伴い実に旅のムードを退廃的なものにしてしまう。北海道へ行く「北斗星」・「トワイライトエクスプレス」、そして「カシオペア」とそれぞれ凝った演出がなされているというのに、こちらは非常に陳腐である。私は九州方面にしてもそれなりの演出を企画することで、かなりの集客が出来ると思うのであるが、やはり現状のまま行くと東海道ブルトレの未来は厳しいと実感した。経営側がブルートレインに見切りをつけているのか、そんな印象がホームにも列車にも投げやりな配慮不足を感じて失望してしまう。そこに気がついて改善できないようであれば、全廃も時間の問題であるかもしれない。

 

 

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