「廃線後の下津井電鉄」

 

 

 廃止後の下津井電鉄の姿がどうなっているのか。これは一度、自分の目で確認しておきたかった。訪問時はまだ軌道の撤去も済んでおらず、架線柱も架線を撤去したくらいだった。

 

 

 下津井駅構内は高い柵が張り巡らされ、立ち入ることはできなかったが、まるでタイムカプセルのような感じで、当時の雰囲気をよく残して、そのままにされていた。しかし、ついこの前までの現役を知る身としては、草蒸した寂しげな構内は、浦島太郎的な気分で、唖然とさせられた。

 

 

 構内には無蓋貨車が1台、野ざらしになっていた。

 

 

 そして車両達は仲良く並んで、保管されていた。しかし、台風のせいか屋根はほとんど吹き飛んでおり、野ざらしと大して変わらなかった。この訪問からすでに数年経つが、彼らはどうなったことであろうか。

 自分は初訪問がずいぶん遅れてしまったので、観光鉄道としてずいぶん変わってしまっていた。あの青い海をバックにのんびりとした風景を走る姿を、自分ものんびりとカメラを向けることを夢見ていたのだが、かなわなかったわけで、唯一、現役のうちに訪れたことだけが救いとなった。ラストは奥の方に眠っている井笠鉄道のホジが、海をバックに廃線処理して走る姿を見たい。そんな夢を描いたものだが、それも叶うことなく、線路はいつのまにか撤去され、その跡は雑草の中に埋もれるように消えてしまった。

 

 

 (記.2000.10)

 

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