尾小屋鉄道の面影集め

 

 尾小屋駅跡でなんかわびしい気持ちになったまま、今度は粟津へ向かった。なんかひっそりしているのでいやな予感がした。恐る恐る車庫をのぞくと見事にレストアされた車両達が静かに眠っていた。動かないのかと事務所へ行くと、どうやら14:30が出たばかりで、16:00に本日の最終が走るという。「よかった。」私はロケハンをはじめた。

 

 

(協三工業製DC121です。)

 軌道は駅を出るとしばらくまっすぐ、踏み切りを越えたところで90度右へカーブし、さらに直線をすすみエンドとなる。予想以上に距離感があり、雑木林の中雰囲気もいい。タイガーロープや写真を撮る引きがないのは残念だが、安全が第一優先の児童館の敷地では十分すぎる演出と言えるのではないのだろうか。我々でも楽しめる子供のための施設ということを我々は認識する必要がある。

 ロケハンもきまり線路際で待ちかまえていると、10分前になって線路の上をおじさんが歩いてくる。変な人だなと思っていると、この人が運転士さんで、毎回運転前に安全確認のため軌道を歩いて確認するらしい。あたりまえのことではあるかもしれないが、この小さな保存線が立派に尾小屋の面影を伝えていてくれていることに、私はとても感銘を受けた。おじさんは帰り際、「16:00に最終が走るけど、乗らないないのか。」と声をかけてくれた。それが何とも自然で、そんな言葉をどこかのローカル線ででも、聞いた気がする。懐かしい気分でいっぱいになる。

 16:00。キハ1はタイフォンもなく静かに車庫から出てきて、いつのまのか集まった子供たちをたくさん乗せて走り出した。

 

 

 日も傾き、影が切れなかったが、どうだろう現役時代を彷彿とさせていないだろうか。これは楽しめる。走り出しはかなり揺れるらしい。是非とも今度、私も乗ってみたい。気がつくとホームには出発確認の児童館の職員。踏み切りにも安全確認の職員が配置されている。思ったより人件費のかかる、大変なことなのだ。有り難い気持ちが倍増する。

 

キハ1:おでこの改造で随分イメージ変わりましたよね。

 

 子供たちの歓声であふれる一時のホーム。まるっきり現役の鉄道と感じさせるすばらしいところである。お客さんを降ろすとキハ1は何事もなかったように車庫に静かに入っていった。その自然さがとても貴重なものに思える。列車の来る時間に人が集まり、汽車に乗り込む。そして、汽車が去ってしまうとまた静寂が訪れる。そんな光景を私はローカル線に求めている気がする。

 尾小屋鉄道の保存先を2箇所訪問して、あまりの違いに驚いてしまった。尾小屋駅跡の方は個人所有であるから、資金的なこともあり無理もないことかもしれない。しかし、勝手なことを言わせてもらえれば、この粟津の公園で全ての車両が動いてくれるようになればと思ってしまう。あの子供たちの歓声の中で動いているキハは私の求める保存鉄道そのものであった。今度はDC121を撮りに、そして乗車を目的にやってくることにしよう。その時がとても楽しみだ。

 

 

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