三井石炭鉱業三池鉱業三川鉱

 九州には昔、明治鉱業というノッポ電機で有名なところがあったがとっくになくなっており、草軽電気鉄道・太平洋炭鉱も見ることのなかった私には、ノッポ電機への憧憬は強くなるばかりであった。この三川鉱も「知られざるナロー」で初めて知ったのだが、大牟田のはずれという以外場所は分からなかった。

 ちょうど憧れていた三井三池専用線を訪問したおり、「そう言えば三川鉱も一緒に撮れれば、良かったのになぁ・・・。またここまで来るのは一苦労だ。」なんて思いながら、電気機関車を追いかけ回していると、お昼のサイレントともに、機関車がピタッと動かなくなってしまった。それではとばかり付近の探検を始めると、私有地にいつのまにか迷い込んでしまった。

トロッコなどが見つかり、「ありゃ、りゃ?」と思っている内に、このノッポ電機が姿を現したのである。

 

 

 驚いたことに三川鉱は、三井三池専用線の三池港車庫と背中合わせにあったのであった。これはラッキーとばかり恐る恐る構内を突っ切った、どなられるのではと構内の写真をほとんど撮っていないのが悔やまれる。敷地内を抜けると鉄橋を渡り、その先にズリ捨ての広大な敷地がある。電機はその間を往復している。「シュルシュルシュル〜」と架線を擦る音をさせ、パンタをぐらぐらさせながら、ちょこまかと動きまわっていた。「草軽のあのデキも、ちょうどこんな感じであったのだろうなぁ。」そう感じさせた。

 

 

 やはり構内を思いっきり撮りたいと思ったので、守衛のところで来意を告げると、本社の許可を得てくれという。いつものことと場所を聞くと、結構遠い。車など当然なかった頃だから、とぼとぼと歩いていった。やっとのことで着いたが、緊張するような応接間に通され、危険のためと言うことで許可はでなかった。また、戻ることを考えると気が重くなった。

 ここはなんといっても現場作業者のための事務所のたたずまいがよかった。本で見ていた一昔前の軽便のホームという感じであったから、ここの絵を撮れるだけでもと、許可の出なかった悔しい思いは帳消しに出来た。夜のイメージで撮りたいと思い。陽の暮れるのを待って再チャレンジした。がんばった甲斐があってなかなかいい雰囲気の写真になった。欲をいえば客車でも付いていてくれれば、草軽のイメージを追えたのにと思う。

 

 

 その後少しして、ノッポ電機は北陸重機のDLに変わったことを知った。何故か北陸重機になってしまってからは足が向かず、その後早々に土場への軌道が廃止され、敷地内の使用のみになってしまった。今さらながら今はどうなっているだろうかと、三池港へ行く度にのぞいてみるのだが、線路が見えるだけで機関車には出会えずにいる。また、迷い込んだふりをして敷地内へ入ってみたい気がしているのだが、小心者ゆえどうにも勇気がわかないし、迷惑もかけられない。B型ゆえ、獲物を目の前にしてあきらめて帰るという事が、本当につらい。たった1度きりの出合いであったが、巡り合わせは本当に不思議なものである。三井三池港はなくなってしまったが、三川鉱はどうなってしまったのだろう。それにとある地方紙では、ポールを付けた機関車の放置写真を見たことがある。きっとまだ知らない風景があるはずである。どなたか知っている方がいらっしゃいましたら、情報をよろしくお願いします。

 栃木の「葛生」とおんなじで、土地の名前を聞くとときめいてしまう場所がある。ぼんやりしていると大切な何かを見落としてしまいそうなくらい、驚きがいっぱい詰まっている町。「三池港」まだ、過去帳入りには早すぎる。

 

 

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