「自宅の庭に大好きな車両を置く。」趣味人としては誰もが憧れる光景であるが、悩みもつきないらしい。京都の有名なバスオーナーであるO氏のコレクションを拝見させていただく機会がありうかがった。氏は貴重なコレクションを後世に残してくれたばかりか、出来る限りファンからの公開要望にも応えようとしてくれている、私が感銘を受けたオーナーの一人でもある。氏のお話を聞くとともに、ここでの公開をお許し頂いたのでここに紹介する次第である。
美しくレストアされたボンネットバス。撮影会終了後これから片づけというカットである。ユニックでシートを吊り上げようというところ。シート一つにしても、これだけの大きさがあるものは、重くてとても簡単には動かせない代物なのだ。
テント地のゴッツイやつが4枚。軽めの青の養生シートではいくらも保たないそうで、現状を維持するにはこれくらいのものを4枚でちょうどいいそうである。これを1枚つけるごとに風邪に飛ばされぬよう紐で固定してゆく。あっと言う間に時間が過ぎる。
見かねて手伝いながら記録する。1台で2時間は余裕でかかってしまう。ファンから金を取るわけでもなく、氏は淡々と「見せてくれと気楽に言うんだけど、この苦労をわかってもらいたいんだよね。」とおっしゃる。撮影をした者は喜々として帰れるが、その準備・片づけは相当な労力を必要とする。この公開は単なる「優しさ」だけでは片づけられない、深いオーナーの人格に寄るものであると思った。
そんなオーナーの悩みは、突然来て写真撮りたさにシートを剥いで撮影していく者だという。簡単に戻しただけではシートが風邪に飛ばされてしまうのだそうだ。そして塗装が痛む。ボディーが痛まぬよう雨に当たらないよう大事に保管されているというのに・・・。そして部品を外していく者がいる。悲しいことだがこれが現実。
私自身もそうであったが、保存や維持を気楽に考えすぎている。資金はもとより労力が必要不可欠。やはりこのような体験をするとよい経験になる。そして言動も変わってくる。気楽に「見せてください。」と言えなくなる。「保存しろ。」とは言えなくなる。そして今までの自分を反省する次第あった。