中城湾(泡瀬地区)公有水面埋立事業に係る環境影響評価に関する指摘について(回答)
2.絶滅危惧種であるクビレミドロの移植技術の確立状況と、現時点でその移植が可能であると判断している科学的根拠を示されたい。
回答
クビレミドロは黄緑藻類の一種で、国内では沖縄県の与那城町屋慶名地先(生育面積は約106ha、平成12年2月、図-2.1参照)、沖縄市泡瀬地先(生育面積は約1.7ha、平成12年3月、図-2.2参照)、恩納村太田地先(生育面積は約2ha、平成12年3月、図-2.3参照)の3海域でマツバウミジグサ等小型海草類の生育する干潟上の砂の移動がほとんどない場所にその生育が知られています。本種は、水温が高い夏場場には卵の状態で砂中に夏眠(藻体が枯死)し、水温の低い冬場にのみ藻体が出現するものであるため、肉眼では藻体が確認できるのはほぼ1〜5月頃と限られます。
クビレミドロの成熟が確認された平成12年2月下旬、泡瀬地区から屋慶名地区へ計67群体、泡瀬地区から勝連地区(現在本種は確認されていないが、本種の生育環境が存在する海域)へ23群体を各々移植して経過をみました(図-2.4参照)。その結果、移植後約1ヶ月目の3月下旬には、屋慶名地区で53群体(生存率79%)、勝連地区で16群体(生存率70%)が活着し、移植後の藻体の伸長量も4〜12o/月のものが多い状況でした(表-2.1参照)。また、移植した藻体の一部に生殖器の存在が確認され、確実に移植後も成熟していることがわかりました。その後、春〜夏にかけて藻体の枯死流出が起こり、藻体は消失しましたが、卵は移植地の砂中で夏眠し、移植後約11ヶ月目の平成13年1月下旬には屋慶名地区へ移植した3ヶ所のうち2ヶ所で再び藻体が出現していることを確認しております。
また、平成12年9月下旬、泡瀬地区の砂中で仮眠している卵を顕微鏡で確認した上で、砂床(卵を含む表層砂)を屋慶名地区へ移植する実験を行なったところ、約4ヶ月後の平成13年1月下旬には屋慶名地区へ移植した3ヶ所のうち1ヶ所で藻体の出現を確認しました。
本年のクビレミドロの生育状況は、泡瀬地区の状況をみても昨年よりも遅れているため、今後、移植先において、より多くの藻体が出現してくるものと思われます。
クビレミドロの卵は大きな拡散はせず、翌年また同じ場所に発生することがわかっています。したがって、移植場所において表面の砂の移動や地盤高等の条件が保持されれば、周年にわたってクビレミドロの生活サイクルを存続させることが可能になると考えられます。また、試験的な藻体移植や卵を含む砂床移植のいずれでも成功例が確認されたことから、現時点でクビレミドロの移植は、その生活史や生態を考慮にいれて慎重に行なえば可能であると考えております。
なお、クビレミドロの発生条件や成熟条件をより詳細に把握するとともに、種保全の観点から卵の保存技術、人工培養技術を開発するため、室内実験に付いても今後取り組んでいく予定です。
表-2.1 クビレミドロ移植追跡調査結果(移植1ヵ月後)
@泡瀬から勝連へ移植(平成12年3月22日)
移植地点 移植群体数 生存群体群 生存率%
1 23 16 70
平均値o 最大 最小 平均伸長量
26.8 48 14 11.8
A泡瀬から屋慶名へ移植(平成12年3月22日)
移植地点 移植群体数 生存群体数 生存率%
1 22 21 95
2 25 19 76
3 30 13 65
67 53 79
平均値o 最大 最小 平均伸長量
17.8 27 10 4.2
19.2 25 15 4.7
13.9 29 5 -1.9
17.4 29 5 2.8 |
重要港湾那覇港、中城湾港、金武湾港取扱貨物量、入港船舶隻数の推移
那覇港
年次 平成8 平成9 平成10 平成11
港湾取扱貨物量 千d 9,396 9,941 9,287 9,481
入港船舶隻数 隻 9,458 8,962 10,819 10,762
中城湾港
年次 平成8 平成9 平成10 平成11
港湾取扱貨物量 千d 8,183 8,657 6,136 6,112
入港船舶隻数 隻 5,458 5,599 5,265 5,520
金湾港
年次 平成8 平成9 平成10 平成11
港湾取扱貨物量 千d 10,796 12,218 11,468 11,912
入港船舶隻数 隻 976 1,123 1,142 1,292
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