琉球新報社ホームページ

琉球新報購読受付
新聞記事トップ

泡瀬の干潟トップ
  2002年 2月14日 夕刊 3面
世界に対する責務/ジュゴン保護報告/環境団体など対策訴え/「基地計画と矛盾」

 沖縄のジュゴンが危機的状況にあることが国連環境計画(UNEP)の報告書で警告されたことに対し十四日、県内外のジュゴン保護関係者から「日本は世界に対して保護の責任がある」「生息地に基地建設は矛盾する」など、保護対策を求める声が上がった。世界的にも急減するジュゴン。沖縄では本島東側で最も多く確認され、そこが米軍普天間飛行場代替施設の建設予定地になっている。環境省は今月中にも保護対策事業として沖縄近海の分布調査などを始める予定。その一方で、建設は「リーフ上」で合意するなど移設作業も着々と進む。

 世界自然保護基金日本委員会(WWFJ)の花輪伸一自然保護室主任は「多数の国際自然保護団体と連携するUNEPが、危機的な状況を懸念して出した報告は、ジュゴンについて世界規模で考えていかなくてはいけないという重要性を持つ」と評価。ジュゴン生息域が基地予定地になることに「沖縄県の『自然環境の保全に関する指針』で環境の厳正な保護が求められるランクTに指定されているが、基地建設予定地になるという矛盾が既にある」と指摘した。
 「早急な保護策をずっと国にも言い続けてきた。二〇〇〇年の世界自然保護会議でも勧告が出ており、世界的にも注目されている」と強調するのはジュゴン保護基金委員会の東恩納琢磨事務局長。「日本は先進国として保護の責任がある。世界に誇れるような保護策を打ち出すべきだ。それが国際貢献にもなる」と感想を述べた。
 ジュゴンネットワーク沖縄の土田武信事務局長は「ジュゴン保護のための基礎調査はすでに行われているのに、なぜ実際の保護施策が出てこないのか」と憤る。「ジュゴンの生存を脅かす漁業の網、米軍の海上軍事演習、新たな基地建設をどうするのか、生物多様性保全の意味をより多くの人があらためて考えるきっかけだ」と話した。
 環境省は、沖縄本島周辺海域に生息するジュゴンの全般的な保護方策を三年かけて行う予定。今月中にも調査が始まる。同省の担当者は「国際的な動きには注目しており、報告書を取り寄せて必要な情報は参考にしていきたい」と話した。
  関連情報