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  2002年 2月 8日 朝刊 5面
社説/住民投票否決/さらに理解求める努力を

 泡瀬沖合埋め立て事業をめぐる住民投票条例案が沖縄市議会の臨時議会本会議で否決された。同事業の賛成・反対を問う住民投票条例案の否決は昨年七月に続き二度目だ。
 市議会の議席は与党が圧倒的に多く、野党は議長を除く三十四人のうち九人。半日におよぶ議論・質疑の後、賛成七、反対二十三で否決された。
 審議では泡瀬干潟の保全問題、市民負担について、議論は深まらず、平行線をたどったのは残念だ。
 泡瀬干潟・住民投票の会の漆谷克秀共同代表は「予想していた結果。住民投票の意義についてあまり議論されなかったのが残念だ」と語った。与野党の数からいうと当初から否決はみえていた。
 行政側が強調するように歴代市長が進めてきたプロジェクトではあるが、バブル期にはほぼ休眠状態だった。二年前に計画が再び動きだしたものの厳しい不況の中、完成後の埋め立て地に企業がくるめどは今のところ難しい状態だ。
 市当局は「まだ七年先、誘致に努力する」との答弁を繰り返し、事業着工に期待をかけている。
 住民投票は県内では一九九六年九月、沖縄県が米軍基地整理縮小などで実施、さらに九七年十二月、名護市が海上ヘリポート建設をめぐって実施した。
 仲宗根正和市長は「住民投票はあくまで議会制民主主義を補完するもので、この事業については条例を制定する必要はない」との認識を示した。
 だが、住民投票条例は補完物ではなく、重要政策決定に住民の意思を反映させるのが目的。その賛否の投票を実施するのが狙い。
 開発を優先させるか干潟の自然を保護するか、住民に意思を問う分かりやすい方法だ。
 住民投票は「住民を引き裂く」との議員の声もあったというが、そうだろうか。
 埋め立て事業をめぐっては、推進する団体は八万五千人もの署名を集めている。
 これだけの署名を集めるのだったら住民投票を回避する必要はないのではないか。
 住民投票条例を要請する署名は昨年は九千四百人余、今回は約七千人だった。
 再度の住民投票否決は、国が着工のサインを出す判断材料になりそうだが、すぐに出るわけではない。現在、泡瀬沖合で続けられている国の海草藻類の移植実験は、二、三カ月後には結論が出る見込み。
 行政側は情報開示を怠らず住民の理解を求める努力を徹底すべきだ。また今後の作業も慎重に進めてほしい。
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