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  2002年 2月 7日 朝刊 27面
再び否決落胆深く/泡瀬住民投票条例/「科学的な議論ない」/市長「着工に全力」

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業に対する民意を問う住民投票条例案を否決した六日夜の沖縄市議会。否決の瞬間、審議を見守っていた条例制定を求める市民はため息ともつかない落胆の声を漏らし、表情を曇らせた。仲宗根正和沖縄市長は「選挙というわずらわしい手段をとらなくても市民の総意を得られると考えていた」として否決を評価。条例制定を求め運動を展開してきた泡瀬干潟・住民投票市民の会の漆谷克秀共同代表は、採決後の会見で今後も運動を継続する考えを示した。

 約半日をかけた質疑の後、与野党の議員十一人がそれぞれの立場で討論を展開。「事業を推進するなら財政負担の決意を住民投票で市民に問うべきだ」「市民を引き裂く住民投票はすべきではない」などと激しい主張を繰り広げた後、午後九時四十分ごろ採決に入った。新里八十秀議長に賛成の意思を問われ立ち上がった議員は七人。「賛成少数で否決されました」と議長が告げると、制定を求めていた市民は、席に座ったまましばらく動かず、互いをねぎらう与党議員らの様子を眺めていた。
 採決後、会見した漆谷共同代表は「予想されたこと」とあっさりした表情。しかし、審議の内容を問われると「もっと住民投票そのものについて科学的な議論がほしかった」と疑問を示し「会は存続させていきたい」と語った。
 仲宗根市長は笑顔を交えながら「結論を出していただき、感謝している。夢あるまちづくりに取り組んでいく。今後は着工に向け、最大限の努力をしていきたい」と話した。
 質疑で、条例制定を求める野党議員らは仲宗根市長の意見書に「住民投票が必要ないとする理由にならない」と批判。事業の採算性、市民負担などについて当局をただした。
 しかし、議会で承認を得て、市民と一体となって、「計画的に進めており、自信を持っている」とこれまでの答弁を繰り返す当局の間で、最後まで議論は深まらなかった。
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