社説/環境アセス条例/地域環境に一層の監視を
一定規模以上の開発を行う事業者に、事前の環境影響評価(アセスメント)と事後調査を義務付けた県の「環境影響評価条例」が全面施行された。
都道府県では最後の施行となったが、沖縄の島しょ性に配慮して、対象事業に砂防ダム、防波堤、養殖場を盛り込むなど、独自色を打ち出している。これを契機に、地域環境に対して住民が一層関心を持ち、きめ細かに監視の目を光らせていくことを期待したい。
開発が環境に与える影響を事前に評価し、必要な保全措置を取る環境アセス法は、一九九七年に制定された。これを受け、法的な根拠があいまいな「要綱」などにとどまっていた大半の自治体が、より強制力のある制度への移行を急いできた。大型事業が対象のアセス法に対し、条例は、廃棄物処理施設など地域環境に密接にかかわる中小規模の開発を対象にしているのが特徴だ。
県の条例は、鳥獣保護区域のうちの特別保護地区などを「特別配慮地域」として設定するなど、環境保全の取り組みを強化している。知事から意見を聴く機会も従来の一回から三回に、住民からの意見聴取は一回から二回に増えた。
規制条例ではないため、罰則はないが、事業者が知事の意見に従わなかったり、虚偽報告をすると、勧告や公表などの措置が取られ、社会的な制裁を受けるという。他県の条例にみられる公聴会開催については、住民の意見を聴く機会を増やしたことや、審査会に諮って専門家の意見も聞くことなどを理由に、特に設けていない。
ただ、それだと、行政の恣意(しい)的なことにならないか不安がある。行政がこれまで各分野で設置してきた各種の審議会は、委員がいわゆる御用学者で、行政側に都合のいいことしか言及しなかった例が少なくないからだ。
条例制定の精神は立派でも、運用面で疑念を抱かれるようでは困る。そのためにも、委員の選定過程や議事をオープンにし、透明性の確保に努めることが大事になる。
もう一点、気になるのが基地から派生する環境汚染問題の扱いだ。仮に那覇防衛施設局が事業者の場合、基地内であっても条例の適用対象となるが、事業者が米軍だと条例が適用されない。条例でカバーできないこうした部分にどう対応するか、大きな課題といえる。
沖縄の島々の沿岸には、さんご礁が発達し、陸上部も含めて亜熱帯特有の動植物が数多く生息している。これらの豊かな自然環境を守り、後世に残していくことは県民一人ひとりの責務である。地域環境の保全に積極的にかかわり、意見を言っていく姿勢を求めたい。
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