泡瀬開発選択のゆくえ/埋め立て承認から1年/4/問われる開発の原点/基地返還の「布石」/依存増大へ不安ぬぐえず
「基地の存在で観光がだめになるなら基地はない方がいい。テロ後、考えが変わった」。中部観光バスの池原一成営業部長は不満をぶつけた。米中枢同時テロ後、沖縄市のホテルやバス会社は観光客や修学旅行生が激減し、大打撃を受けた。「減収は来年以降も予測できない。沖縄は基地の島とのイメージがこびりついてしまっている」
泡瀬沖合埋め立ての究極の目的は「基地依存経済からの脱却」。大型ホテル建設を中心に、国際的な交流リゾート観光の場を目指す沖縄市の目玉事業。だがテロを契機に市内の約40%を占める基地の存在が観光産業の展望に影を落とす。
埋め立て予定地の北側の陸には五十五fの米軍泡瀬通信基地が広がる。広大な基地を理由に海への開発展開を主張する仲宗根正和市長に反対派は「海を埋め立て、干潟を犠牲にするよりも基地返還が先だ」と反発する。
基地にどう挑み、街づくりを進めるか。一九九九年、仲宗根市長は嘉手納弾薬庫など市有地約四百八十fについて民法上最長の賃貸借期間となる二十年の契約を結んだ。その条件として通信基地保安水域の共同使用など十項目を国に要望。これが原動力になり共同使用は実現、埋め立て計画は大きく前進した。
「埋め立て地は通信基地返還の布石になる」。仲宗根市長は「問題はどう返還させるか。泡瀬一帯を整備し、活性化させれば返還に反対する地主を説得できる」と自信を見せる。基地依存から脱するという目的とは裏腹に、基地を一部容認して埋め立て実現を優先させた。
泡瀬干潟を守る連絡会の内間秀太郎共同代表は埋め立てはむしろ基地依存を強めるとみる。「公共工事のつけが市民に回る。負債を背負わされ国への従属を深め基地を押し付けられる」と話す。泡瀬干潟・住民投票市民の会の漆谷克秀共同代表は「なぜ返還を求めないのか。国の政策のせいにするのは責任転嫁」と市長を批判する。「国民の金をどぶに捨てるのか」と言い、地方分権時代に住民投票で国と向き合うことの大切さを訴える。
一方、推進側「美ら島を創る市民の会」の比屋根清一会長は、二十年契約については「基地に依存しているなあ…」と戸惑いながらも「だが自立に向けた千載一遇のチャンス」と前向きだ。元県議の西田健次郎会長代行は「国を甘く見てはいけない。五百億の金を出させるには基地しかない」と言い切る。
埋め立て発案者の一人、太田範雄沖縄商工会議所名誉会頭は「国にちょうだいばかりではだめ。長期展望で何か産業を興さないと基地から自立はできない」ときっぱり。基地依存と国依存を重ね合わせた。(中部報道部・新垣毅、新垣和也)(おわり) |