埋め立て承認から1年/泡瀬開発選択のゆくえ/3/土地利用/「バブル時代の計画」/沿岸漁業振興関係者/県も見直し示唆
「こんな具体的な計画はない。今、できるわけがない」。中城湾で操業する八漁協、湾周辺の市町村で構成する中城湾沿岸漁業振興推進協議会副会長の山城健青さんは、分厚い書類をじっと見つめ、つぶやいた。
百三十五nにわたる「埋立必要理由書」。二〇〇〇年六月、沖縄総合事務局が県に中城湾港泡瀬地区埋め立て事業を申請する際に添付した資料だ。理由書には、埋め立て後の土地利用計画が詳細に説明されている。
山城さんが目を疑ったのが、九十三n目。栽培漁業施設用地が千三百九十f分確保されている。施設は、協議会の計画を基にしたと理由書には記述されている。しかし、事務局を預かる山城さんは首をかしげる。
協議会は一九九四年に、「中城湾域つくり育てる漁業振興計画書」をまとめた。埋め立てを進めたい新川秀清前沖縄市長を会長とする協議会は、この計画書で「中城湾港開発計画の予定埋め立て地区内に優先的に栽培センター用地を確保する」と漁業者対策を挙げた。ところが、理由書にあるような詳細な計画は、現時点で存在しない。「これは、国や県が主体になるような大がかりな事業だ。あの時と今は違う。バブルは崩壊した。今の時代にマッチするか、見直さないといけない」と山城さんは指摘する。
具体化していない計画が、埋め立て申請の理由書には、はっきりと明記されている。申請したのは沖縄総合事務局だが、これを承認したのは県だ。県土木建築部港湾課の石垣博之課長は「(計画があるかどうか)確認までするものではない。書類審査では適格だった」と語る。屋比久孟尚県土木建築部長も「ち密な確約書を取るようものではない」と同調する。
稲嶺恵一知事は、八月の定例記者懇談会で埋め立て後の土地利用計画について「十分、時代、時代に対応しながら検討していく」と将来的な見直しを示唆した。仲宗根正和沖縄市長も「コンセプトは曲げない。社会情勢の変化に応じて若干の見直しは必要ではないか」との認識を示している。
埋め立て申請、承認からわずか一年もたたないうちに、県知事、沖縄市長が土地利用の見直しを示唆する状況が生まれている。「社会情勢の変化に対応」するのなら、一年前にできなかったのか。事業主体の知らないうちに、計画がなぜ盛り込まれたのか。承認から一年、疑問は積み残されたままだ。
(政経部・国吉美千代) |