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  2001年11月21日 朝刊 25面
埋め立て承認から一年/泡瀬開発選択のゆくえ/2/事業費執行できず/環境対策プロセス不十分

 沖縄総合事務局の中城湾港出張所内にある掲示板に、泡瀬地区埋め立て事業工事を落札した業者名と一緒に事業の一時中止を伝える文字が並ぶ。
 泡瀬地区埋め立て事業を進める際に、環境への負荷を少なくするために設置された「環境監視・検討委員会」。七月の会合で、予定地内にある海草・藻場の移植技術が確立するまでは着工を見合わせる方針が突如示され、地元を動揺させた。
 六月に県内外の建設業者へ発注した約三十億円の予算は、現在、ほとんど執行できずにいる。着工見合わせの理由を、沖縄総合事務局港湾計画課は「環境への配慮を、もう一歩踏み込んだ結果」と語る。
 一年前にさかのぼってみる。沖縄総合事務局は、環境影響評価(アセスメント)で、一九九八年度からの移植試験調査に基づき、「移植による藻場の拡大は可能」と判断した。県土木建築部港湾課も昨年十二月の免許承認の際に「事業者が実施している移植試験の経過はこれまでのところ良好な成果が得られていることから、藻場の移植は可能」と同調した。
 免許の申請前に「藻場の移植は可能」と国、県の双方が判断したにもかかわらず、環境・監視検討委員会で着工にブレーキが掛かってしまった。
 藤井晴彦氏(琉球湿地ネットワーク代表)は、「本来、環境アセスでやるべきことを環境・監視検討委員会でやっている」と指摘する。以前、環境アセスメントの準備書で、県の絶滅危ぐ種に指定されている藻の一種「クビレミドロ」さえ、リストからこぼれた例を挙げた。
 環境アセスメントに詳しい原科幸彦氏(東京工業大学教授)は「アセスメントで不明確な部分が残ったためだ。従来のプロセスが不十分だった。気が付いたら環境・監視検討委員会で論議するのは賢明なことだ」と語る。
 移植技術が確立できないことが、着工目前の壁になっている。では、免許承認前に確立できなかったのか。沖縄総合事務局中城湾出張所の栗田一昭所長は、「免許を取る前に普通はできない」と公共事業の仕組み上、これを否定する。
 しかし、年度ごとに予算を獲得し、執行する公共工事のシステムに対し、環境の調査や環境保全策の確立は専門家にとっても予測不可能な部分があり、事業者側のスケジュール通りにはいかない。海草の移植実験は台風の影響で一カ月以上も着手できず、業者へ発注した事業費が執行できずにいる現実が、それを物語っている。
(政経部・国吉美千代)
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