埋め立て承認から1年/泡瀬開発選択のゆくえ/1/深まらない議論/市長選でも争点に/゛政争の具゛危ぐの声
十月二十六日、東京の内閣府。「着工するには署名は少なくとも市民の過半数は必要だ」。埋め立ての早期着工を要請した「美ら島を創る市民の会」の比屋根清一会長、西田健次郎会長代行、仲宗根正和沖縄市長を前に、尾身幸次沖縄担当相はこう話した。住民投票実施を勧める趣旨の発言を連発、゛市民合意のあかし゛を強く求めた。席上、要請団は意外な発言に「絶対集める」と意気込んだ。
署名運動は、中部活性化に向けた計画実現への長年の思いが込められる一方で、政治色も強まっている。来年の県知事選を占う市長選が四月に予定されているからだ。組織には厳しい署名ノルマが課せられ、名簿には子供の名前も並ぶ。選挙戦の゛相乗効果゛で危機感が募る。
■「市長選も選択肢」
一方の泡瀬干潟・住民投票市民の会も選挙戦への意識が高まりつつある。運動の中で市長選をどう位置付けるか、熱い議論が交わされた。「市長選は利害などさまざまな要素が加わり、住民投票の意義をじっくり考える機会を奪う。時機をもっと慎重に考えるべきだ」と住民投票が政争の具にされる危険性を指摘する声が上がった。
だが「市長選は大きな節目。選挙は市民の重要な選択の一つ。政策を争うことは政争の具にすることにはならない。市長選前でないと時機を逸する」との意見が強く結局、住民投票に向けての署名運動は市長選前に実施することになった。
現市政に批判的な革新系野党議員らは住民投票の是非が市長選の最大の争点とみて結束。運動の進め方を話し合っている。
■困惑する市民
推進派の署名協力に対し、ある女性は「反対の人から市民負担が大きいと聞いて不安だったが、推進の人からはそうではないと聞いた。どっちを信じていいのか…」と戸惑いの表情を浮かべた。市全体のまちづくりにどう結び付くのか、議論が深まらないままだ。
この中で沖縄市東部海浜開発局は市民への説明責任を徹底しようと、重い腰を上げた。市内各自治会に事業を分かりやすくした小冊子を置き、要望があれば事業説明会を開く予定だ。新城修同局計画調整課課長補佐は事業が政治化する動きを警戒しながら「市民が計画に不信感を持っては困る。行政がやるべきことは市民の疑問を解消することだ」と話す。
(中部報道部・新垣毅)
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沖縄市東部海浜開発は十二月で埋め立て承認・免許取得から一年を迎える。国は環境に配慮し八月の着工を延期。いまだ着工時期が不透明なまま、推進・見直し両派が市長選をにらんだ署名運動を拡大する。これまでの事業の進め方や取り巻く動きを検証し、開発の行方を探る。 |