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  2001年10月12日 朝刊 31面
泡瀬干潟重要湿地に/環境省が初の選定/全国500県内55/保全地域化推進へ
/県内の「重要湿地帯」リスト

 環境省は十一日、生物の生息地として規模が大きかったり、希少種が生息している湿原や河川など全国五百の重要湿地を発表した。重要湿地のリストアップは初めて。県内からは沖縄総合事務局が埋め立て計画を進めている中城湾の泡瀬干潟、ラムサール条約に登録された漫湖など五十五カ所が、リストに入っている。

 直接的に法的規制に結び付くことはないが、同省は順次、保全地域化を進めたいとしている。保全対象でない湿地の開発計画に対しては、事業者に保全上の配慮を促すという。
 湿地の自然環境に詳しい専門家二十二人による検討委員会(座長・辻井達一北星学園大教授)が選定。湿地内の動植物や生息・生育域も細かく調べた。
 内訳は湿原百九、藻場百三、湖沼七十八、河川七十一、干潟五十、さんご礁二十六、マングローブ林二十五など。全都道府県にわたっており、最多は北海道の六十一カ所で、次いで沖縄五十五、鹿児島三十三の順だった。
 これまで注目されていなかった藻場やため池、人工物からも選定。ワカメの北限となる北海道の利尻島・礼文島沿岸や希少種のイシガイが側溝に多く生息する滋賀県木之本町の農業用水系、人工干潟の大阪南港野鳥園なども選ばれた。
 ラムサール条約に登録されている釧路湿原など十一カ所も含まれている。

「より提言を」保護派/「影響少ない」推進派

 【沖縄】環境省による重要湿地選定を受け、泡瀬干潟を埋め立てる沖縄市の東部海浜開発事業の見直しを求める市民団体は「環境保全の立場から一層の提言を」と強く要望。推進派の市民団体は「事業推進に影響を出すものではない」とし、環境について十分配慮された計画であることをあらためて強調した。
 泡瀬干潟を守る連絡会の藤井晴彦共同代表は「環境省は事業に対し直接的なコメントはしてこなかった。後手に回っているという気がする」としながらも、「選定したのであれば、環境保全の立場から藻場の移植など、事業に問題はないか踏み込んだ意見を示してほしい」と要望した。「漫湖以外の干潟についても調査を進め、重要性を県民に伝えていくことが必要だ」と話した。
 事業の早期実現を目指す五万人の署名活動を十日に開始したばかりの美ら島(ちゅらじま)を創る市民の会の比屋根清一会長は「自然環境の保全は当然だ。計画もそこに十分配慮し進められている」と強調。「開発は市の将来を考え推進されてきた。環境がだめになるわけではないということを市民に伝えていきたい」とし、事業内容や環境保全策の周知に力を入れていく考えを示した。


県内の「重要湿地帯」リスト

 ヤンバル河川群(国頭村、大宜味村、東村)▽本島東海岸(辺野古〜漢那)▽慶武原川(宜野座村)▽慶佐次マングローブ・流入河川(東村)▽大宜味村喜如嘉水田地帯(大宜味村)▽大浦湾・大浦川(名護市)▽屋我地▽アミスガーハサマ(今帰仁村)▽水納島沿岸(本部町)▽残波岬地先沿岸(読谷村)▽薮地島沿岸(与那城町)▽中城湾▽漫湖(那覇市)▽具志干潟・瀬長島・大嶺海岸(那覇市、豊見城村)▽屋富祖井(具志頭村)▽与根干潟(豊見城村)▽瀬底島小湿地・周辺沿岸(本部町)▽塩川(同)▽斎場御嶽(知念村)▽渡名喜島沿岸▽南大東島の池と洞窟群▽渡嘉敷島山地水域▽慶良間諸島沿岸▽久米島の渓流・湿地▽八重干瀬(平良市)▽宮古島中北部の湿地(同)▽宮古島洞窟群・湧泉群(同)▽池間島湿原・周辺サンゴ礁(同)▽島尻入江(平良市)▽東平安名崎沿岸(城辺町)▽嘉手苅入江(下地町)▽与那覇湾およびその周辺(平良市、下地町)▽伊良部島の入江▽平久保半島北東沿岸(石垣市)▽嘉良川(同)▽吹通川河口域・沿岸(同)▽川平湾、米原地先沿岸(同)▽カビラ湧水(同)▽御神崎〜石崎地先沿岸(同)▽名蔵湾および名蔵川集水域(同)▽宮良湾・宮良川河口域(同)▽白保海岸とその沿岸▽石西礁湖(竹富町)▽西表島山地水域・平地部天然陸水域(同)▽大正池付近(同)▽仲間川(同)▽後良川・相良川・前良川(同)▽由布島および干潟(同)▽小浜島細崎〜アカヤ崎(同)▽船浦湾と流入河川(同)▽浦内川(同)▽西表島南西部海域および河口域(同)▽与那国島の湿地・河川
  関連情報
環境省 重要湿地(500ヶ所)の選定に関する中間発表