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  2002年 2月 9日 朝刊 31面
振興か保全か、議論白熱/将来像で両派激突/やじ飛び交い一時緊迫/泡瀬埋め立てシンポ

 【沖縄】泡瀬干潟の埋め立て事業を検証するシンポジウム(主催・日本弁護士連合会など)が八日夕、沖縄市民会館で開かれ、事業者や推進派、自然保護グループの代表六人が、環境保全や地域振興の在り方などについて意見交換した。推進派が「雇用創出、産業拠点づくりに不可欠な事業だ」と強調したのに対し、反対派は「地元にしかない環境を生かしたまちづくりが必要」と主張。会場には二百人余が詰め掛け、推進派の主張に拍手で加勢したり、やじが飛び交うなど、一時緊迫した場面も見られた。

 埋め立て事業の必要性について、美ら島を創る市民の会の西田健次郎会長代行は「泡瀬に観光拠点をつくらなければ、旧市街地の発展もない」と強調。県土木建築部の久米秀俊参事は「泡瀬は中城湾港新港地区の開発にもつながっており、土砂の有効利用だ。新しい土砂だと二百億はかかる。このタイミングを逃すと泡瀬も新港地区の開発も進まない」と事業の必要性を訴えた。
 これに対し、琉球湿地研究グループの藤井晴彦代表は「環境に対する認識が甘い。干潟の価値が高まる中で、アセスにはそれが十分に反映されていない」と自然保護を最優先させることを訴えた。また沖縄総合事務局が行っている海草移植実験についても「実験は事業を行う前にやるのが普通。今は逆のことをしている。実験で何を示そうとしているのか、何をつくって何を失うのかを明確にするべきだ」と述べた。
 ホテルや商業施設を柱とした土地利用計画について、名桜大学の小浜哲教授は「バブル期の数字を基にしてはじき出されたもの。事業を進める上で臨機応変の対応は必要」と提起。また「東海岸の開発は西海岸に偏った発展を是正する意味で、泡瀬は拠点になる」と事業への一定の理解を示した。
 久米参事も「土地ができるのは十年後。十年先の経済状況がどうなるかは分からないが、現時点での妥当性があるかどうかの確認作業をしている」と現計画を進める考えを示した。
 フロアからは質問用紙で「市は冷静になって市が持っているものを生かしてまちづくりをしてほしい」「干潟の価値をどう見ているのか」「移植実験について意見交換の場を設けてほしい」など意見や要望が寄せられた。
(写図説明)泡瀬干潟の埋め立てをめぐり、さまざまな立場からの提言が発表されたパネルディスカッション=沖縄市民会館大ホール
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