沖縄タイムス社ホームページ

沖縄タイムス購読問い合わせ
新聞記事トップ

泡瀬の干潟トップ
  2002年 2月 7日 朝刊 5面
[社説]/「住民投票」否決/市民意思確認の努力を

 沖縄市の泡瀬干潟を埋め立てる計画の是非について市民に直接問う機会は、またも葬り去られた。
 市議会は、市民団体が約七千人の署名を集めて請求していた住民投票条例案を否決したのである。仲宗根正和市長も、住民投票の「必要はない」とする意見書を提出していた。
 同計画をめぐる市民の意見は二分されている。早期着工を望む人がおれば、事業の見直しを求める人もいる。
 地域の将来を左右する重要な課題について、市民の意見が対立している場合は、その課題に絞って是非を問う住民投票が最も有効だろう。
 市長は市民が示した結果に基づいて判断するのである。一つの課題に対する市民の直接的な意思表示であり、それに基づいた判断であればこそ、市民意思に依拠した政策決定が期待できる。
 沖縄タイムス社、朝日新聞社、琉球朝日放送が昨年十一月に合同で実施した電話による世論調査でも、68%が住民投票を「実施すべき」と回答した。
 計画はバブル期の発想に基づいている。策定から長い年月がたち、経済情勢や社会情勢も大きく変化した。
 時がたち、状況も変わったのであれば、一度立ち止まって計画そのものの必要性や有効性を問い直すのが、時代のすう勢である。
 この調査では、埋め立て計画に57%が反対し、「賛成」は24%だった。計画の実施で干潟が失われることに対する危機感や、計画の実現性に対する懸念を反映したに違いない。
 半面、事業推進に期待を寄せる市民もいる。事業推進派の市民団体は八万五千人の署名を集めた。
 ならば、なおのこと市民に直接「賛成」か「反対」かを問う住民投票を実施すべきだ。
 二度にわたる住民投票条例制定を「必要ない」とした市長や、請求を否決した議会の姿勢は理解し難い。
 一面で、「民意反映の仕組み」としての住民投票実現が困難な日本の現状を示しているが、間接民主主義の補完的な機能を持つ住民投票が実施できないことは、政策決定がゆがむ危険性を秘めている。
 市町村合併の協議会設置の是非を問う住民投票については、住民の直接請求を市町村長や議会が拒否しても、再び要件を満たせば住民投票を実施できる改正案が国会に提出されている。
 住民と議会の緊張関係を高めるためにも、そうした制度の導入は重要な課題である。
 沖縄市長や議会は、いま一度、市民意思は何かを確認する方策を模索してもらいたい。
   関連情報