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  2002年 1月 28日 朝刊 5面
[社説]/生物多用性戦略/期待の持てる見直しだ

 自然保護の方向性を定める政府の生物多様性国家戦略の見直し案が、明らかになった。それによると、干潟や湿地の復元など自然再生事業の導入を新たに提言、マングースやブラックバスなど海外から移入された外来種にも排除や管理など具体策を取るよう求めたのが特徴だという。
 この見直し案について(1)自然保護の明確な目標が示されていない(2)国土利用計画などとの調整が不十分(3)各省の縦割り行政がそのまま-などの指摘がなされるが、明らかになった新戦略はそれなりに評価できるものだと思う。
 新戦略案のいずれもが、沖縄の自然保護と深いかかわりを持つものばかりだからである。干潟、マングース。この二つは今、一番に問われている問題である。
 新戦略では、湿原や干潟が全国的に減少・劣化の傾向が続いているため、その保全強化に加え、再生・修復の手だてをするという。
 具体策として、北海道の釧路湿原で国が進める河川の再蛇行化などが挙げられているが、沖縄の泡瀬干潟問題なども対象になるのではないだろうか。
 マングースの排除は、本県にとって特に急務である。
 外国からの移入種や外来種の問題では、もともと生息・生育していた種に悪影響がある場合は、排除・管理に必要な体制の整備や資金を確保する。
 ノグチゲラ、ヤンバルクイナなど貴重な動植物が生息するやんばるが北上を続けるマングースに脅かされている。これをどう食い止めるかが大きな課題となっており、新戦略にマングースの排除が明記されれば、この上もないことだ。
 生物が絶滅しないよう保護しながら継続的に利用することを目的に、一九九三年から発効した生物多様性条約(百五十七カ国が批准)に沿い、日本はいち早く国家戦略を打ち出した。だが、その実現を裏付けする戦略には乏しいとの批判を受けてきた。
 新戦略はこれにどうこたえ、どれだけ自然の価値を重視するかである。
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