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  2002年 1月10日 朝刊  5面
[論壇]/屋良朝敏/エコツーリズム/泡瀬(沖縄の海)の将来、皆で考えよう

 沖縄の観光資源でアメリカに勝っているものがあるとすれば、それは海の美しさであり沖縄の海は、世界でも屈指の指に入るほどである。アルカトラズ島のあるサンフランシスコ湾の海より、ロサンゼルスの海浜のビーチよりもきれいな沖縄の海である。

 パラオの海といい勝負。ジュゴンもすむ南方の海と続く多様性に富んだ海。世界を旅し、比較して沖縄の海の素晴らしさが分かる、沖縄の観光客はそのほとんどが海に引かれて来るのである。そして、海の美しさ、豊かさはトータルとして干潟も含んでいる。
 初夢を見た。泡瀬の干潟は沖縄のほとんどの干潟や海岸線が埋め立てられてしまったために、大きな希少価値が出ている。それを生かしたエコツーリズム的な観光事業を企業や行政、NPOが真剣に取り組み新たな観光スポットができた。ミナミコメツキガニ、ハボウキ貝、ムール貝、クビレミドロ、枝サンゴと海藻などの見学をする。
 また渡り鳥などの観察もやっている。そして、桟橋上の店舗から干潟を一周するミニモノレールが発着している。それは、津堅や久高までもつながっている。干潟ではシュノーケリング、干潟探索グッズ(長靴・帽子)をレンタルしている。食事は泡瀬で捕れた魚、アーサやモズクなどの料理が出てきた…。
 産業にはモノを生み出す産業と消費する産業(例えばカジノ・軍事基地)がある。モノを生み出す産業がないと世の中は成り立たない。干潟は産業ではないが生物を生み出す命の宝庫であると同時に、地球環境を浄化(リサイクル)している。その金銭的価値は一ヘクタール(百メートル四方)で約九千万円ともいわれている。百八十六ヘクタールの埋め立て地の価値は約百六十七億円にもなるが、浜下り文化など金銭には替えられない価値がある。
 沖縄市にも海水浴場がほしいから埋め立て人口ビーチを造るというが、各市町村がみんな人口ビーチを造ることはいかがなものか。分権の時代といえども市町村合併も進んでいるなか、沖縄県を一単位として見るグローバルな視点がほしい。県や国の調整的な指導が望まれる。
 泡瀬干潟の埋め立ては新港地区とフリーゾーン地区港の浚渫(しゅんせつ)土砂処分のためであり一石二鳥というがそれは安易である。そんな土砂は、遠くの深海に返すとか、無人島の周辺に持っていけばよいのでは。いったん埋め破壊された自然は戻らない。環境監視検討委員会や行政は自然と共生した埋め立てが可能と言うが、諫早の例のように自然環境が破壊されたらその責任をどう取るのか、歴史の審判に耐え得る結論をハッキリ示すべきだ。

 来る十二日(土)、午後一時半から四時半、沖縄市農民研修センターで泡瀬干潟を守る会・南伊豆海洋生物研究会主催、日本自然保護協会後援で「渚のエコツーリズムと地域振興」と題しシンポジウムを行います。入場無料。多くの市民の皆さんの参加を呼び掛けます。(泡瀬干潟を守る連絡会幹事)
(写図説明)屋良朝敏
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