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  2002年 1月 8日 朝刊  5面
[論壇]/新崎康浩/住民投票で街づくり成功

 泡瀬干潟の埋め立てにおける事業推進派の署名と住民投票を求める署名活動がそれぞれ展開された。住民投票を求める署名活動は沖縄市在住の公務員を除く有権者が受任者となり選挙権を持つ市民本人の自筆による署名を集めていた。

 受任者の皆さんは「市民の本当の声を市政に反映させるべきだ」との信念で署名活動を展開、その結果七千余人もの署名が集まったのである。うそも偽りもない署名者の意思を表した本音の自筆の署名である。
 対して事業推進派の署名活動の実態は何なのか。沖縄市の有権者は九万二百八十五人(昨年十二月現在)、集まった署名は八万五千二百五十四人という。95%もの有権者の署名を本当に集めたのだろうか。先に行われた市民アンケート(65%が反対)を考えるとその署名の数の根拠、質には疑問を持ってしまう。
 推進側の署名活動や推進しようとする行動全般を見たときに怖いのは、不利な情報は公開しなかったこと。そして権力者(行政機関)が弱者(職員、事業者、市民)に対して異論を挟むことは許さないと暗に圧力をかけ本音を封殺し論議をしようとしないことである。それが民主主義なのか。例えば国においてもある省庁が一つの事業なりを推進しようとしても別の省庁は別の立場で好ましくないということを明らかにしている。
 泡瀬の干潟は子供たちにとって海の自然を学ぶ体験学習に最適で、しかもそれは他市町村からも訪れる価値があるほどの干潟である。実際、泡瀬の干潟を体験した子供たちは「なくしてほしくない」と作文などにも書いている。なのになぜ教育委員会は埋め立てに反対しないのか、市がやろうとしているから反対できないというなら変な話ではないか。
 教育委員会やPTA連合会は、子供たちやその親たち、教育現場の皆さんの立場に立つべきではないか。上からの指令を一方的に下におろすだけの組織はいらない。現場の声を吸い上げて上と論議することも大切な役割のはずである。事業を推進しようとする構成団体の各組織においても同様である。
 十分な組織論議をせずに名前を連ねて後で責任は取れるのか。商店街や観光関連の事業所はテロの後さらに深刻な状況ではないか、台風で被害に遭われた皆さんの住宅や下水道、河川整備が先ではないか。土木だけでなく建築工事も必要ではないか。雇用も今必要でしょう。「推進署名はしたけど住民投票はやってね」。市民の本音はそこにあると感じます。事業を推進しようとする構成団体各組織においても、取り返しのつかないことをただ流れの中でやろうとしていることにいま一度立ち返るべきではないでしょうか。
 市民への正確な情報開示と論議が不足したまま事業を進めるのは絶対に間違っています。民主主義の根幹をなす住民投票を実施する中で市民と本音のコミュニケーションを交わしてこそ街づくりは成功すると考えます。(沖縄市民平和ネットワーク事務局)
(写図説明)新崎康浩
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