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  2002年 1月 6日 朝刊  20面
[リポート2002]/東部海浜計画の周知活動(沖縄市)/
冊子作り説明に躍起の市/現実性乏しい数字/担当「達成できる目標」


 泡瀬干潟の一部を埋め立てる沖縄市の東部海浜開発事業で、市当局は市民周知を図ろうと躍起になっている。昨年末には事業内容などを説明する冊子「Q&A」を発刊、さらに詳しい内容をと「もっと知りたい」と題した冊子を作製した。「観光客は来るのか?」「計画実現でどんな効果が生まれるのか?」-しかし、それらに対する答えは根拠の薄い数字が挙げられ、現実性に乏しい。市が示す市民周知とは何か。その内容を検証する。
 市東部海浜開発局が作製した「マリンシティー泡瀬 もっと知りたい! Q&A」は全二十ページ。泡瀬地区での街づくりの必要性や土地利用計画、環境への影響など二十の質問と回答からなる。
 観光リゾートホテル建設を柱とする同土地利用計画。「観光客は来るのか」の質問に対しては、「県の第四次観光振興計画は、十年後の年間観光客数の目標を六百万人と設定する方針。延べ入域客数は一千九百四十四万泊」を前提とした上で、泡瀬地区の宿泊需要目標を「五十六万泊」としている。この数字は県分の2・9%に当たり「沖縄市が持つ都市の力からして、十分達成できる目標値」と位置付けている。
 この五十六万泊の数字は、バブル期の調査報告書を基礎資料とした「埋立必要理由書」を基に泡瀬地区で十万七千人を受け持ち、平均滞在を五・二七泊としたもの。
 市担当者は「県の目標値とストレートに比較できる数字ではないが、市が受け持つ分として過大な数値ではない」と説明。しかし、2・9%という割合がなぜ十分達成できるかの根拠は「ない」という。さらに五十六万人の需要目標の根拠を「沖縄市の都市力」とし、市独特の伝統文化やエイサー、音楽などの"都市力"が、泡瀬地区の宿泊需要目標を達成できる-と話している。
 また推進派が強調している雇用効果については、「計画が実現したときにはどんな効果が期待できるか」の質問に、「市内の失業率は現状のままだと10・2%で、東部海浜開発が実現したときは5・2%と半分になる」としている。これは一九九三年に市が実施した『社会経済波及効果測定調査報告書』を抜粋。ところが、市担当者は同報告書の数値の割り出しについては「分からない」と話しており、「あくまで努力目標の数字。市内から六千人を100%雇用すれば実現できる」と説明している。
 昨年、本紙などが実施した世論調査では「市の説明不十分」が75%に達し、市や推進派が主張してきた市民の総意が覆される格好となった。これを受け、仲宗根正和市長は管理職を対象に異例の訓示を行ったり、パネル展を開くなど、当局は焦りを隠せない。
 しかし、根拠のない数字を並べた説明では、市民の理解は到底得られないはずだ。職員間でさえ「理解できない」「分かりにくい」との批判の声も多い。財政負担や企業誘致策、環境問題など課題が山積する中、市民周知を目的に作製した冊子を見る限り、市当局は説明責任をいまだ果たせていない。(中部支社・赤嶺由紀子)
(写図説明)泡瀬埋め立て事業について、市民周知を図ろうと市が作製した冊子など
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