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  2001年 9月20日 朝刊 5面
[論壇]/野島雅安/泡瀬干潟/「命の源」自然は偉大な財産

 自然の恩恵を受け、自然の温かい環境の中でわれわれは生活している。自然は人間社会だけでなく、すべての生き物の源であり、命をはぐくむ大切な自然は、全人類の掛け替えのない偉大な財産である。
 泡瀬干潟もまたその一つであろう。干潟を埋め立てることは、そこにすむ動植物を死に追いやるだけでなく、地元の人々の憩いの場を奪い、子供たちが身近な自然と親しみ、自然観察を通して渡り鳥との触れ合いなどをも奪うものである。
 泡瀬干潟の埋め立て事業については、十五年ほど前から計画されたというが、今なおその全容が見えてこない。それは計画そのものがバブルの絶頂期に作成されたものであり、そのまま実施されることに起因するのかもしれない。バブルが崩壊し、不動産会社の相次ぐ倒産や、金融機関などの破たんによって莫大(ばくだい)な公的資金が投入されている現状、公共工事の見直しが全国的に叫ばれている折、なぜ今泡瀬干潟の埋め立てに固執するのか、その理由がはっきりしない。
 もし中城湾港のしゅんせつ工事に伴う土砂の捨て場に窮しての上なら問題である。バブル絶頂期の経済情勢と崩壊後の今とではその格差は計り知れないものがある。従って泡瀬干潟の埋め立て事業についても、公的資金が投入される以上、計画の見直しと情報開示は必要であろう。
 企業誘致の面にしても、かなり厳しいものがあると思う。ほとんどが観光産業の誘致に重点が置かれている以上、ホテル建設を中心としたリゾート型になるのは当然だとしても、基盤そのものが弱いように思う。ショッピングセンター、ボウリング場、映画館、ゲームセンターなどなど、すべてが人間の流れに左右され流動的であり、安定性に欠ける。
 もう一つの問題点は、自然環境への配慮である。泡瀬干潟は、全国でも有数の干潟であるといわれ、数多くの貝類やクビレミドロのような貴重な藻類も生息しているという。渡り鳥のえさ場としても大変重要である。また、地元の人々をはじめ、近隣町村からも多くの人たちが詰め掛け、潮干狩りを楽しむ光景などは自然の豊かさを感じさせる。
 泡瀬干潟の埋め立て事業に賛否両論があるのは当然である。いずれの意見も尊重されなければならない。「藻場を守ることは計画の妨害を意図している」というのはいただけない。幼稚である。
 ともあれ、総合事務局が着工方針を転換し、藻類の移植を先行させたことは、これからの埋め立て事業に多少なりとも影響が出るだろうし、何よりも大切なことは推進派と反対派に話し合いの時間を与えてくれたことである。
 両者とも意地の張り合いではなく、議論を重ね、妥協点を模索してほしい。決して将来に禍根を残すようなことがあってはならないのである。(勝連町南風原五〇七六、警備員)
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