[ニュース近景遠景]/泡瀬干潟埋め立て署名/推進派、市人口の過半数/少なくない住民投票賛同者
沖縄市泡瀬の埋め立て事業で、推進派グループによる署名集めは七日現在、六万四千人に達し、人口の半数を超えた。全集計が出そろうと七万は突破すると見込まれる。推進派は署名を持って政府への要請行動を展開する構えだ。一方、「大事なことはみんなで決めよう」と訴える市民グループも街頭署名を続けている。いずれも「市民の意思」をアピールする賛否両派による綱引きが今後も続きそうだ。(中部編集部・屋良朝博、赤嶺由紀子)
「市民の意思を示すなら、三分の一の署名では意味がない。過半数は必要でしょう」
今年十月二十五日。尾身幸次内閣府沖縄担当相は、泡瀬埋め立て事業推進を求める陳情団に「市民の半数以上」の署名を要求した。
沖縄市の人口は十二万四千人。「美ら島を創る市民の会」(比屋根清一会長)は当初、署名五万人を目標に掲げていたが、尾身大臣にその根拠を質問され、比屋根会長らからは答えがなかった。
陳情団は大臣の問い掛け、そして「過半数」発言から、公共事業見直しを進める小泉政権下での厳しい雰囲気を感じ取った。
陳情の日から目標数は七万人に。「クリアしなければ事業はストップする」との掛け声が連呼された。市職員が自治会公民館へ出掛けての説明会、週末には企業などを動員した家庭訪問で市民に事業推進を訴えた。
推進派の市議は「署名してくれない市民を二時間がかりで説得した」と得意顔で話す。事業の中身を知らない市民も少なくなかったが、署名活動で関心が高まったことは間違いなかろう。
市内の有権者は八万九千人。署名七万人には未成年者も多く含まれる。比屋根会長は「小学生でも物の分別はある。ビーチができ、サマーキャンプなど新たな教育の場を提供できることが未成年者も署名させた理由だ」としている。
署名活動では多くのパンフレットを配布し、埋め立てのメリットをアピールした。しかし、ホテル・リゾート開発を柱とした計画そのものの実効性には疑問が持たれ、県、市とも見直しを迫られているのが現状。
尾身大臣は七日の閣議後会見で、推進派の署名について「地元の意思の裏付けとして、考慮要因となる」と評価した。
一方、「大事なことはみんなで決めよう住民投票市民の会」(漆谷克秀共同代表)は、約四百三十人の受任者が、市内の住宅街や商店街などを中心に、街頭署名を展開している。
「推進の署名もした。でも住民投票は実施すべきだと」と賛同してくれる市民も少なくないという。
同会は立て看板三百枚を市内に設置し、住民投票の実施を呼び掛けている。前回の住民投票請求で集めた九千人余の三倍、三万人を目標に十九日までの署名締め切り日まで、運動を活発化させる構えだ。
(写図説明)推進署名のローラー作戦に参加し、割り当て区域を確認する企業関係者ら=12月1日、沖縄市かりゆし園 |