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  2001年11月20日 朝刊  5面
重み増す「住民投票」/反対派・決定するのは市民/推進派・事業の説明不足だ/沖縄市民世論調査

 【沖縄】「事業内容が理解されれば賛成が増える」「住民投票で決めるのが市民総意だ」。泡瀬埋め立て事業の世論調査で、市民の57%が反対、賛成は24%という結果に事業推進派と住民投票を求める市民団体はそれぞれの受け止め方を示した。今月に入って署名活動を始めた推進派は「取り組みが遅れた分、もっとひどい結果を予想した」と冷静。住民投票を求めるグループは「市民への説明が十分でないことが明らかになった」と勢いづく。埋め立ての是非をめぐり、双方とも主張を譲らない。(1面参照)
 事業推進派「美ら島を創る市民の会」の比屋根清一会長は「当然の結果でしょう」と受け止める。「干潟の自然保護と住民投票が多く報道され、市民の既成意識が結果として表れた。事業推進を求める市民運動は緒についたばかりだ」とも。
 推進派内には、事業内容が市民に知れ渡れば賛成が増えるという見方が強い。「保革の歴代市長が推進した事業を、なぜいまさら反対なのか」と不満を語る東部海浜リゾート開発推進協議会の仲宗根健昌会長。地元泡瀬の当真勲東部・周辺開発研究会長も「泡瀬以外の住民が安易に反対するのはおかしい。説明不足がまずかった」と、行政が説明責任を果たしてないと指摘する。
 一方、「大事なことはみんなで決めよう住民投票市民の会」の漆谷克秀共同代表(沖国大助教授)は、「妥当な数字」と予想範囲内の結果と受け止める。「市民は公共事業の弊害を知っている」と指摘した。
 琉球湿地研究グループ代表の藤井晴彦さんは「市民が疑問を抱いていることが明らかになった。多くの人が関心を持ち、情報を知りたがっている」と住民投票の必要性を強調。
 FMチャンプラの新崎康浩代表は、埋め立て推進派にも住民投票を求める意見が多いことに注目する。「今回の世論調査は、さらに多くの反対意見が潜在していることをうかがわせる」と分析した。
 事業推進派は署名七万人を目標に、宣伝カーを繰り出して活動を展開中。住民投票の市民団体も署名集めを始める。世論調査結果も踏まえた双方の署名活動は、激しさを増しそうだ。

県、状況見て判断

 世論調査の結果について、県土木建築部の屋比久孟尚部長は「今のところ、どうこうとは言えない」と見解を避けた。地元の沖縄市で埋め立てについて賛否両派の動きがあることを挙げ、「状況を見ながら総合的に判断したい」とした。

不十分な説明、反省すべき

 坂井巧総合事務局港湾計画課長の話 住民への説明が不十分との結果は、率直に反省すべき点だ。反対理由で最も多い「干潟が失われる」との懸念に対しても、環境に配慮した取り組みを説明し、理解を得たい。現在、中断している事業をどうするかは、市と県による計画の再確認作業と、環境監視検討委員会の結果を総合し判断したい。


意外な結果だ・仲宗根市長

 埋め立て事業には「反対」との意見が多かった調査に、沖縄市の仲宗根正和市長は「歴代市長がイデオロギーを超えて、市を挙げて進めてきた事業で、賛成する市民が多いと思っているだけに、意外な結果だ」と受け止めた。
 また「これまで懇話会や住民説明会などで周知を図ってきたつもりだったが、十分ではなかったと思う」と、行政側の説明責任が不十分だったことを認めた。
 その上で「細かく説明すれば賛成者が多くなるだろう。これを反省点として周知に努めたい」とコメント。市民投票の実施についても「十分な説明をすれば、実施の必要はないととらえている。条例制定は議会が決めること」と話した。
(写図説明)条例制定の請求代表者証明書の交付に当たり、請求手続きの説明を受ける漆谷代表(左)ら=沖縄市役所
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