[熟れごろ話しごろ・編集局長インタビュー]/仲宗根正和沖縄市長(64)/東部海浜開発/若者の雇用創出が狙い/現在、埋め立て推進に逆風
泡瀬干潟の一部を埋め立てる沖縄市の東部海浜開発事業。公共事業の見直しが叫ばれる中、住民投票を求める動きが活発化するなど、埋め立てをめぐる論議は県内外で注目を集めている。地元沖縄市の仲宗根正和市長に街づくりの視点や事業の内容について聞いた。
岸本 沖縄市は文化的にもにぎやかで特色のある街です。こどもの国など個性的な施設はたくさんあるが、コリンザを含め、トータルで何か動きがないように思われる。まず市長の街づくりのスタンスを聞かせてください。
仲宗根 国際文化観光都市を宣言しており、それにふさわしい街づくりが究極の目的。しかし、これまでその方向性が明確ではなかった。コリンザは周辺の大型店舗には対抗できないので、今回、情報関連企業を誘致した。現在コリンザ前には二百台ほどの駐車スペースを確保しようと進めている。第二ゲート付近には、フレンドシッププラザという種をまいてある。黙認耕作地で、いずれは自由に利用できるようにしたい。若者が自由に音楽活動できるよう市内の公園を整備し、目に見える形で街づくりをしたい。
岸本 既存の街を活用、改造して盛り上げようということですね。新しい街づくりも念頭にあると思うが、泡瀬もそうなんですか。
仲宗根 そうです。泡瀬については歴史が長く、昭和四十九年の合併時からだ。海を有効に活用することで、港や観光リゾート地をつくる構想は当時からある。東部海浜開発は、桑江市長が政策として取り上げたが、地元から干潟を残してほしいという要望で、差し詰まった。だが前任者の新川市長が出島方式に変え、地元と合意し、私の時代には漁業組合との合意形成が整った。
保安水域については、米軍側が電波に障害が出るとして、やむを得ず共同使用という形で合意した。市内の多くが米軍嘉手納基地にとられ、西側には市がのびる余地はない。緊急課題は若者の雇用問題。開発で雇用を創出できる。行政が自由に使えるスペースは東部(埋め立て)しかない。
岸本 公共工事に対する住民の目は非常に厳しくなってきた。現在、泡瀬問題で世論は二分していると思いますか。この問題を行政は"逆風"と、とらえていますか。
仲宗根 平等に二分されているとは思わない。私は東部開発実現の公約を掲げて当選した。二分はされているが、七(推進)、三(反対)の割合だと思う。これまでは、順風満帆だったが、現在アゲンスト(反対)の風が吹いていることは間違いない。
岸本 沖縄の経済は末端まで公共事業依存型。これがなくなるとかなり影響が出ると思いますが。
仲宗根 沖縄市だけでも三千四百人が建設業に従事している。国が進めている公共工事の見直しを沖縄にも適応すると、新たな失業、経済問題が出てくると思う。東部開発は若者の雇用の場を確保するため。新しい企業が張り付けば、税収も入り、いろんな面でプラス効果が期待できる。
岸本 企業誘致は非常に難しい。うまくやっていけるか疑問です。
仲宗根 国内だけに目を向けていてはかなり厳しいと思う。沖縄の良さをPRしながら、国外への戦略を強化する。企業誘致は、県と一緒になって本腰を入れる。埋め立ては国、県が行い、実際に処分対象となるのは百二十七ヘクタールほどで、そのうち沖縄市は九十ヘクタール。企業側の需要を確認するのが重要な作業となる。企業が張り付くのは十年先の話。十年後の沖縄の状況は現在のままではないはずだ。
岸本 自然保護という壁があるが、どうクリアするのでしょう。
仲宗根 82%の干潟は残る。やむを得ず消える四十九ヘクタールについては新たな干潟をつくるので、問題ない。藻場については移植実験で成功している。クビレミドロの問題は、第二期工事の部分なので、あと四、五年先になり、それまでに移植実験の確立をしていく。環境監視検討委員会が絶えずフォローアップする。
岸本 市政は住民投票に後ろ向き、と思われている。長年行政が検討してきた事業だけに、見直し論議に「今なぜ」という気持ちはあると思うのですが。
仲宗根 正直言ってそういう気持ちはある。これまで議会でも全会一致で、賛成してきた。"逆風"を吹かすにしても、なんで許可が下りる前じゃなかったのか。だが、住民投票そのものを否定する立場ではない。これは議会制民主主義を補完するもの。議会の中で、与野党で(論議が)逼迫(ひっぱく)している状況があるときには、場合によっては市民の判断を仰ぐということも考えられるが、わが方では二八対七と賛成多数だ。
岸本 仮に住民投票をやったとしてノーと出た場合、どうしますか。
仲宗根 仮にそういう結果が出た場合は、首長に対する不信任案だと受け止めなければいけない。そういう覚悟も首長には必要だ。
岸本 かなり膨大な開発経費がかかるが、財政問題については。
仲宗根 埋め立ては国直轄。その分は市は借金せずに済む。これまでの投資分とインフラ整備の分も含めて、土地のコストに入れて処分する。それでも陸地を求めるよりはるかに安い。一般財源を使って買い上げるのではなく、土地開発公社が行う。
岸本 土地が売れない場合は、もろに負担をかぶることになりますが…。
仲宗根 そういう過程には絶対にしたくない。絶対に売ってみせます。
岸本 ホテル建設など土地利用計画にも問題があると指摘されています。
仲宗根 経済・社会情勢はたえず動いているので、(現在の計画)固守するのは問題だと思う。海洋リゾートという基本的な理念の範囲内で、ホテルの数など、その時の社会事情を見ながら対応していくのが筋だと思う。
なかそね まさかず 1936年生まれ。沖縄市胡屋出身。沖国大二部英文科卒。同市総務部長、企画部長などを経て97年定年退職。98年市長に初当選。
(写図説明)仲宗根正和沖縄市長
(写図説明)岸本正男編集局長 |