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  2001年10月15日 朝刊 1面
[私の紙面批評](9月後半)/山口洋子/テロの背景に視点を/観光直撃した基地の島

 九月十一日に起きた米中枢同時テロ事件は、ブッシュ大統領の「新しい戦争」という言葉と共に連日紙面を占拠していますが、アメリカに対するテロは今回が初めてのことではありません。
 アメリカという巨象は、長年にわたり中東のアリのような弱小国にミサイルをぶち込んだり、経済制裁やら封鎖を行ってきたことや、真に中東の望む形でない干渉を続けてきたことが反米感情を積もらせ、悲惨な自爆テロという方法でしか抗議出来ないアリを生ませて来たのではないでしょうか。
 エスカレートした結果の事件であり、もちろんテロは絶対許されない行為ですが、大国アメリカの怒りに任せた行動にも賛成できません。なぜ何
度もアメリカが標的にされるのか、アメリカ自身が気が付かなければならないと思います。
 アメリカのロサンゼルス・タイムス紙は歴代政権に対する指南役の歴史家アーサー・シュレンジャー氏が「ブッシュ大統領は自分が国民をどこに追い込もうとしているのか理解しているのか」と問い掛けたと報じています(27日付朝刊)。そしてその言葉は日本の小泉総理にも問い掛けたいと思います。
 カウボーイ外交とやゆされるブッシュ追従外交は将来に禍根を残すこと
にならないでしょうか。そして自爆テロを起こすところまで追い詰められた人々を傍観してきた私たちの罪も感じます。中東情勢について本当に無知だった反省がイスラム本が完売(25日付朝刊)という事に現れたのなら、知らせて来たとは言えないメディアも西側情報一辺倒の姿勢を見直さなければいけないのではないでしょうか。
 ワラビー紙面ニュースキッズで今回のテロを分
かりやすく解説(30日付朝刊)子供たちのテロに対する真剣な心配に大人はちゃんと答えなければいけないと思いました。
 テロ事件の余波は基地の島、沖縄の観光事業を直撃(19日付、28日付朝刊)、修学旅行や団体旅行のキャンセルが相次いでいます。県主要産業の観光事業の経営者たちがなぜ基地撤去を求める活動をしないのか、ずっと不思議に思ってきました。観光事業にとって平和は不可欠なこと。事態が起きないと理解できない経営感覚、起きてから抗議する姿勢に自立性は感じられません。
 きれいな海、空、豊かな自然、ゆっくり流れる時間、人情、よそには少なくなったこれらこそが
貴重な沖縄観光の基礎となるものではないですか。人工ビーチと高い堤防、真っ赤に汚れた海、その上基地がある危険な場所にいくら値段を下げても来たいとは思わないでしょう。
 しかし相変わらず目先の補助金に目がくらんだ埋め立て事業がめじろ押しです。佐敷干潟、大宜味村の塩屋湾(18日付朝刊)、泡瀬干潟(26日付朝刊)、海水を浄化し多様な生物のゆりかごと言われる貴重な干潟をなくして本当にいいのでしょうか。
 国頭村では区民がごみ処理場の工事差し止めを求め裁判を提訴中、村は結果も待たずに伐採を強硬、区民にけが人が出ました(20日付夕刊)。驚きました。(憲法を知ろう勉強会呼びかけ人)

(写図説明)山口洋子さん
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