泡瀬の干潟とは     
はじめに

 沖縄本島中部に位置する沖縄市泡瀬干潟には、数種の海草(うみくさ)からなる藻場があり、限られた大潮の日、大草原となって海から現れます。ここを歩くと、泡瀬干潟には海草藻場を中心に、多種多様な生き物たちがすんでいることがわかります。
 これまでに、沖縄本島の干潟は次々と埋め立てられきました。その結果、本島中南部では、この泡瀬干潟が最後の大規模な干潟となってしまったのです。
 しかし、この海にも埋立の計画があります。満足な環境影響評価も行われないまま埋められようとしている、この泡瀬干潟がどんなところなのか、ご紹介したいと思います。

1.複雑で繊細な自然環境

 この干潟には、海藻藻場のほか、泥・砂・サンゴ礁の干潟やサンゴ礁も広がっています。それぞれの環境はパッチワーク状に複雑に入り組み、微妙なバランスのうえに成り立っています。そして遙か昔からずっと安定的に存在してきました。沖縄市という大都会に、これほど繊細で変化に富んだ自然環境が残されていることは、奇跡的といえるでしょう。

2.多様な生物たち

 このような環境には、多様な生物がすんでいます(アセスの追加調査によると藻場の貝類を中心に210種以上が見つかっている)その中には絶滅が心配されている生物も数多く見られます。細かい砂地には、前に向かって進行し、驚くとクルクルと螺旋を描いて砂に潜るミナミコメツキガニがいます。海草藻場にはどっしりと大樹のように生えるハボウキガイ、その近くには黒くてつやつや光るムール貝のようなホソスジヒバリガイがたくさんいます。透明度の高い海にしかすめないハート形をしたリュウキュウアオイガイや、美しい赤瓦模様のカワラガイもいます。この干潟では、その他、クビレミドロやホソエガサといった珍しい藻場も見つかっています。しかし、これら珍しい生物だけが貴重なのではありません。彼らが生きることのできる多様性の高い環境全体が、貴重なのです。

3.海のゆりかご

 泡瀬干潟の海草藻場には、琉球列島の藻場としては他に例がないほど多くの種類の底生生物がすんでいます。また、満潮時には、海草に付着したり、隠れたりしているこうした生きものをねらって、多くの魚たちがこの藻場に入ってきます。ジュゴンやアオウミガメも海草を食べに来ることがあると考えられます。そして、藻場は魚介類の産卵・生育の場ともなっています。海草藻場は、豊かな海を支える重要な場所なのです。


4.鳥たちの楽園

 泡瀬干潟では、125種もの鳥類が確認されています(沖縄野鳥の会調査による)。とりわけ、シギ・チドリなどの渡り性水鳥の渡来数は沖縄本島最大で、チドリの仲間のムナグロにとっては日本最大規模の越冬地でもあります。冬に干潟を歩くと、彼らを間近に見ることができますが、その数と距離の近さには驚かされます。また、絶滅が心配されているコアジサシの繁殖も確認されています。豊かな干潟はこれらの鳥たちにとっても必要不可欠です。

5.人々との関わり

 この海は、地元の人々にも親しまれています。休日ともなると潮干狩りを楽しむ多くの市民で干潟はにぎわいます。また、生活の一部として、この海でずっと漁や貝とりをしている人たちもいます。それぞれが持つ海に対する自然観、関わり方の知恵、これらの文化は多様な自然育まれてきたものではなかったでしょうか。ここは人々にとっても大切な海だったはずです。


さいごに

 必要な開発はあるでしょう。しかし、この埋立はバブル期にたてられたリゾート施設中心の計画に沿ってすすめられており、本当に必要なのかと考えさせられます。この貴重な自然環境は、失ったら二度と取り戻すことはできません。埋立によって失うものは何なのか、それによって得られるものは何なのか。あらためて見直す必要があるでしょう。


                            泡瀬の干潟で遊ぶ会