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写真や絵のカード、具体物などを使って悠くんといろいろなやり取りが出来るようになりました。

このサイトを読まれた方は、写真や絵のカードを使って悠くんにいろいろな事を伝えていると
思われるだろうと思います。
それは、今何をするのかということが悠くんに解るように伝えているだけで、決してサリーが
こうしてほしいということを伝えているわけではありません。
悠くんを、サリーの都合で動かそうとしているわけではありません。

「サリーにとって必要」なのではなく、「悠くんにとって必要」な情報をやりとりしています。
悠くんにとって必要な情報をやり取りすることで、悠くん自身に、相手の伝えようとしていることを
何とかして理解しよう、何とかして伝えようという姿勢が出てきました。
伝わらなかったら、方法を変えて伝わるまで伝えようとしますし、相手のメッセージが解らなか
ったら聞き返してきます。

伝えるだけではなく、返答を要求してきます。
拒否を伝える時には、相手に「理解した」という返答を、要求を伝える時にも、相手に「理解した」
という返答を要求してきます。
また、相手からのメッセージが解らなかったら、「こうか?」と解るまで聞き返してきます。
「交渉する力」・・・この力が付いたことで、やり取りがずいぶんと楽になりました。


悠くんに何かをさせよう(やめさせよう)ではなく、悠くんが何を思い、何を考えているかということを、
サリーが理解するためにはじめた視覚的支援だったと思います。




なかなか上手くいかないという方は、もう一度考えてみてください。
それは今、誰にとって必要な情報なのかということを。


本人が必要だと思っていないことは、関心を向けてくれません。
たとえ、その場ではその視覚的なものが使えるようになったとしても、本人の「使いたいという気持
ち」がなければ、その場でやらされているだけになります。
本人にとって必要な情報をやり取りすることで、本人はその方法(手段)を一生懸命身につけようと
します。



本人がぴょんぴょん跳ねているから、「跳ねません」と視覚的に伝えたとします。
これは本人にとって必要なのではなく、跳ねてほしくないと思っている人にとって必要だけです。
トイレを伝えてほしいということも良く聞きますが、トイレを伝えてほしいと思っているのは、親です。
本人が伝えたいものの中に、果たして「トイレ」が入っているでしょうか・・・・
本人が伝えたいことを自由に伝えられて、その要求を十分に叶えてもらっていると思ってくれれば、
こちらからのお願いも少しくらいなら聞いてくれます(#^.^#)
子どもって、そんなものだと思いませんか?

まず、子どもの主張を尊重することからはじめないと、こちらのお願いなど聞いてくれませんよね。
まず、子どもを尊重することが必要です。
本人からの主張をちゃんと受け止めて、本人が納得できるように返してあげる。
本人に必要な情報を、本人に解るようにきちんと伝える。
伝えたつもり、理解したつもりでは役に立ちません。
本人が「理解した」「納得した」という返事を返してくれるということが大切です。

なんて簡単に書いていますが、言葉を使う健常児なら簡単かもしれませんが、言葉を理解しない
重度の知的障害を伴う子どもとそれをするのは大変なことですね。

サリーの樹は、そのために・・・悠くんとコミュニケーションを取るために、サリーが何をしてきたかと
いうことを書いています。

健常児なら、簡単に手に入れることが出来るコミュニケーションの力、
「ねえねえ、夕食は○○にしようか?」
「えーーっ、嫌。今日は△△がいい。」
「うーーーん、じゃあ明日は○○ね」
「解った。明日の夕食は○○でいいよ」

こんな程度の、何気ないやり取りをするために、膨大な時間がかかりました。
その「普段の何気ないやり取りをする能力」を悠くんが身につけるために積み上げてきた支援を
「サリーの樹」には書いてあります。



                                           2004.07.10(日)
                                            悠くん、中学1年生















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