〜蝶の夢・2〜
ハルディアはフェリシエラ をロリアンの森の最奥、フェロールの白い花が咲き乱れる泉の畔まで連れて来た。
ここはフェリシエラ のお気に入りの場所のひとつで、よくガラドリエルと共に散策に訪れているのを彼は知っていた。
「フェリシエラ 様、・・・フェリシエラ 」
傍にあった木の根元に腰を下ろしてフェリシエラ を膝の上に乗せると、彼はこの上なく優しく耳元で囁いた。
二人のときだけ敬称のない、「姫と騎士」ではなく「恋人」へ。
「ハルディアッ・・・ミスランディア、約束したもの・・・」
「どんな約束を?」
しゃくりあげながら話すフェリシエラ の背中を擦ってやりながら尋ねる。
「花火を、見せて、くれるって・・・私の次の誕生日には、今、まで。見たこともない、ような・・・綺麗なものをプレゼントしてくれるって、そう約束したわ」
最後は消え入ってしまいそうな声に、ハルディアはフェリシエラ を抱く腕に僅かに力を込める。
なまじ儚げな外見だけに、こういうときは本当に消えてしまうのでは、と不安になる。
「そうやって、みんな消えていくのかしら?指輪の力で少しずつ、・・・冥王は復活してしまうのかしら?」
ハルディアはいつもの彼女とは明らかに違う様子に気づいた。
いつもなら、その様な暗い言葉は口にしない。光だけを見つめている美しい人。
「フェリシエラ ?」
フェリシエラ を取り巻くのは、あの邪悪な指輪の、気配。
「そんな事はさせない。そのためにエルロンド卿より選ばれた「指輪の仲間」だ。
彼らが使命を果たすのだと私達が信じなければ。そして、私達エルフ騎士軍も最善をつくすから」
心を蝕んで行きそうになる不安に、フェリシエラ は酷く震えた。
「わからないわ!もし指輪が冥王の手に渡ったら?きっとお父様やお母様でも止められない!」
自分で言っているはずの言葉に眩暈を覚えて、ハルディアにしがみつく。
「フェリシエラ !!」
堪らなくなってハルディアはフェリシエラ に口付けた。
甘く、深く・・・。何度も角度を変えて。
彼女の不安や悲しみが少しでも癒されるように。
「フェリシエラ 、私はあなたの傍にいる。あなたが望む限り永遠に。
決して君を置いていったりはしないから、どうか悲しみに心を支配されないでくれ。」
唇が離れ、痛いくらい強く抱きしめられて、フェリシエラ はようやく安堵のため息をついた。
ハルディアの言葉で、心に影を落としていた黒いものが薄れていくのを感じた。
「愛するハルディア、私を離さないでね?」
目を閉じて問うと、ハルディアは彼女の髪を撫でながら微笑む。
「離さない、愛しい姫君。私はいつでもあなたのものだ」
「あなたが死んじゃったら、私生きていけないわ・・・」
小さく呟くと、フェリシエラ は泣き疲れたのかそのままハルディアの広い胸の中で眠ってしまった。
「やはり君は、ガラドリエル様と同じ孤独と一人で戦っているのか?」
それは、彼女が光の女王の正統な後継者である証であって。
多くのエルフの敬意を受ける一方で選ばれた者だけが背負う重責だけれど。
「それでも私は、あなたを支えたい・・・」
ハルディアはフェリシエラ を再び抱き上げると、彼女の額に口付けを落として宮殿へと歩き出した。
同じ頃、フロド達はケレボルンとガラドリエルに謁見し、ある者は恐れを、ある者は敬い、ある者はただ呆然と立ち尽くし、
またある者はあまりの美しさに心奪われた。
「しばしの間休息を。この地で旅の疲れと悲しみを癒すのです」
ガラドリエルはそう言うと背を向け玉座に戻ろうとしたが、
「あの・・・!」
思いがけないレゴラスの声が呼び止めた。
「どうかしましたか?緑葉の君」
振り返って見つめてくる青い瞳に吸い込まれそうになりながらも、レゴラスは気にかかっていたことを口にする。
「ここに案内される途中、ご息女のフェリシエラ 様にお会いしたのですがガンダルフのことを聞かれましたので
“闇に落ちた”と申し上げたらとても悲しんで泣いておりました」
それにガラドリエルは微笑みながら、天を仰いで答えた。
「心配はいりません。フェリシエラ は彼女に注がれる愛によって試練に打ち勝ちました。
次にあなた方に会うときは涙の影は見当たらぬほど気力を取り戻しているでしょう」
ガラドリエルの言葉を一行は理解することができなかったが、取り敢えずフェリシエラ が立ち直りつつあるということで安心した。
まだ出会って間もない人(エルフ)だったが、皆もう一度会って話したいと思っていたのだ。
レゴラスだけは、ガラドリエルの言いたい事が何なのか分かった。
そして、フェリシエラ に会ったとき感じた気持ちに戸惑っていた。
フェリシエラ が木から飛び降りたとき、ハルディアが受け止めるはずだった。
彼女もそれを当然のように受け入れようとして・・・それをワザと邪魔した自分。
そうした感情はどこから来る何なのか?
愛なのか?とも思ったが、レゴラスは「まさか」と首を振った。
ほんの数分出会って言葉も少ししか交わしたことのない相手にそんな感情はありえない。
ただ強烈な程に美しすぎる容姿を持つため、気になっているだけだろうと。
彼は自分に言い聞かせた。
二作目ですが、少しは進歩しましたでしょうか?
というより私なんかの作品を読んでくださる方はいるのか??
ハルディアさんに甘えるちょっと子供っぽいヒロインが書きたかったのですが・・・あえなく玉砕;
ヒロインを意識し始めて苦悩する王子が書きたかったのですが・・・これも玉砕;;
自分の文才の無さにちょっぴりブルー入りつつ、話はまだまだ続きますvv
読んでくださった方、この際苦情でも受け付けますのでメール下さると嬉しいです。