「ここがカラスガラゾン、私たちエルフの都だ・・・」
道案内をしてくれたハルディアの言葉に、旅の仲間一行はため息を漏らして目の前に広がる都に見惚れた。
美しい・・・その言葉以外の形容が思いつかないほど、そこは森に溶け込むように芸術的だった。
モルドールの闇の勢力復活に怯えて暮らす今の世にありながら、このエルフの都だけはそういうものとは無縁のように思えて。
指輪所持の重責から硬くなっていたフロドの肩からも力が抜けて、アラゴルンやレゴラス、ボロミアも安心したように緊張を解いていく。
「おら、こんな美しい都がこの世にあるなんて信じられねぇですだ・・・」
サムは目を潤ませながら感動していたし、メリーとピピンもすっかり感心したように大きく頷いた。
「わしは騙されんぞ!こんなの目の錯覚じゃ、恐ろしい妖術じゃ!!」
・・・ギムリだけは往生際が悪かったが。
と、その時。
どこからか、クスクスと笑い声とともに少女の涼やかな声が聞こえた。
「まぁ、ドワーフとホビットのお客様なんて珍しい。歓迎してよ?」
皆が驚いて辺りを見回すと、また楽しそうな笑い声。
「あッ!あそこ・・・」
メリーが指を指した先には。
大木の一枝に腰掛けて楽しそうにこちらを見ている一人のエルフ。
長く波打つ髪は陽の黄金、強い輝きを宿す瞳は森よりも鮮やかな緑色で、雪より白い肌の美しすぎるその容姿に、誰もが釘付けになった。
今度はギムリすらしゃべらない。
「フェリシエラ 様!!」
ただ一人、ハルディアだけが樹の上の麗人に怒鳴り声を上げた。
「そんな所で共の者も連れずに何をしているのですか?!」
「何って、木登り」
「いえ、そうではなくて・・・」
眉間に皺を寄せるハルディア。
「お客様の前でそのような振る舞いはお止め下さい」
「はいはい」
全く思っていない返事を返すと、フェリシエラ はその場から飛び降りた。
高さ5メートル、着地に失敗すれば大怪我。
指輪の旅一行は「アッ!」と声を上げて、メリーとピピンは思わず手で顔を覆うが、ハルディアは当然のようにフェリシエラ に手を差し伸べ受け止めようとした。
フェリシエラ も何の躊躇いもなく手を差し出すが・・・。
「・・・あら?!」
目の前に広がったのはいつもの陽に透ける銀色ではなくて、陽の光を受けて輝く金色の髪だった。
彼女を抱きとめたのは、レゴラス。
「お怪我はありませんか?フェリシエラ 王女」
アップで覗き込んでくるレゴラスに、フェリシエラ は頬をほんのり赤らめた。
「あッ、ええ・・・大丈夫です。ありがとう」
礼を言うと、レゴラスは彼女を下ろしてその手に口付ける。
「初めまして、闇の森の王スランドゥイルの息子レゴラスです」
「受け止めて下さってありがとう、レゴラス王子。・・・それに、ようこそロリアンへ。
危険な指輪の旅に集われた勇敢な方々。皆様を歓迎いたしますわ」
フェリシエラ が一行に向かってニッコリ微笑むと、ホビット達は真っ赤になって彼女にまた釘付け。
「こちらは、ロスロリアンの主ケレボルン卿と光の奥方ガラドリエル様の娘フェリシエラ様だ」
ハルディアの紹介に、フェリシエラ は優雅に一礼する。
「初めまして、美しい姫君。私はドゥネダインのアラゴルンです」
アラゴルンが挨拶すると、フェリシエラ は嬉しそうに瞳を輝かせて彼の手を握った。
「あなたがアラゴルンね!エルロンドのお義兄様から話は聞いているわ。ずっと会ってみたいと思っていたのよ」
儚げで繊細な容姿とは全然違うフェリシエラ の無邪気な様子にアラゴルンは苦笑しながら「光栄です」と答えた。
「あなたはゴンドールの執政殿の息子かしら?」
まさか自分に声をかけられるとは思っていなかったボロミアは動揺を隠せない。
「・・・ボロミアと申します。あの、父の事をご存知なのでしょうか?」
「いいえ、会ったことはないわ。お義兄様さまから旅の仲間の方達のことを聞いていたから。
人間は二人で、一人はストレンジャーのアラゴルン、もう一人はゴンドールのボロミアと・・・」
一瞬自分の心が読めるのではないかと警戒したが、その一言でボロミアはホッと胸を撫で下ろした。
(この心を占める欲望を知られるわけにはいかない・・・)
顔を強張らせたボロミアに、フェリシエラ は一瞬、悲しそうな微笑を浮かべると。
今度はホビットの方を興味深げな視線で見つめる。
「あなたは、フロド・バキンズね?」
僅かに邪悪な気配を感じて尋ねると、彼は礼儀正しくお辞儀した。
「あなたは?」
隣のサムに聞くと、熟れた林檎の実よりも真っ赤な顔でしどろもどろになりながらも自己紹介し、
メリーとピピンに至っては聞いてもいないのに誕生日や好きな食べ物まで答え、
ギムリは「フン」と鼻を鳴らして自分の名前以外話そうとはしなかった。
そして、レゴラスはただフェリシエラ を見つめて微笑んでいるだけだったが、フェリ シエラは先ほど自分を受け止めてくれたときの彼の端正な横顔を思い浮かべて
頬が少しだけ熱くなるのを感じた。
「フェリシエラ 様、自己紹介はその辺にしていただけますか?彼らをご両親のもとへ案内しなくてはなりませんので」
ハルディアは言うが、
「いや、もっと話したいわ」
頬を膨らませて駄々をこね出したフェリシエラ 。(あんたは子供か!)
その姫君らしからぬ様子に旅の仲間は親近感を覚えたが、ハルディアは眉間に手を当てた。
「彼らと話したいのでしたら謁見が終わった後にいくらでもどうぞ」
「あぁ、そういえばミスランディアがいないわ。確か旅の導き手をして加わったと聞いていたのだけど?彼、今どこかにお出かけ中?」
ハルディアを完全無視して尋ねると、皆は急に黙り込んで俯いてしまった。
不審そうに眉を潜めたフェリシエラ の耳にフロドの弱々しい声が響いた。
「ガンダルフは、・・・闇の中に落ちました」
「嘘でしょう?」
フェリシエラ の頬に、一筋の涙が零れた。
それから、彼女は旅の仲間の存在を忘れたように、ハルディアの胸にしがみついて泣きじゃくった。
一同が呆気に取られていると、ハルディアは仕方ないと言う様子で後ろに控えていた部下に視線を送る。
部下たちが頷くのを確認するとアラゴルン達に一礼して、ただただ泣き続けるフェリシエラを抱き上げてその場を後にした。
「申し訳ございませんが、ハルディア様は姫君に付き添って行かれましたのでこの先は私がご案内いたします」
エルフの声に、無言で二人を見つめていた一同は再び歩き出した。途中、気さくに話しかけて来たフェリシエラ に好感を持ったホビット達は、
「フェリシエラ 様は大丈夫でしょうか?」
と、案内役のエルフに聞いたが、
「ミスランディアの事を大変ご尊敬なさっておいででしたので、ショックだったのでしょう・・・」
それだけ言うとまた黙って歩き出した。
レゴラスだけは、ハルディアに抱えられて消えていくフェリシエラ の様子がひどく気になって仕方なかった。
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初めましての如月百合と申します。
この度はこんなヘボ小説読んでくださった方、ありがとうございます。
一応出会い編なのですが、主人公お相手はハルディアさんの予定です。
王子には片思い役で頑張ってもらおうと思ってるのですが、もしかしたら・・・まだはっきりどうなるか決まっていない作者;
続きでは頑張ってもう少しマシなもの書けるようにするので、お付き合いくださると嬉しいです。次は主人公とハルディアさん絡ませたい!
ていうか、私の主人公ってちょっと変わった設定なのですが;暖かい目で見てやってくださいね?一応ロスロリアンのお姫様vv
クレームとかは勘弁して下さい;;
感想とかもらえると嬉しいですvv