〜人魚姫〜

「・・・そうして人魚姫は父である海王の力で魔女の呪いを解いてもらい、王子様の心を取り戻して、二人は幸せに暮らしました。めでたし、めでたし・・・」

ロリアンの森を見渡せる広い丘の上、高く聳えるマルローン樹の根元に腰を下ろして、 フェリシエラ は
「人魚姫」を読んでいた。

「姫、それは最後の所が間違っているのでは・・・?」

隣に寝転んで聞いていたハルディアは、ふと目を開けて問いかける。

「あら、これでいいのよ。だって悲しいじゃない、一途に思い続けても報われずに消えていくなん
て。
だから私がハッピーエンドにしてあげたのよ」
ニッコリ微笑んで答えると、 フェリシエラ は無造作に散らばるハルディアの長い髪を手にとって弄ぶ。
「しかし、これはもともと“人間とは移ろい易く気紛れなものだから異種続間での恋愛は難しい”という教訓の物語ではないのですか?」
「ハルディア頭かッたーい!」
少しムッとして眉を寄せる彼の姿を面白そうに見つめる。
「これは厭くまで童話なんだから、読む人がそれでいいと思えば何でもありなの」
「作者の伝えたい事も無視して?」
もちろんよ、と フェリシエラ は頷く。
「だいたい、この話って恋する女の子をちょっと馬鹿にしてるんじゃない?
こんな儚く脆い物じゃないのよ、想いの強さって!呪いが何なの?喋れなきゃ筆談しろ!足痛いなら車椅子でも乗っとけ!
好きならどんな手を使ってでも王子振り向かせようとか思うわよ、私なら・・・」
力説し出した フェリシエラ の姫君らしからぬ言葉遣いに苦笑して。
ハルディアは起き上がり、そっと彼女の頬を両手で包み込む。

「それが、人魚姫の愛だったのかもしれません」

「・・・エッ?・・・」

「彼女は王子の移ろいやすい心を知っていても、傍にいることを望んだ。
愛されなくても最後まで彼を見守りたいと考えたのでないですか?」
優しい瞳に見つめられ、 フェリシエラ は胸の高鳴りを抑えられずに視線を逸らす
「辛くはなかったのかしら?愛する人が、他の人を選ぶのを見届けるコト・・・」

「愛の形は、人それぞれですから」

彼らしくない言葉に、 フェリシエラ は頬に当てられた手に自分の手を重ねて小さく問う。

「ハルディアは、そういう人いるの?
例え振り向いて貰えなくても愛し続けられる相手が、いる?」

沈黙が流れる。
何かを言いかけて、ハルディアはその思いを飲み込んだ。

「姫こそいらっしゃるのですか? “どんな手を使ってでも振り向かせたい”相手が」

問い返したハルディアに フェリシエラ は耳まで赤くなる。

「・・・秘密よ・・・」

本当はすぐ目の前に、いるのだけれど。

その様子にハルディアは声を出して笑い、それに フェリシエラ の怒鳴り声が重なる。
「何よ、ハルディアこそ白状しなさいよ!私に隠し事なんて百億光年早いわ!!」

「私も秘密ですよ」

今はまだ、この心に閉まって大事に取っておく。

でもいつかこのロスロリアンを離れ、安息の地へと旅立つ日が来たら・・・。
そのときはあなたに想いを告げて、共に永遠を歩んでいきたい。


「ハルディア言いなさい!姫の命令よ〜!!」

優しく微笑む金色のエルフと、彼の髪を引っ張って問い出そうとする緑の瞳のエルフを、風に揺れるマルローン樹だけが見守っていた。


それから時は冥王復活の恐怖の時代を越え、中つ国には再び平和が訪れたが・・・。

「ハルディア、あなたったらまるで人魚姫よ!
私はまだ、あなたに伝えたい事があったのに・・・帰って来たら聞いてくれるって約束したのに!!
もう、あなたの声が、聞こえない・・・!」

幾度となく、二人寄り添って言葉を交わしたマルローン樹の根元には、今は フェリシエラ の悲痛な泣き声しか聞こえない。

この土地を愛し、美しいエルフの姫を愛した騎士は、永遠に旅立ってしまった・・・。

ハルディアの絹糸のような遺髪を胸に抱いて泣き続ける フェリシエラ の肩に、マルローンの若々しい青葉が一片落ちてきた。

それはまるで、彼の澄んだ瞳のように美しく輝いていた。


『あなたをいつまでも見守っている・・・たとえ、この体が朽ちてしまっても。
心に残る想いは終わることなく永遠に、あなただけを・・・愛しい フェリシエラ 、どうか幸せに・・・』

〈あとがき〉
・・・ってどこら辺が人魚姫??
しかも文章がショボくて分かりずら!!
先日人魚姫の映画(ビデオ)を見ていてすっかり影響されて書いたのですが、ただ二人の話題
が人魚姫だっただけ;
つ、次は「眠り姫」でも(まだやるのか?!)