〜願いと祈りと想い〜
ロスロリアンはいつもと変わらぬ平和な日々。
美しい森は色褪せることなく輝き、水はいつも清涼な流れを運ぶのに。
この胸騒ぎは何だろう・…・。
「……フェリシエラ ……」
耳に心地よい低い声が呼ぶ。
静かな音を立てて開かれた扉から長身のエルフが現れ、振り向いた少女は悲しげに微笑んだ。
「行って来るよ」
止めても無駄なのだと知っているから。
「…えぇ…」
燃え立つ夕闇のような深紅のマント、美しい銀色の鎧。
もう、涙さえ出てこなくて、曖昧に囁くけれど。
フェリシエラ は彼の姿を直視したくなかった。
「…行ってらっしゃい。帰りはいつになるかしら?アラゴルン達に会ったらよろしく伝えてね」
「フェリシエラ 」
無理に明るい声を出そうとする少女が痛々しく思える一方で、そうさせているのが自分であるという事だけに。
愛しさが込み上げてくる。
「…今度はいつ、貴方に名前を呼んでもらえるのかしらね?」
どうして私を置いて行ってしまうの?
帰ってこれる保証など何もない残酷な戦場へ……。
そうやって泣きじゃくって、引き止められるなら、声が枯れてなくなっても、貴方に縋りつくのに。
そうしないのは彼女が一番彼の性格を知っているから。
厳しく冷ややかな口調とは裏腹に、誰よりも優しくて、真面目で、繊細で……。
部下の警備兵や忠誠を誓う父と母のために、この大切な故郷を守るために。
戦いに赴かないわけにはいかない。
ふいっと横を向いて距離を置こうとするフェリシエラ の細い腕が大きな手に掴まれる。
「…ハルディア?……」
不思議そうに問い掛けると、そのまま身体を引き寄せられて。
彼の腕の中に収まった。
「怒っているのだろうな…」
「当たり前でしょう?」
「すまない」
「謝っても許してあげない」
伝わってくるその温もりすら、今はただ切ない。
「どうして貴方が行くの?」
冷たい鎧を纏う胸に頬を摺り寄せても、いつも聞こえる心音が聞こえない。
「大事な戦いだから」
それが何故か酷く不安を掻き立てる。
「狙われているのは人間でしょう?」
「人間が滅びれば、じきにエルフも同じように狙われる」
「その前に、ヴァリノール行きの船に乗ればいいわ」
「…フェリシエラ ……」
「…嘘よ……」
彼が困ったように見下ろすから、本当は本心から言っているのだけれど。
「名前を呼んで?」
ハルディアは、少女の耳元で優しく、低く、甘く囁いた。
「愛している、フェリシエラ 」
「もっと、沢山」
「フェリシエラ 。フェリシエラ …私には貴方だけだ」
知らず流れる涙の伝う頬に、彼はそっと口付けて。
「貴方の幸せだけ願ってる…フェリシエラ 」
「私も、貴方の事をとても愛してる」
涙が枯れるなんて有得ないのだと。
顔中に優しい雨の様に降ってくる口付けを受けながら、フェリシエラ は思った。
昨日の夜あれほど泣いて枕を濡らしても、その想いのままに絶えず溢れる。
「本当は離れたくないのよ?」
「あぁ、私もだ」
この、吐息の微風さえ感じる距離のまま、時が止まってくれればいいのに…。
「必ず、帰ってきてね?」
「約束する。そうしたら貴方と共に、ヴァリノール行きの船に乗ろう」
フェリシエラ は彼の手に、自分の指を絡ませる。
「向こうへ着いたら、もうずっと離れないのね?」
「永遠に。二人寄り添って生きていこう」
堅く誓う愛の言葉は、強い、儚い、二人の祈り。
「お父様とお母様のように…永遠に仲睦まじく…」
「そして貴方は、愛らしい二人の子供を産んで…」
二人は見つめ合い、クスクスと笑い合う。
幸せな未来。
それがやがて訪れるのだと信じているから。
「貴方を信じて待っているわ」
「すぐに帰ってくるよ。他の誰でもない貴方のもとへ」
フェリシエラ は柔らかく笑い返すハルディアの顔を、心に焼き付けるように見つめた。
いつでも思い出せるように。
傍に存在を感じていられるように。
どうか彼に加護を。
遠い地で見守る偉大なる父イルヴァタールに。
届きますように。
この想いと、願いと、祈りが。
誓いの言葉が空を翔け、風に攫われることのないように。
彼を無事に、私の元に還してください……。
…それでも感じる、言いようのない不安が何なのか、フェリシエラ には分からない……。
End>>>
〈あとがき〉
TTTを見て、突発的に書いてしまった代物ですUu
きっとハルディアとの別れ際ってこんな…?
と妄想に浸りながら。。
彼への切なさが、哀しいけれど私はとても好きです〜v
悲恋っていいなぁ。。
私って文章力無いなぁ。。
それは致し方のないこと…><
ハルさんファン同士求むvv