「蝶の夢」「胡蝶の乱」

 

 

Last Episode

 

 

ー My Dear ー

 

幾度、季節は廻っただろう。


美しいロスロリアンの森の光は消え去り。


治めていた王と王妃は娘の死を悼みながらこの地を後にした。


美しい姫の亡骸は彼女が愛した思い出と共に『リフェリシエアの丘』へ。


薫り高きリススインと見目麗しきエラノール、遥か昔エルフから中つ国へ贈られた二つの花が見守る中。


安らかな眠りが永遠に訪れるようにとの、彼女の母の願いだった。


「フェリシエラ 、私は貴方の願いどおり生きよう。ずっと、傍で」


墓標の立たない、一面の花畑に向かって彼はそっと囁いた。

風が優しく吹き渡り、甘い花の香りが辺りを包む。


「愛しているよ、姿なくとも想いは永遠に」


平和に満ちた世界はどこまでも静かで。

切ない想いの秘められた誓いは、柔らかい日差しの中に溶け込んだ。


ハルディアの銀星髪が透けながらふわりと揺れる。

一陣の風に、揺れる花弁が儚く散った。

前にかかった髪を指先でそっと押さえて目を細めると。

涼やかな笑い。


「相変わらず、綺麗な銀髪ね」


心を揺さぶり振ってくる声。


花の野に、光を纏うように立っている金髪の少女。

「・・・・・・フェリシエラ ・・・・・・?」


そんな、まさか。


信じられない、と目を瞠るハルディアに、何度向けたか分らない微笑で答える。


その美しさも色褪せず、変わらない。


「そう、私以外いないでしょう?それとも貴方は恋人の顔忘れたのかしら?」


幻にしては、その口調も、表情も、受ける印象も、似過ぎている。


僅かに彼が眉を潜めたを見て、フェリシエラ は笑みを崩さず彼の傍に歩み寄った。


その頬に白い手を添える。


触れ合う温かなぬくもり。


「私は幻でも、魔法でも、ましてや偽者でもないわ。貴方が愛してくれた、一人のエルフの娘」


「何故?・・・・・・貴方の亡骸はこの地に眠っているはずだ。最後を看取ったのも私だ・・・・・・まさか、生き返って・・・?」


その問いにフェリシエラ はゆっくり頷いた。


確かめるように、ハルディアは彼女の身体をそっと抱きしめる。


「死の宣告者マンドスが私の運命を哀れんで下さったの。ルシアンのように、もう一度だけという約束でこの中つ国に還して頂いた」


彼女は華奢な身体を彼に預けた。


「その代わり、私の命は今度は有限の物なのだけど」


吐息のように静かな声と共にそっと耳に手を添えると。


丸みを帯びた小さな形をしたそれ。


「人間として、生まれ変わったということか?」


「そうよ。だからまた、私には死別という別れが来るわ。それでも・・・・・・」


もう一度愛してくれる?


真っ直ぐな視線で尋ねると。


彼は柔らかな微笑で返した。


「答えるまでもない。フェリシエラ 、私が愛しているのは貴方だけだ」


ハルディアは抱きしめる腕に力を込める。


もう二度と離すまいと誓いながら。


彼女からの微かな花の香りに安堵した。


願ってやまなかった。


この時を。


「ハルディア、もう何があっても離れないわ。私が続ける限り、いいえ、この身は朽ちても永遠に。貴方だけ大好きよ」


彼の背に腕を回しながら、フェリシエラ の歌うような声が風に流れる。


「頼まれたとしても、もう離したくない。フェリシエラ 、私だけの愛しい人」


二人は微笑み合って。


心に満ちる幸せを感じながら。


どちらからともなく自然と口づけた。

美しいエルフの愛花、リススインとエラノールだけが見守るように揺れていた。


世界を駆け渡り、二人を包む風は消えることなく永遠に。


やっと訪れた平穏な彼らの幸せも、終わることなく永遠に。


どうか続きますように。

>>>Fin


<あとがき>

これで全て終了です。
なんかとても寂しいです。。
二人には本当に幸せになって欲しいですね。。
これは作者としての切実な願いです〜。

こんな駄文を読んで下さって、ありがとうございました。。
皆様に感謝ですv