04:How Can You Say Such Things ?

 

 


褒め言葉は

ウンザリするほど

沢山貰うけれど

本当に欲しい言葉は

君以外言ってくれないから


「レゴラス様?……どちらに出掛けられるのですか?」


心の中でレゴラスは舌打ちした。

出歩くエルフ達の気配を伺って部屋から出てきたというのに。

彼は薄手のマントを肩から羽織ったまま振り返った。


「眠れなくてね。ちょっと散歩に行って来るよ」


「このような時間にですか?夜は国境近くでも時折オークがうろついている事がありますのでお気をつけ下さい…とは、貴方へ向ける言葉ではありませんね」


「ああ、そうだよ。君の弟達に勝った所をこの前見ただろう?腕には多少なりの自信があるのだから」


やんわりと、だが何処か棘を感じて、ハルディアは心の内でだけ妙な違和感を感じた。

自分に向けられる必要以上の気構えた視線。


「君は?これから国境に戻るところ?」


「はい。少し、宮の方へ呼ばれていたものですから」


「可愛らしいお姫様から?」


「ええ、そうですね」


会話が流れていく間、ハルディアはその理由を推し量ろうとしたが、諦めた。

暗がりの中、彼の瞳すら深く、いつのも若々しさも快活さもない。


「それでは急ぎますので、私はこれで」


居心地の悪さを感じて、軽く頭を下げてその場を後にする。


「ああ、気をつけて」


レゴラスは穏やかに微笑みながらも、僅かに刺さる胸の痛みを感じた。


通り過ぎる際ハルディアから僅かに零れた甘い花の香り。


冷たくも美しい、想い人の顔を思い浮かべて、そっと吐息が漏れた。


「レゴラス、私は暇じゃないのよ」


少し強い風に羽織ったシルクのショールをなびかせてフェリシエラ は言った。


「来てくれてありがとう」


レゴラスは嬉しそうに笑った。


「私、寒いのは嫌い」


「今夜は少し冷えるからね。何なら暖めてあげるけど?」


二人は相変わらず宮の屋根の上にいた。

常春と呼ばれるロスロリアンだが、それなりに気温は下がったりする。

レゴラスは腕を広げて彼女を誘った。


「用件は?眠れないとか暇だったとかいう理由だったらすぐ帰るから」


迷いもなく滑り込んだ胸の中で、彼女が囁くのは甘いモノでは勿論なく。

いつも通りの素っ気ない言葉。


「ただ何となく」


「はぁ?」


不機嫌そうに眉を潜める彼女にレゴラスは苦笑する。

抱き締めて回された腕を、とても嫌そうにフェリシエラ は見た。


「寝ていても起きていても、浮かんでくるのは君の事だけで」


「病気ね。危ないわ」


「さっきハルディアと会ったとき、彼から君の移り香がしてね。会いたくなった」


レゴラスは笑っていたけれど、その瞳は少しも笑っていなかった。


「別に私に執着しなくても、貴方の相手をしたがる美女なら沢山いるじゃない」


伝わる温かいぬくもりに、彼女はため息を吐く。


二人の間を風が冷たく擦り抜ける。


「君でなければ駄目なんだ」


「何故?」


下手に燈っている明かりから目を離して、フェリシエラ は顔を上げた。


「私の欲しい言葉をくれるのは、君だけだから」


その言葉に目を瞠り、唇の端を吊り上げる。


「あの人と、同じ事を言うのね」


「フェリシエラ ?」


ハルディアの事を言っているのだろうか。


眉を潜める彼に、フェリシエラ は掠めるだけの口づけを贈る。


「ねぇ、私の部屋に来る?」


穏やかな声音の奥に、微妙な甘さ。


驚くほど繊細な瞳が返って扇情的で。


レゴラスはそのまま彼女を抱き上げた。


>>>to be continued