〔劣化ウランとは〕
     (英語:Depleted Uranium=DU)

 天然ウラン中に僅か0.7%しか含まれていない核分裂反応するウラン235の濃度を高めた濃縮ウランを作る際に生じる、言わば絞り滓(残りの99.3%は、通常では核分裂反応を起さないウラン238が殆どを占める)のウランが劣化ウランと言われるもので、成分的には事実上ウラン238である。(「劣化ウラン研究会」・寄稿:山崎八九生より)


         〔劣化ウラン弾とは〕

 劣化ウランに少量のモリブデンとチタニウムを混ぜて、高温を発するマグネシウムで焼き固めると金属状に変化する。これを主に戦車の装甲を貫通させる徹甲弾の弾芯に用いたものが劣化ウラン弾である。
 劣化ウランを用いた砲弾は、それまでのタングステンを素材にしたものと比べ、比重が大きい(=密度が高い)ため、貫通効果が向上する。しかも、命中時の摩擦熱により、1100度以上になると発火するため、しょうい焼夷効果による乗員の殺傷や砲塔内の砲弾の誘爆が期待できる。その上、タングステン製よりも遥かに安い。
 そのため、米陸軍、海兵隊のM1A1戦車の120ミリ砲を始め、海兵隊のAV8Bハリアー攻撃機の25ミリ機関砲、湾岸戦争でイラク軍戦車に対して「活躍」した米空軍のA10対地攻撃機の30ミリ機関砲、米海軍の対艦ミサイル迎撃用の「ファランクス」20ミリ機関砲など多くの兵器に劣化ウラン弾が用いられている。
 また、劣化ウラン弾が配備され始めた頃から危険性が指摘されていた。使用に際しては、「ヨーロッパでの使用は許可しない」「実戦以外では使用しない」旨の注意書きがあるという。



劣化ウラン弾の攻撃で穴が開いた戦車
写真提供:森住 卓(もりずみ たかし)氏
http://www.morizumi-pj.com/index.html


        〔劣化ウラン弾の毒性〕

 先天性異常児の生まれる確率が非常に高いと言われる湾岸戦争症候群の原因として、劣化ウラン弾微粉塵吸引による体内被曝が考えられている。
 劣化ウランは燃えると70%が極めて細かい「エアロゾル」というミクロン以下の微粒子状の八酸化三ウラン(U308)になる。このエアロゾルは体内に入ると肺や肝臓にとどまりやすく、特にエアロゾル中の60%は5ミクロン以下の微粒子となり、半永久的に体外へ出ない。このエアロゾルからは微弱な放射能が出続け、その量は年間1360レムと言われているが、これは許容量の8000倍の数値である。しかもエアロゾルは大気中のチリなどに付着して、簡単に戦場から数十km離れているところへも広範囲に飛散して広く汚染してしまう。 この特性ゆえに、背が低く外で遊ぶ子供に被害が出る傾向がある。
 劣化ウランの半減期は地球や太陽系の歴史にも匹敵する45億年である。その汚染は半永久的にそこに止まり続ける。


友軍の劣化ウラン弾で破壊された戦車を本国へ運ぶ ため、作業に従事する米軍兵士。放射能汚染防護措置を全く取って おらず、全員が劣化ウラン微粒子を体内に取り込んでしまった(1991年5月、サウジアラビア)。一方、「戦利品」として米国へ持ち帰ったイラク軍戦車で、 劣化ウラン弾を発車し、放射能汚染状況と防護対策について調査する米軍兵士。汚染防止のための防護服や防護マスクを着けている。
(1995年6月、米ネバダ州のネバダ核実験場)=ダグラス・ロッキ ーさん提供
写真:中国新聞Web  http://www.chugoku-np.co.jp/abom/uran/


       〔劣化ウラン弾の犯罪性〕

 これら劣化ウラン兵器は、通常兵器と称してアメリカが世界世論の隙をぬって使い始めた。しかし放射能で被害が起きることは始めから解っていたと思われる。これはまぎれもなく核兵器による核戦争の日常化と言っていいだろう。アメリカはケンタッキー州パデューカにあるウラン濃縮用核施設など3カ所で、50万トンの劣化ウランを抱えている。これらが兵器に使用されれば、まだまだ被害は拡大するだろう。
 悲惨な戦争が報道される一方で、武器マーケットでアメリカは、イギリス、フランス、カナダ、サウジアラビア、クウェートに劣化ウランそのものや兵器を売却した。またアメリカの使用の刺激で多くの国で劣化ウラン兵器が開発中である。ウランは公開市場で買えるのだ。新たな兵器開発競争が始まろうとしている。
 敵味方で劣化ウラン弾を撃ち合うという状況で被害が半永久的に続くことを想像すれば、これは人類生存への脅威であり、大量破壊兵器(核兵器)として、直ちに認識されなければならない。
 劣化ウラン兵器は、現在及び将来の一般民間人に深刻な被害を与え、未来の子孫に無差別に被害が及ぶ、人道主義に反しジュネーブ条約や国際法に違反する兵器だ。