名刺1枚で(55 x 91
mm)作る紙飛行機のページ( ウキウキ名刺ヒコーキ横丁
)に刺激されて、私も作ってみました。これだけ小さいとレイノルズ数も違い、普通サイズの紙飛行
機をただ縮小しただけでは安定
性や、揚抗比が悪くなり必ずしも良く飛びません。反面、工学的には強度に余裕が出るので、より自由な形が作れます。大きさが1/2になると、紙の厚さが同じ場合、翼の付け根の強度は1/2になりますが、同じ速度で飛ぶ場合ここにかかる曲げモーメントは約1/8になります。そのため、細長い翼など、より自由な形の飛行機が作れます。しかし、小さい
のであまり複雑な構造は難しくなります。
海鳥は海上を長距離飛ぶ必要があるため、空力的にはアスペクト比が大きい揚抗比の良い翼を持っていま す。逆3字形の翼は、無尾翼機としての働きもあり、安定して飛びます。
カモメ1号の設計図 8機 セット(pdf ファイル)
Drawing of
Seagull1 set of 8 (pdf file)
設計図をダウンロードして、ケント紙に印刷します。pdfファ
イルは、横に2枚ならべて、A4の
幅に合わせまし た。
太い線に沿って切り抜きます。胴体はあらかじめそれぞれの折り目(点線が山折り、一点鎖線が谷折り)を正確に定規でつけておき
ます。胴体の前部のみ貼りあわせ、翼より後はV字型にしておきます。尾部は45度ぐらいになるようにひろげ、垂直尾翼と水平尾翼の働きを兼ねさせます。主翼は10度ぐらいの上反角を付け、翼の外側の後を少し上にねじります。紙の重さだけで重心は合うよ
うに設計しています。
トンボは約3億年も前から現在とあまり変わらない姿で飛んでいたそうです。飛ぶために適した究極の形 は これ以上あまり進化する必要がないのかもしれません。空力的にも効率の良い形で、紙飛行機になっても良く飛びます。重心を合わせるため、細く伸びた方(画 像の右上)が前で、幅の広い方が後ろです。
トンボの設計図 8機 セット(pdf ファイル)
Drawing of Dragonfly
set of 8 (pdf file)
設計図をダウンロードして、ケント紙に
印刷します。pdfファ イルのは、横に2枚
ならべて、A4の 幅に合わせました。
太い線に沿って切り抜きます。胴体はあらかじめそれぞれの折り目(点線が山折り、一点鎖線が谷折り)を正確に定規でつけておき
ます。胴体の前部は内側に折り込み、長方形の部品(バランスウェイトと機首カバー兼用)を機首をおおうように貼る。前翼は15度ぐらいの上反角を付け、後翼(ロゴが印刷してあるのが後翼です)は、前翼と前後の向きを
変えて、上から見るとX字型にします。後翼は上反角を付けず、水平のままとします。紙
の重さだけで重心は合うように設計しています。
鳥と昆虫と続いたらやはりほ乳類で空を 飛ぶ代表コウモリが参加しないわけにはいきません。コウモリは現在地球に生存するほ乳類4000種 のうち1000種を数え種数ではとても繁栄しているグループで、日本でも陸上のほ乳類 約100種のうち33種がコウ モリ類とのことです。翼の外側に5つのかどがありますが、それぞれ5本の指に相当します。紙飛行機としては、前進翼で無尾翼(無水平尾翼)と野心作?ですが安定 して良く飛びます。
コウモリの設 計図 8枚 セット (pdf ファイル)
Drawing of Bat set of
8 (pdf file)
設計図をダウンロードして、ケント紙に印刷します。横に2枚
ならべて、A4の幅に合わせました。
太い線に沿って切り抜きます。胴体はあらかじめそれぞれの折り目(点線が山折り、一点鎖線が谷折り)を正確に定規でつけておき
ます。胴体の前部は内側に折り込み、長方形の部品(バランスウェイトと機首カバー兼用)を機首をおおうように貼ります。翼は15度ぐらいの上反角を付け、翼の外側の後縁をわずかに下にねじります(外側の迎え角をわずか
に大きくします)。紙の重さだけで重心は合うように設計しています。
鳥、昆虫、哺乳類に並んで魚も飛びます。トビウオは捕食者から逃げるために、水中で加速したあと空中 に飛び出し発達した胸びれを広げ、下半分が長い尾びれを水中に残してさらに加速して数100mも 空中を滑空します。腹びれを水平尾翼のように使う種類もあります。この名刺飛行機も高速で良く飛びます。
トビウオの設計図 8機
セット(pdf file)
Drawing of Flying Fish Set of 8 (pdf file)
設計図をダウンロードして、A4Y目のケント
紙に印刷します。pdfファイルは、横に2枚
ならべて、A4の幅に合わせました。A4に
は最大10枚印刷できますが、余白に余裕を持たせるのと、海外でレターサイズに印刷す
る場合を考え、8枚にしています。
太い線に沿って切り抜きます。胴体はあらかじめそれぞれの折り目(点線が山折り、一点鎖線が谷折り)を正確に定規でつけておき
ます。胴体の前部は内側に折り込み、長方形の部品(バランスウェイトと機首カバー兼用)を機首をおおうように貼ります。翼は左右別々になって
います。一枚を裏返しにして細い矢印(翼の中心線)が背中合わせに一致するように貼り合わせます。上反角は付けなくても結構です。翼の両端の
後縁を少し上にねじり上げます。紙の重さだけで重心が合うように設計しています。
空飛ぶ爬虫類の代表として、ついに古代生物も登場しました。プテラノドンはおよそ8000万年前の大空を支配していた翼竜の一種です。翼竜は、恐竜とは異なる爬虫類の一種で中 生代の空を支配していました。現在の鳥類とは異なり、皮膚の膜でできた薄い翼(コウモリに似ています)を腕と薬指に相当する骨で広げ、空を飛 んでいたと考えられます。多くの種類の化石が発見されていますが、翼竜の中でも、最も有名な種の一つがプテラノドンで大きな尖ったトサカが特 徴です。翼を広げると7〜9mに も達する大きな生き物ですが、体重は15〜20kgぐ らいだったと考えられています。海の上を100kmも滑空し、歯の無いくちばしで魚を 捕っていたといわれています。*Wikipedia ほぼ真横に広がる無尾翼構造ですが、安定して名刺サイズの紙飛行機とはと思えない程とても良く飛びます。実際の翼竜も現代の競技用グライダー に匹敵する性能(揚抗比)を持っていた種もあると言われています。なお本物のプテラノドンにはこの機体のような尾(垂直尾翼)はありません が、紙飛行機では、これが無いと安定して飛びません。
プ テラノドンの設計図 10機セット(pdf file)
Drawing of
Pteranodon set of 10 (pdf file)
設計図をダウンロードして、A4Y目のケント
紙に印刷します。pdfファイルは、横に2枚
ならべて、A4の幅に合わせました。
太い線に沿って切り抜きます。胴体はあらかじめそれぞれの折り目(点線が山折り、一点鎖線が谷折り)
を正確に定規でつけておきます。胴体の前部は内側に折り込み、目、くちばしの描かれた部品(バランスウェイトと機首カバー兼用)を機首をおお
うように貼ります。翼は左右別々になっています。細い線(翼の中心線)が一致するように貼り合わせます。上反角をわず
かに付けても良いかもしれません。翼の中央に近いところの後ろの2つの三角形の部分
(プテラノドンの足に相当します)の後縁をわずかに上にねじり上げます。なんと、これだけで無尾翼構造のピッチ安定が保たれます。紙の重さだ
けで重心が合うように設計しています。 左右に曲がって飛ぶ場合は、胴体、翼の左右のねじれを正確に補正してください。
名刺サイズの紙飛行機のプテラノドンがとても良く飛ぶので、その飛行から8000万
年前のプテラノドンの飛行速度を想像してみることにしました。
鳥や飛行機が直線飛行をするためには、その重さと揚力が釣り合っている必要があります。揚力と飛行速度の関係を式に表すと L=CLρV2S / 2 となり、(L:揚力、 CL:
揚力係数、 ρ:空気密度、V:飛行速度、S:
翼面積)揚力は飛行速度の2乗に比例します。式を変
形するとV=√2L/SCLρ となり、揚力係数や空気密度が同じならば、飛
行速度は翼面積あたりの揚力 L/S、
水平飛行では機体重量と釣り合っているので、翼面積あたりの機体重量すなわち翼面荷重、の√(平方根)に比例することが
分かります。(滑空の場合は正確には揚力は重力のうち飛行方向に垂直の成分ですが、揚抗比が良い場合はほぼ重力と同じです。(ピタゴ
ラスの定理より揚抗比6:1でも重力の98.6%))180kgの用紙で作った名刺プテラノドンの飛行速度を測定
すると、6.0mを1.6秒で飛んだので飛行速度は3.75m/sでした。また重量は0.76g、翼面積は14.0cm2で
すので翼面荷重は0.054g/cm2 、
飛行機などで使われる単位にすると0.54kg/m2になります。この飛行速度と翼面荷重の関係が実際の鳥でも同様なのか、比較してみることにしました。数多くの
鳥の重量、翼面積、翼面荷重、飛行速度を集めた 鳥へぇというサイト
http://akaitori.tobiiro.jp/yokumen.htmlの
データによると、カモメの翼面荷重は0.328 g/cm2 つ
まり3.28kg/m2 飛
行速度は9.2m/s 、
またワタリアホウドリでは 1.40g/cm2 (14.0kg/m2) 飛
行速度は19.2m/sとのことです。名刺プテラノド
ンの飛行速度と翼面荷重から計算すると、カモメは3.75m/s * √3.28/0.54 =9.24m/s 、
ワタリアホウドリは 3.75 * √14.0/0.54 =19.1m/s で、
計算値と実際の飛行速度が驚くほど一致しており、大きさや飛行速度の違い(すなわちレイノルズ数の差)にも係わらず、揚力係数である“名
刺プテラノドン係数”は妥当であると言えます。プテラノドン
もカモメやアホウドリのように、海上を滑空して生活していたと考えられており、中生代の空気密度は現代と大きな差はなかったと思われ、同じ係数が当てはま
ると考えられます。さて、プテラノドンは 翼開長7-9m, 体
重15-20kg程度であったと考えられています(Wikipedia)。間をとって、8m, 17.5kgであったとすると、翼開長は名刺プテラノドン(11cm)の72.7倍
相似形なら翼面積はその2乗の5285倍となりますが、名刺プテラノドンは安定性や強度を保
つためアスペクト比をやや小さく(8.64)してお
り、実際のプテラノドンはアスペクト比9ぐらい (Wikipedia)なので翼面積は 5075倍 で7.1m2と計算されます。翼面荷重は2.46kg/m2となります。プテラノドンの飛行
速度を計算すると3.75 * √2.46/0.54 = 8.0m/s、時速にすると29km/hと推定されます。プテラノドンは大きな生物ですが、現
在の鳥類と比べると大きさの割にはとても軽い体だったので、現在のカモメよりゆっくり滑空していたことになります。飛行速度が小さいの
で、飛び立つのは比較的容易であった可能性がありますが、ちょっと強い風が吹くと風下に流されて前に進めないと考えられます。でも無風で
あると、波によって生じる上昇気流が無いので、アホウドリのように滑空だけで高度を保つのが難しくなるとも考えられますが、最近の研究では太陽熱による上昇気流を捉えて滑空していた可能性が高いと言
われており、その場合は無風に近い方が上昇気流が発生しやすくなります。プテラノドンが生きていた中生代の海は、1年を
通して適度な風が吹く穏やかな気候だったので
しょうか。それにしても構造や強度を考えると体重の推定値が軽すぎるようにも思います。もし体重が2倍なら、飛行速度は約1.4倍になります。