ボゼのマスコット
トカラ列島の中でも悪石島にだけ伝わる風習。
「ボゼ」は旧暦7月15日の盆の行事として行われる。
南洋を思わせる異様な仮面だが、いつごろ、どこから伝わったものか島民の誰も知らないし、それを記した記録もない。
明治大学の研究によると、
「ボゼは来訪神であり、村の道や人々のけがれを清め、平常の生き生きした生活に戻す性格と、過ぎた日の不完全な自己を変革して、より完全に近い自己へ躍進させる性格がある。
ボゼは善悪未分化の神であり、現在の節分とは異なり、「鬼」と「福」をその一身に担っている。」らしい。
「ボゼ」は学術的に貴重なものらしく、発見者がJ.クライナーという外国人であり、海外にも紹介されている極めて国際的な風習なのである。

しかし、学術的なことは別にして、「ボゼ」は間違いなく悪石島の人々の生活の一部であり、厳しい環境の中で生きる人たちの生活の安泰と病気や悪魔払いのために、年に一度この島に降り立つのである。
3時頃、ボゼは島内のテラ(墓地)の境内を出発する。
向かうのは島民が集まっている公民館の前の広場である。
足にシュロの皮をあて、ビロウの葉を身にまとい、赤土で赤く塗られた面を被ったボゼは、神というより悪魔をイメージさせる。
公民館前に集まった女子供に向かって、手に持っている「ボゼマラ」を突き出す。こうすることによって体内に潜む悪魔を追い出すのである。
しかし、その異様な姿を見た子供たちは泣いて逃げ回る。それを追いかけまわす。こうしたことがおよそ20〜30分続く。その後はボゼの踊りである。

夕方近くになっても、なお道が白く光ってみえるほど日差しは強い。
その中でボゼの激しい踊りが続く。島民が何事もなく1年を過ごせるようにという願いを込めて。