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artgarfunkel.comプレス・リリースより

アート・ガーファンクル with マイア・シャープ & バディ・マンドロック
ニューアルバム 'EVERYTHING WAITS TO BE NOTICED' 2002年10月8日、マンハッタン・レコーズよりリリース

それは、あの声から始まる・・・

その曲は"Bounce"。アート・ガーファンクルが繰り出す最新の音楽の魔法、Everything Waits To Be Noticed はこの曲から始まる。呪文の言葉は、「その輪を回し、ただ回るにまかせる」("spin that wheel, just let go")。目を閉じて、またあの歌声が私達を洗い流すに任せなさい、という誘いだ。素晴らしい声―美しさにおいて独特であり、我々の時代のサウンド・トラックとして切り離せない、あの声だ。

しかし、予想以上のものが聞こえる。もう少し、聞いてみよう。「彼女がどこに落ちるかは、誰にも分からない」("where she falls, nobody knows")、声は二つに分かれ、それぞれが長音を保ち、お互いにハーモニーつける。

そして、次に、「息をためて、ぞろ目を転がすんだ」("save your breath, let those snake eyes roll")、そこには3つの声が、それぞれの軌道をうねり、やさしく華やかなビートを踊り始める。

奇跡と呼んでも、間違ってはいない。これは、アート・ガーファンクルだ・・・そして、バディ・マンドロックと、マイア・シャープ。異なる3世代に生まれた、3人のシンガーが、音楽で一つになった。

そして、これだけではない。アート・ガーファンクルのこれまでの業績と、彼が人生をかけて大切にしてきた多くの曲から考えて、論理的な次の一歩、と多くの人が思ったことを、彼は実行したことがなかった。つまり、他の人たちの作品を解釈することから、自分の作品を生み出すことへの一歩、である。

今までは、だ。

それはあの声から、もしくは3つの声から始まり、よく知っているのにこんなにも新しい、庭を案内してくれる。

しかし、始まる前には、アイデアがあった。それはビリー・マンから始まった。ニューヨークを本拠地とし、ソングライター/パフォーマー/プロデューサーの3役をこなすマンは、ある日、アート・ガーファンクルを巻き込む一つの計画を思いついた。彼はこのシンガーに電話した。アートはニューヨークにおり、ビリーはロンドンで、グラハム・ライルと"Bounce"を書き上げたばかりだった。2人は会ったことがなかったが、アートは、ビリーがこの曲を電話越しに演奏した時――そして、この曲をレコーディングするなら絶対に参加すべき2人のアーティストを知っていると言った時に、好奇心をかきたてられた。

その2人のアーティストが、バディ・マンドロックとマイア・シャープだった。ナッシュビルの主力ミュージシャン、バディは自分のアルバムを3枚リリースし、ピーター、ポール & マリー、ジョーン・バエズ、ガース・ブルックスらに曲を提供していた。マイアは、20代前半【訳者注:30代前半の間違い?】で、デビュー・アルバムが話題を呼び、ロサンゼルスのソングライター・コミュニティにおいて急速に評判になっていた。

アートは、どちらの名前も聞いたことがなかった。でも、電話を切るな、と言う何かの声が聞こえた。

その代わり、「ビリーに散文詩をたくさん書いてきたことを告げ、それを曲に出来るのなら、僕の心をつかめる、と言った。『それができるのなら、君と一緒にやるよ』と僕は言った。『僕の人生において、ものすごく重要なことなんだ、もしこれらの詩が曲に出来るのならね』」

その言葉を受けて、ビリーはバディに連絡を取った。バディは、アートの詩集 Still Water を手に入れると言う指令をやってのけた。「わくわくしたし、面白そうだと思った」と彼は認める。「音楽に興味を持ち始めたころから、サイモン&ガーファンクルを聞いていた。すぐにああいう種類の音に惹きつけられた。ギターとあのすごいハーモニーだけの。アートのハーモニーの手法は、僕の音楽的方向に大きな影響を与えた。彼に会ったり、一緒に働きたいと夢みるようになる、ずっと前から。」

ビリーはマイアにも計画を知らせた。この計画は、一瞬のひらめきからうまれ、いろいろな障害にも負けず大きくなり、あとは実行されるのみだった。アートとマイアはナッシュビルに飛ぶことを承知した。ナッシュビルでは、バディが既に Still Water から曲の種を見つけ出していた。

アートは後に、この最初の出会いの記憶を書きとめた。「僕は、自分の言葉が"Perfect Moment"という曲の中で、自分に戻ってくるのを聞いた」「バディは僕と波長が同じだった。ビリーは予言者のように先が見通せるみたいだった。マイアはロサンゼルスから、自分のサックスと、そしてあの素敵にヒップの効いた声を持ってやって来てくれた。そこで、あの雪の降る1月のナッシュビルで、僕達はみんなで"Wishbone"を書き、3曲デモを作り、この時、僕はソングライターになった。」

何週間か過ぎ、彼らは次なるミーティングを持った。次の集まりはニューヨークで、ビリーのブルックリン・ブリッジの近くのレンガ造りのアパートに身を寄せ合った。タイトル・トラックとなる"Everything Waits to Be Noticed"と、地元への思いのこもった"The Thread"を書き上げた。「アートったら本当にニューヨーカーなんだから」とマイアは笑う。「彼はニューヨーク・シティのことなら、何もかも知ってるの、隅から隅までね。街への、そしてそこで彼が経験したことへ、敬意を惜しまない。それが"The Thread"にもたくさん出てくる」

そして、後に、彼らはまた集まった。今度はロスアンゼルスのマイアの家だ。3人の共同作品、もしくはそのうち2人のコンビで曲が作られた。バディとビリーと一緒に、アートは"Turn, Don't Turn Away"を書いた。活力にあふれたリズムと含蓄にあふれる比喩が融合され、恋のきまぐれのように回る自転車の車輪のイメージをベースとしている曲だ。同じ3人で"Wishbone"も生まれた。この曲の中の新しい1行―「神様に、君がまだ生きているのならいいのに、と願った」―がアートの、まるで霧雨の中の灯りのような、印象派的な表現方法を良く表している。"How Did You Know"では、ビリーとマイアがアートに加わり、一瞬覗き見たことから、すばらしくて希望的な、エピファニー【訳注:物事・事件・人物の本質が露呈する瞬間を象徴的に描写する、ジェームズ・ジョイスが主張した文学理論に基づく作品のこと。アートはジョイスの愛読者。】をうみだした。

アートにとっては、作曲はすぐに馴染み深いもののように思われた。まるで、忘れていた記憶がよみがえったように。「確かに、書きつづけていた散文詩によく似ている」と彼は説明する。「ぐるぐる歩き回ったり、髪をくるくるいじったり――神経質な癖だよ――ぴったりな音節とぴったりの韻を見つけようとしてね。何を言いたいのかが分かっていて、それを表現するすてきなフレーズがいくつかあるのはいいんだけれど、その積み重ね、一行一行を埋めるのは、骨の折れる職人的仕事だ。努力する。友達と話したり、辞書を引っ張り出したり。感触がつかめれば、真実から物事が引き出され、ソングライターの言語になっていく・・・そして僕はその言語への感触を、バディ、マイア、ビリーと一緒にやることで、つかんでいった。」

曲作りのリズムがしっかりするにつれて、歌声のブレンドも、驚異的なスピードで進んだ。「マイアの歌い方が大好きだ」とアートは言う。「仮に、ブルー・ジーンズが発明されていなくて、誰かが、『ねえ、新しいものをデザインしたんだ、それでこれをブルー・ジーンズって呼ぶことにするよ』と言ったような、それが僕にとってマイアの声を発見していくことだった。服におけるブルー・ジーンズのような存在、それがシンガーにとってはこのマイアの声だ。」

「バディの声は、聞く人をなごませる。僕自身、その意味ではビング・クロスビーの流派だ。つまり、僕はリラックスして歌い、聞いている人たちがほっとするように全力を尽くす。バディはそれを僕が今までやったどんな方法でもかなわないようにやってのける。彼と歌うと、すごく深くリラックスできたから、親密な、本当の自分が出てきて、マイクに向かえた」

「アートに会う前から、彼と一緒にユニゾンで歌えたら、と思ったいた」とバディは付け加える。「あの音が大好きだから。長い時間、2・3フィートの距離まで近づいて、歌いながらお互いの顔を見た。フレージングが合うようにね。面白いのは、それをコンピュータでやろうと思ったら、永遠にかかるってこと。なのに、すぐに僕達はいいブレンドになるだろうと感じた。」

「アーティとバディの声のブレンドはすごいの」とマイアは言う。「2・3曲、例えば"Wishbone"ではアートと私が、同時に一つのマイクでユニゾンを歌った。私達が一緒に歌うと、本当のユニゾンを見つけるとすぐに、誰が何を歌っているのか分からなくなって、2つの声なのに6つもあるように聞こえるようになる。その周りが光り輝くようになるから」

3回のセッションで、多くの演奏が行われた。一曲だけ、バディの"The Kid"だけは前もって作られたものだ【訳者注:他にも前もって作られた曲があります】。他は全て、3人のアーティストによる共有体験から生み出された。各々が個人的な思い出を語っている。"Another Only One"の情熱的な若い恋から"Every Now and Then"の遠い昔に終わった恋への回想まで。全ての曲で、メロディは、霧と日の光を通して高く昇り、多くの曲にはバックグラウンドでマイアの世慣れたソプラノサックスが、ブルーな気持ちを奏でる。

バディとマイアにとって、高いレベルのソング・ライティング能力を発揮することは何の驚きでもない。しかし、アートにとっては、ソング・ライティングのプロセスを初めて発掘したこのセッションは、エピファニーだった。

アートは言う。「あのね、昔作ったチャートを見ていたんだ。僕の人生における個人的な功績トップ25。ナンバー1はキムと結婚して息子のジェームズを生み出したこと。第2位は アルバムBridge Over Troubled Water をプロデュースし歌ったこと」

それでは、Everything Waits To Be Noticed は何位だろう?「これにも場所をあけてあげなくてはね」とアートは認める。「たぶん、10位に置くと思う。人生を、僕の自意識の最も深いところで、変えてくれたから」

その変化、音楽と人生の結びつきは、我々の過去と未来の間で、この3つの声に宿る・・・3つの声が一つになる――全てが始まり、過ぎ去った記憶の空気の中に残る声――それが、Everything Waits To Be Noticed である。


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