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眠りの王国
(ケユクスとハルキュオネの物語)
ケユクスはテッサリアの王で、平和を守って、この国を治めていた。暁の明星ヘスペロスの息子でもあった。明星のごとく美しい輝きを持っていた。妻はハルキュオネで、風の神アイオロスの娘であった。

あるときからケユクスの王国では、恐ろしい異変が続いた。ケユクスは、神々が自分に敵意をもっているのではないかと考え、アポロンの神託を伺おうとした。それには、ロニアのカルロスの町へ、船旅をしなくてはいけなかった。

ハルキュオネは、ケユクスの危険な船旅に、不吉な予感がして、その出発を止めた。しかし、ケユクスは出発した。

案の定、ケユクスの船は難破して、ケユクスは死んでしまった。しかし、夫の死を知らない妻ハルキュオネは、毎日、夫の無事を祈りつづけた。祈られる神のヘラは、もはや忍び難くなり、虹の神イリスに言った。

「ヒュプノスの眠りの王国へ行って、ハルキュオネに夫ケユクスの幻影を送って、夫の死を知らせるよう伝えなさい」

虹の神イリスは、眠りの王国がある洞窟へ行った。そこは沈黙の世界で、岩の底から流れるレテ川(忘れ川)の響きは、あらゆる物を眠りにさそう。洞窟の入り口にはけしの花が植えられ、その液汁から、夜の女神が睡眠を集めて、地上が暗くなったときにまく。

その神ヒュプノスは、人の心を静め、悩みを慰める神である。レテ川は忘却の川で、その水を飲むと、生きていたときのことをすべて忘れる。そうすることによって、恨みも反抗もなく、死を受け入れることができる。最後の親切な川である。

虹の神イリスは、眠りの神ヒュプノスにヘラからの伝言を伝えた。

眠りの神ヒュプノスの息子に、有翼の夢の神モルフェウスがいた。人の姿を真似ることにかけては一番の達人である。ヒュプノスは、モルフェウスに、その伝言を実行するよう言って、眠りについた。(麻薬のモルヒネの由来は、このモルフェウスによる)。

モルフェウスは、死んだケユクスに姿を変えた。ハルキュオネの夢に現れ、ケユクスの声やしぐさをまねて、自分は死んだから、嘆いてくれ、泣く人もなく、地獄に落とさないでくれと言った。

ハルキュオネは、眠りから覚めて、夫の死を知り、嘆き悲しんだ。ハルキュオネは海へ行ってみた。すると夫の亡骸があった。ハルキュオネは防波堤から飛び降りた。すると翼が生えてきて、悲しい鳥になった。神々の憐れみによって、死んだケユクスもまた鳥になり、二人は再び連れ添えるようになった。

鳥になったハルキュオネが、海の浮巣で雛を孵すと、水夫たちは無事な航海ができると伝えられる。

Evelyn de Morgan  (イギリス  1855-1919)  
夜と眠り
1878 Oil on canvas; 42 x 62 in   The De Morgan Foundation, Battersea, London, England

エドワード・ヒュース (British, 1851-1914)
大いなる眠りの汽車を曳く暁と夜
1912 Oil on canvas   Birmingham Museums and Art Gallery, Birmingham, England

デルヴィル  (Belgian, 1867-1953)
レテ川(忘れ川)の水を飲むダンテ
1919  Oil on canvas  142.5 x 179 cm   Private Collection

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