マティアス・グリューネヴァルト
Matthias Grunewald (1470/80-1528)
ドイツ  ドイツ・ルネサンス

グリューネヴァルトの苦悩に満ちたリアリズムで、ゴシックは幕を閉じる。

デューラーと同世代であるが、デューラーがイタリア・ルネサンスの影響を強く受けていることに対し、グリューネヴァルトの様式には、それが見られない。

フランス、アルザス地方コルマールのウンターリンデン美術館にある「イーゼンハイム祭壇画」においては、はっきりと、ゲルマン的造形を見ることができる。

20世紀、ドイツ表現主義の画家エルンスト・キルヒナーの言葉である。

「ゲルマン的な芸術創造とラテン的なそれとは根本的に違う。ラテン的な人間は対象からフォルムを作り出すが、ゲルマン的な人間は内面の幻想からフォルムを作り出す。目に見える自然の形体は、ゲルマン的な人間にとっては象徴である。したがって、ラテン的な民族は現象の中に美をみとめ、ゲルマン的な民族は事物の背後の美を求めるのである。」

イーゼンハイムの祭壇画
ウンターリンデン美術館のあるコルマールから、南20キロほどいったところにイーゼンハイムはある。そこのアントニウス教団の修道院に、この祭壇画があった。

高さが4メートル近くもあり、その表現主義的絵画で圧倒しているのが、この祭壇画である。フランス革命の騒乱の中、保護のためにコルマールに運ばれたのである。

グルーネヴァルトの時代は、世紀末観が強く、死への恐怖、救済への願望という心理がヨーロッパを覆っていた。この時代は、死にまつわる図像が広く普及した。「死の舞踏」「三人の生者と三人の死者」などである。

戦争、疫病、飢饉、天災が生み出す恐怖。いかに人々が「救済」ということを渇望していたか。世紀末から、16世紀初めは、ルターが登場し、宗教改革を推し進めていく前触れの時代でもあったのである。

絵画史上、最も表現力に富む画家の一人と言われ、ボッスが示しえなかった、救済の信念を表現した画家でもある。イーゼンハイムの祭壇画には、その救済の意思が見て取れる。

順を追って見て行くと、グリューネヴァルトがどんなにか、「救済」を待ち望んでいたかが分かる。

一枚目  Isenheim Altarpiece (first view)
c. 1515
Oil on wood
Musee d'Unterlinden, Colmar

磔刑 The Crucifixion
c. 1515
Oil on wood, 269 x 307 cm
Musee d'Unterlinden, Colmar

The Lamentation
c. 1515
Oil on wood, 76 x 341 cm
Musee d'Unterlinden, Colmar

聖セバスティアヌス St Sebastian
c. 1515
Oil on wood, 232 x 76,5 cm
Musee d'Unterlinden, Colmar

隠者聖アントニウス St Antony the Hermit
c. 1515
Oil on wood, 232 x 75 cm
Musee d'Unterlinden, Colmar

二枚目 Isenheim Altarpiece (second view)
c. 1515
Oil on wood
Musee d'Unterlinden, Colmar

受胎告知 The Annunciation
c. 1515
Oil on wood, 269 x 141 cm
Musee d'Unterlinden, Colmar

Concert of Angels and Nativity
c. 1515
Oil on wood, 265 x 304 cm
Musee d'Unterlinden, Colmar

キリストの復活 The Resurrection
c. 1515
Oil on wood
Musee d'Unterlinden, Colmar

三枚目 Isenheim Altarpiece (third view)
c. 1515
Oil on wood
Musee d'Unterlinden, Colmar
中央は、グリューネヴァルトがこの祭壇画を描く30年前の、ニコラス・ド・アグノーの彫刻である。

聖アントニウスの誘惑 The Temptation of St Antony
c. 1515
Oil on wood, 265 x 141 cm
Musee d'Unterlinden, Colmar

聖アントニウスの聖パウロ訪問 Sts Paul and Antony in the Desert
c. 1515
Oil on wood, 265 x 141 cm
Musee d'Unterlinden, Colmar


嘲弄されるキリスト The Mocking of Christ
1503
Pine panel
Alte Pinakothek, Munich

聖エラスムスと聖マウリティウス Meeting of St Erasm and St Maurice
1517-23
Oil on wood, 226 x 176 cm
Alte Pinakothek, Munich

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