ジョット
Giotto di Bondone
イタリア  初期ゴシック, 1267-1337

キリストの哀悼 The Mourning of Christ  、c. 1305
Fresco
パドヴァスクロヴェーニ礼拝堂
Cappella dell'Arena, Padua

「キリストの十字架降下の絵姿」は、キリストが十字架から取りおろされた場面を描いている。DuccioやCimabueの絵画のように、威厳をもち、高みから見下ろしているような、よそよそしいマリア像とは対照的に、視線を現実感のある人間へと引き下げた。はっとするような真実味を帯びている。

人々や天使の嘆きの声が、実際に聞こえてきそうである。ひとりひとりがはっきりと表情を持っている。

キリストを抱く母マリアは、涙を流さずに、しっかりとした面持ちである。まるで、こんな日が来るのを知っていたかのような、そしてついにそのときが来てしまった、といった表情である。子を失った悲しみを抑制している姿には悲壮感がある。

マグダラのマリアはキリストの足元に腰を落としている。力が抜けているような姿である。一点を見つめているようであるが、そうではなく焦点の定まらない視線で、じっと何かを考えているような、いや何も考えられないような状態である。悲しみに耐えている姿である。キリストの足には杭の痕がある。

中央で両手を後ろに投げ出し、嘆いているのは十二使徒のひとり、聖ヨハネである。その姿は現実の悲惨な出来事に驚き、戸惑っている。

右側の二人の男性はアリマタヤのニコデモとヨセフである。ニコデモはパリサイ人でユダヤ人議会の議員である。イエスを敬慕し支持した。アリマタヤのヨセフは裕福なユダヤ人議会議員で、キリストの遺体を引き取り墓に納めた。二人は沈んだ表情で、側に立っている。

上空を舞っている天使たちの姿も、一人ひとり違っている。空中で反り返ったりしながら飛び回り、悲しみにくれた嘆き声を発している。

背景は、一枚の葉も付いていない木が一本だけの、不毛の地である。空も暗くて、イエスの悲惨な死を暗示している。

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