< モスクにおける礼拝の形式 >

信者は キブラ壁に向かって 横一列に並び、導師(イマーム)の掛け声で 礼拝を行う。「直立礼」から「屈折礼」、「平伏礼」、「座礼」に至る1サイクルを「ラクア」と言い、礼拝の種類によって、ラクアの数が 決められている。
(写真は、バルクーク廟のモスクにおける、少人数の 夕べの礼拝。 手前の人が 導師だが、専門職であるわけではなく、一般信者と たいした違いはない。 そもそも イスラームには 教団組織というものがなく、聖職者や出家僧も いないのである。)

● 直立礼


● 屈折礼


● 平伏礼


● 座礼


 金曜日正午の 集団礼拝以外にも、ムスリムは 日に5回の 礼拝(サラート)をすべきことが定められている。これは「家内安全」や「商売繁盛」を祈るのではなく、ひたすら アッラーの偉大さを讃える 拝礼であって、夜明け、昼、午後、夕べ、日没 に行われる。 信者は 自分の家で礼拝してもよいが、モスクで 他の人々と一緒に礼拝するほうが望ましいと、『クルアーン』には 書かれている。
 ところで、モスクを “祈りの空間” であるとする説明が 流布しているが、それは 誤りである。モスクにおいて信者は、何かを願ったり 祈ったりするわけではない。 「礼拝」とは、何かを神に期待するのではなく、ひたすら 神の偉大さを讃える行為を言う。彼らが唱える 代表的な拝礼の句は「アッラー・アクバル」(神は偉大なり)であって、日に5回の礼拝時に、ミナレットから人びとに礼拝の呼びかけをするにも、この句が唱えられるのである。

( 2006年『イスラーム建築』第2章)