癌治療の補助療法の説明

1. 高濃度ビタミンC療法 ビタミンC療法は内服では実現できず、点滴で行います。成人一回に12.5gから25gまでの点滴(所要時間約30分)では、コラーゲンの生成増進による転移予防やTET1(ten-eleven translocation :染色体10と11番における転移)酵素の活性を促進して、その結果、遺伝子DNAの5mc(5-metylcytosine)が脱メチル化されて5hmc(5-hydroxymethylcystosine)になり、抑制されていた遺伝子発現が起こります。すなわち、癌抑制遺伝子の発現も起こる可能性があります。他方、50gから75g、100gの点滴では、ビタミンCは還元剤ではなく、血液や組織中の水分より過酸化水素を生成した後に、血液や組織中の鉄イオンや銅イオンの触媒作用によりヒドロキシラヂカルを発生して、強力な酸化剤の働きをします。その結果、癌細胞の死滅の可能性があります。ビタミンCは高濃度でも、正常細胞、組織には基本的に無害です。

3.転移予防(シメチジン内服)シメチジンは胃酸およびペプシン分泌を抑制する、ヒスタミンH2受容体拮抗薬です。この薬理作用の他に、この薬剤は血管内皮細胞のE-セレクチンの発現を抑制し、その結果、ある種の糖鎖を持つがん細胞の血管内皮細胞への接着を抑制し、ひいては転移をも抑制する作用があります。ある種の糖鎖とは、シアルリルイスaやシアルリルイスxが該当し、これらは腫瘍マーカーのCA19-9とSLXに相当します。つまり、CA19-9あるいはSLXの血中濃度が亢進している、癌の転移を抑制します。癌腫では、胃がん、大腸がん、腎がんの転移予防に有効である場合があります。副作用もほとんどなく、安価です。服用方は、200mg錠2錠を朝晩食後に内服するだけです。戻る

4.癌関連遺伝子発現制御1バルプロ酸Na内服) バルプロ酸Naは癲癇症や躁病の治療や偏頭痛発作の抑制に使用されている薬剤で、その際の薬理作用は、神経細胞のNa+チャンネルとT型Ca2+チャンネルの抑制、及びGABA(γアミノ酪酸)分解酵素であるGABAトランスアミナーゼの阻害によるGABAの増量作用と考えられています。この薬理作用の他に、遺伝子DNAの格納球の、ある種のヒストンに関して、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAE)阻害作用を持っており、癌細胞のDNA鎖をヒストンから遊離させて、抗がん剤療法や放射線療法の効果を増進させる可能性があります。この薬剤は催奇性があるので、妊娠中の婦人には使用禁忌です。対象は、エストロゲンリセプター陽性の乳がんです。(エストゲンリセプター陰性の乳がんは効果が低いとの報告あり)値段は安価で、服用方法は、徐放錠200mg2錠を朝晩食後に内服するだけです。 

5.癌関連遺伝子発現制御2ブフェニール内服) ブフェニールも先のバルプロ酸Naと類似する薬剤で、ある種のヒストンに関して、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAE)阻害作用を持っています。エストロゲンリセプター陽性の乳がん以外にも有効である可能性がありますが、各種癌種に対する臨床実績はまだ少数です。この薬剤の健康保険での効能効果は、尿素サイクル異常症です。この薬剤の一般名はフェニル酪酸ナトリウムで、薬効薬理は、「尿素サイクル異常症患者では残余窒素の尿素としての排泄が不十分となることにより高アンモニア血症を呈する。フェニル酪酸ナトリウムは人生体内でβ酸化により速やかにフェニル酢酸に代謝されて、グルタミンと結合し、フェニルアセチルグルタミンとして尿中に排泄される。αケトグルタル酸からグルタミン酸を経て、グルタミンが生合成される過程で、アンモニア2分子が取り込まれるため、フェニル酪酸ナトリウム1分子により残余窒素2原子が排泄される。」と言うものです。この薬剤もその薬理効果からして、妊娠した婦人には使用禁忌です。値段は、薬価が1錠500mgあたり449.4円で、一日量12錠では5390円、18錠では8090円と高額になります。したがって、都合1週間位で、抗がん剤治療や放射線治療の実施前後に内服するのが費用効果比の観点から望ましいと思います。戻る

6.樹状ワクチン皮下注(アベワクチン) アベワクチン製造元との提携になります。ワクチンは東京の製造所で製造されます。手術の際、担当医にワクチン製造の際の抗原に利用するため、がん組織を所定の容器に採取保存してくれるよう依頼して、了解を得る必要があります。すでにがん組織がホルマリン漬けされている場合は、患者様の癌抗原は利用できませんので、WT-1などの人工の癌抗原を利用することになります。その際、患者様のHLA抗原タイプにあう人工癌抗原を使用する必要があり、実施不可能のこともあります。方法は簡単で、静脈血20ml採血だけです。成分採血の必要はありません。費用は高額で一回30万円余り、2週間ごとに6回実施で180万円になります。ワクチンの投与方法は、腫瘍の近くの、リンパ節近くに皮下注射するだけで簡単です。

7. ナチュラルキラー細胞・サイトトキシックTリンパ球細胞増幅点滴(アベワクチンと併用)  先のアベワクチンと併用になります。静脈血を20ml位採取して、東京のアベワクチン製造所で、増幅します。
アベワクチンと同時投与で、2週に1回都合6回で、1回20万円、合計120万円です。アベワクチンと合わせたら、1回50万円、6回で300万円と高額になります。効果は、保障できません。なぜなら、理論的には有効なはずですが、癌細胞が免疫回避機能を獲得している場合や、癌細胞が多すぎる場合は多勢に無勢で、がん組織は残存するからです。

8.温熱療法1(ハイパーサーミアRF-8) 42.5度以上に腫瘍組織を加熱できれば、腫瘍細胞は死滅します。他方、正常細胞の被害は軽度です。この療法の適応は、表在性の固形腫瘍です。すなわち、腫瘤を形成している乳がんはよい適応です。逆に、腫瘤を形成していない腫瘍は無効です。また、体幹深部には、42.5度の腫瘍組織への選択的な加温は困難になります。しかし、39度から42度までの軽度加温でも、抗がん剤治療や放射線療法との同日併用は、有効です。(ただし、日本で現在この併用療法を実施している病院は少数で、堺市には、邦和病院にしか、機械のハイパーサーミアRF-8は設置されていません。)実施方法は、当院から邦和病院の和田邦夫院長への紹介になります。実施方法は、一回1時間ほどで、熱感ほどの副作用だけです。費用は、週1回から2回実施で、8回まで保険使用可能(3割負担で合計4万円ほど)ですが、その後は自費になります。

10.電場療法{インドネシア製ECCTElectro-Capacitive Cancer Therapy)使用)電場療法器の一種で、アメリカのノバキュア(novo cure)社の腫瘍電場療法(TTF :Tumor Treating Field)と同じような構造、機能、治療原理を持つ器械です。Novo cureの頭部用電場発生装置は日本ではNovoTTF-100システム(OPTUNE)の名称で脳の膠芽腫を対象として薬事承認を2015年3月に受けました。これらの機械は、腫瘍のある部位に低出力の電場を発生させて、一日18時間以上当て細胞分裂の際に機能する、微小管を電場的に極度に安定化させることにより、細胞分裂を阻害します。微小管の基本単位はチューブリン(tubulin)
というタンパク質で、痛風発作の治療薬のコルヒチンはこの微小管の解離を促進し、逆に抗がん剤として使用されている、タキソールやテセタキセルやビンブラスチンやビンクリスチンは微小管を安定化することにより細胞分裂を阻害します。この電場療法は効果が出現するのに、3か月から1年かかりますが、無害です。器具の装着中も患者様は自由に生活できます。入浴の時はもちろん外します。インドネシア製のECCTは、大阪の医療法人の再生未来が独占的に取り扱っており、そこに当院より紹介になります。費用は一人当たり何か月でも108万円ほどとのことです。腫瘍の種類によりますが、延命効果はありますし、何よりも日常生活が束縛されないのが最大の利点です。ひと月に1回ぐらい再生未来の外来(守口市)を受診して、機材の点検をします。参照http://www.saisei-mirai.or.jp/gan/ttf.html

11.腫瘍温熱療法(オンコサーミア:機種 低出力型温治療器 EHY-2000) この器械は、現在大阪には、大阪府立大学の農学部獣医学科にしかありません。これは動物の治療用で人間は対象にしていません。一台4000万円ぐらいするとの国内販売業者の話で、保険適応もなく、どの医療機関も購入には躊躇すると思います。私もです。しかし、腫瘍塊の加熱に目標を置いているのではなく、腫瘍細胞に選択的に、細胞膜内外にわずかの温度差(0.001度摂氏)を発生させて、癌細胞の死滅を引き起こすことに治療目的を置いていることは注目されます。また、血流の多い臓器の癌、たとえば肺がん、肝がんでも適応があります。もちろん単独での根治療法ではなく、他の治療法と併用して、ドイツなどヨーロッパで現在利用されています。現在、当院から国内の機器保有医療機関(数か所あります)への紹介はしていません。戻る